【 2007年09月10日 17:23 】
WBC(世界ボクシング評議会)ムエタイ
「WBCムエタイ世界三大タイトルマッチ」
2007年9月8日(土・現地時間)アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス
ノルマンディーカジノ・アウトドアアリーナ
元気、「どうしていいかわからない」
05年7月の対戦から約2年。山本元気とゲーオが再び拳を交えた。ロサンゼルスのカジノにある屋外イベント場。日没が早くなったとはいえ、すでに大会開始時刻の午後7時をまわっているにも関わらず、ロスの上空はまだ明るい。
オープニングイベントとして、アメリカ国歌斉唱、タイ国歌斉唱、さらには大会関係者の挨拶が終わると第1試合はスタートした。今回は、タイへの衛星中継があったために、第1試合からメインイベントが始まるというプログラムが組まれた。元気の試合は2試合目。元気がリングに上がった午後7時30頃になり、ようやく空は暗くなってくるものの、沈んだばかりの太陽がまだロスの上空をほんのりと蒼色に染めている。
リングアナが元気の名前をコールすると、スモークがたかれた入場口から、少しこぶりな特設リングに向かって元気が歩を進める。会場全体からすると、極めて少ない日本人応援団の声援を受けてリングに上がる元気。一方のゲーオは、会場の何割かをしめるタイ応援団の声援を背にリングに上がる。(メインイベントのアメリカ在住タイ人の応援団が、かなりの数来場していた為、タイ人への声援は日本人に比べると圧倒的に多かった) 互いに生演奏のムエタイ音楽をバックにワイクー(舞)をこなす。 元気の表情に迷いはない。この2年間の成果を発揮するために、今、念願の相手を見据えている。
開始と同時に攻撃を仕掛けたのはゲーオだった。
左ミドルを元気の上腕に叩き込むと、さらには、初回からヒジをも繰り出す。それに対し、元気はニヤリと微笑むと間合いを詰めていく。元気のかける圧力と、ゲーオの支配する間合い。
2人の戦いはまさにこれに尽きた。2R以降、元気の右が何度かヒットする場面もあったが、結局はゲーオの支配する間合いに元気は入り込めなかった。
ゲーオは執拗なまでに左右の前蹴りを蹴り続けた。特に右の前蹴り、これでもかというくらいに元気の左足から左脇腹までの左半身を制していく。「元気とクロス(打ち合わない)しないようにしようと思った」というゲーオは、その通りの作戦を実行してみせた。それに対して元気は、「一方的にはやられなかった。」というが、その一方で「どうしていいかわからない」とも吐露する。
ムエタイ最高峰を前に、詰め切ることが出来ない現実が目の前に立ちはだかる。2年間での進化が、ゲーオとの戦いに何をもたらしたのか。最後まで詰め切れなかった間合いに、DEIONジム会長の佐賀勝人代表は「戦い方を覚えてしまった部分がある」と以前の元気が持っていた荒々しさが薄れてしまったことに危機感を募らせる。
記者からの「ゲーオとの距離は縮まりましたか?」との質問には、「この前よりは、しっかりと戦えたと思う。この前はバカみたいに攻撃しただけだった」と振り返る元気。
しかし、試合後、筆者が会場にいた周りの日本人の感想を聞くかぎり、「今回は元気の持ち味が発揮できていたなかった。前回の方が良かったのでは」という趣旨の意見も多かった。このあたり、元気本人と、周りの受け止め方に温度差を感じずにはいられない。
元気本人の2年間での進歩が、リングの上では、少なくとも何かしらの形で表現はされていたはずだ。しかし、それは、観ている者には極めて伝わりにくいものだったのかもしれない。
試合は、5R判定までもつれ込み、結果3-0の完敗。これだけの厳しい相手と5Rに渡って激闘を繰り広げたにもかかわらず完敗と書いて
しまうのは酷なのかもしれない。
しかし、戦った当のゲーオ本人は、敵意を微塵も感じさせずに冷静に元気を分析する。「タイでは自分と同じレベルで戦うのは難しいと思います。もう少し、下のレベルで戦った方が良いと思います。」と。
ムエタイという、奥深い迷宮に足を踏み入れた山本元気の旅。現在地は、まだ出口の明かりも見えないところにある。
ーーー山本元気試合後コメントーーー
ーー試合の感想は
前回と比べてパンチは食らわなかった。
一方的にやられるということもなかった。
ーー試合以外での感想は
レフリーはタイ人だったと思うので、あまり気にならなかった。リング
以外の部分(メディカルチェック)などは、噂にも聞いていたし、相手
も同じ条件なので、しかたがない。メディカルチェックも来て当日に
やった。通訳の方に、お世話になってスムーズにできた。
ーー自分に足りないと思ったものは?
どうして良いかわからない。
ーーゲーオは前回と比べてプレッシャーが弱かったと言っているが?
前回は喰らいながら攻撃してたから・・・
今回は見えていたし。
それと、相手はかなり警戒しているなというのがわかった。
パンチで行くとスグにヒジで斬られてしまう。
行くタイミングがつかめない。
この前は自分の中で試合になっていなかった。
周りは良い試合だったと言っていたけど。
ーー頭は縫ったのですか?
縫わない方向でいきたいです(笑)
ーーアゴを負傷されたようですが。
スウェーされたあとにハイキックくらって・・・アゴが痛い。
ーーこの2年間、ゲーオとやるために追いかけてきましたが?
目指してよかったなと思います。
その階級で一番強い選手を目指すのは当たり前。幸せです。
ーーゲーオとの距離は縮まりましたか?
この前よりは、しっかりと戦えたと思う。
この前はバカみたいに攻撃しただけだった。
ーー進歩はできたと?
と、思います。
ーーゲーオは右ミドルが強かったといっていたが?
ミドルは蹴られたら返して、パンチにつなげようと思っていた。
ただ、パンチは凄く警戒されていた。
ーー次は代々木?
相手次第。まだ強くなれる気がする。
ーーまだ、燃え尽きてはいないのでは。
でも、一段落した。この為に、2年間やってきた。
どれだけ強くなれたか試したかった。
ーー強くなれた?
それはわからないが、やっていて楽しかったし、充実感はあった。
ーーゲーオー試合後コメントーー
ーー試合の感想は
勝てたことに嬉しく思います。
元気とはクロスしない(打ち合わない)ようにしようと思っていました。
2年前と戦ったときと比べて、元気は2年前の方が力強かったように思
います。
ーー効いた攻撃は?
右ミドルと右のパンチには力強さを感じました。
でも、自分の方がペースを支配してました。
よって、相手の蹴りも見切ることができました。
ーー嫌だった攻撃は?
右のパンチは怖かったです。
顔にももらいました。
ーー右のボディパンチも効きますか?
ボディパンチは良いところにもらったわけではないので、特別に効いた
ということはありません。
ただ、打ち合うのは危険だと思いました。
右のパンチは特に注意しました。
ーー元気はタイでいつも戦っているクラスと比べてどうですか?
元気選手は実力者だと思います。ルンピニーでも通用すると思います。
ただ、タイでは自分と同じレベルで戦うのは難しいと思います。もう少
し、下のレベルで戦った方が良いと思います。
ーー元気に選手に足りないものは何だと思いますか?
右のパンチをもっとだすこと。
もっと、プレッシャーをかけて前にでること。
もし、自分がトレーナーだったらそういいます。
アウトボクシングの上手い選手だったら難しいと思います。
ただ、そうでない選手だったら山本選手につかまることはあると思いま
す。
ーー前回の方が、元気は前にでていたのでは?
たしかに、2年前は前にでていたように思います。
ただ、それはホーム(日本)でやったからではないでしょうか。
ーータイと外国とでは
タイでやるより、こっちでやるほうが、気持ちよくできます。
タイでは、賭があるのでプレッシャーがかかります。
こちらでは、賭がないので気持ちよくできます。
ーーゲーオ選手にはかなり余裕があるように感じたのですが?
それはあります。相手のタイミングだけを見て楽に試合を進めることが
出来たと思います。ただ、なめて試合をすることはできないので、集中
はしてやっていました。
その他の主な試合結果
■「World Championship MUAYTHAI~3階
級WBCムエタイ世界タイトル戦~」
9月8日(現地時間) 米国カリフォルニア州ロサンゼルス・ノルマン
ディーカジノ・アウトドアアリーナ
<WBCムエタイ世界ヘビー級タイトルマッチ 3分5R>
○ロッキー・ロザリオ(アメリカ/10位)
(2R 3分00秒 KO)
●リカルド・ヴァン・デ・ボス(WBCヘビー級インターナショナル王
者)
<WBCムエタイ世界スーパーフェザー級タイトルマッチ 3分5R>
○ゲーオ・フェアテックス(タイ/王者/ルンピニースタジアム・フェ
ザー級王者)
(5R判定3-0/50-47、49-46、50-45)
●山本元気(DEION GYM/6位/全日本スーパーフェザー級1
位)
<WBCムエタイ世界ミドル級タイトルマッチ 3分5R>
○ラムソンクラーム・チューワッタナ(タイ/王者)
(5R判定3-0/50-44、49-46、49-46)
●ヨハン・リンドン(フランス/挑戦者)
<WBCムエタイ・インターナショナル・スーパーフェザー級王者決定
戦 3分5R>
●増田博正(スクランブル渋谷/10位/全日本ライト級王者)
(5R判定1-2/47-48、49-46、45-50)
○Evgeni Khil(アメリカ)
<WBCムエタイU.S.フェザー級タイトルマッチ>
○ロミー・アダンザ(アメリカ)
(5R判定3-0/48-47、48-47、49-46)
●火出丸(クロスポイント吉祥寺)
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<PHOTO&TEXT=T.SAKUMA>
