【Fight&Lifeコラム】Personal MMA Awards, 2010’s the first half  01/高島学

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Photo by Zuffa, Strikeforce, Keith Mills and Manabu Takashima


皆さん、ご無沙汰していました。
ごくごく、少数の方から、「もうFight&Lifeのコラムは終了したのですか?」と
尋ねられたりもしたのですが、
特にこれといった理由もなく、しばらくお休みさせていただいていました。
そして、特にこれといった理由もないのですが、
また、気になったことを書かせてもらおうかと思います。

そんなことを言っていると、あっという間に2010年も半年が過ぎ、
日本の不景気(※格闘技界のことだけじゃないですよ)とは対照的に、
北米のMMAは盛り上がっている。フィナンシャル面云々でなく戦いそのものに熱がある。
日本にその熱さが伝わっている、伝わっていないは別にして
(あるいは興味を持たない人が今も多くいるかもしれないけど)、
この半年で、4度しか渡米していないが、自分がその場に居合わせた10のイベント、
数多くのジム、会話をしたファイターや関係者からは、やはり熱気ばかりを感じた。


んなわけで、ライブ取材したイベント以外にもライブストリーミングやDVDを取り寄せて
試合をチェックした50以上の大会から、ベストバウトなMVPなど、
2010年上半期のパーソナルアワードを例によって、
選んでみたいと思います。まずはベストバウトから――。



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ベストバウト
20位 03月26日 Strikeforce Challengers 
アンドレ・ガルバォン×ルーク・スチュアート
「くるりくるりと、ひっくり返されるガルバォン。柔術でも、ノーギ・サブミッションでも彼のこんな姿を見たことはなかった。それがハウフ・グレイシーの黒帯スチュアートとのMMAで、サイドを取った状態で、簡単にひっくり返される。飛躍した意見かもしれないが、ブラジリアン柔術ではサイドを取られた状態やマウント返しにポイントはない。しかし、MMAでは非常に大切なエスケープ、逆転のテクニックだ。競技に特化する以前のグレイシー柔術を実践してきたハウフの弟子ならではの妙技といえるのかも。ガルバォンもまた、下になっても攻撃を許さなかった故に判定勝ちを収めたが、テッポウやマウント返しはもっともっと注目されて然りの技術なのかもしれない」


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19位 02月04日 TPF04 マイケル・マクドナルド×マニー・タピア
「旧WEC?PFC、そしてTPF(タチ・パレス・ファイツ)と受け継がれる、中央カリフォルニア・リムーアで開催される質の高い人材発掘大会。メジャーをリリースされたファイターも数多く登場する同イベントで、WEC世界バンタム級王座に挑戦経験のあるマニー・タピアが惨敗を喫した。ディフェンス、アタックともに高度なボクシングとレスリング、加えて柔術のポジション+極めを持つMMA確立期世代を代表するファイトで、マクドナルドがTKO勝ち。7月9日に前田吉朗をTKOで破ったコール・エスコベドの持つTPFバンタム級王座に挑戦するマクドナルド、その結果如何によっては、WECへの登場も十分にありえる――だけでなく、王座を狙える逸材のように思える」


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18位 3月21日 UFC VERSUS ジョン・ジョーンズ×ブランドン・ベラ
「試合内容的には全くもって、ベストバウトではない。19位のマクドナルド×タピア戦以上に一方的なものだった。あのブランドン・ベラがここまで、やられるのかと驚かされた一戦。ジョーンズはその身体能力の高さという長所と、動くことが大好きと言わんばかりの雰囲気を持ち、必要以上の技を仕掛けるという短所を持つファイターだったが、どうやらそんな彼の楽しさをグレッグ・ジャクソンは全て強さに切りかえてしまったようだ。インサイドガードからのエルボーで頬骨を骨折したベラ。ランペイジでも同門のラシャドでもなく、MMA人気が今一つのアフリカン・アメリカンを引っ張る存在になるのは、このジョーンズかもしれない」


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17位 3月27日UFC111 シャーン・カーウィン×フランク・ミアー
「オクタゴンに一度入れば、1R終了のホーンを聞くことなく勝利を手にしてきたカーウィンにとって4カ月遅れの王座挑戦は、暫定王座決定戦になってしまったが、このファイトがあったことで、7月3日のブロック・レスナー戦が非常に楽しみになったといえる。組みつき、ケージにミアーを押し込むカーウィン。何でもない攻防となり、やはり連続秒殺KO勝利は対戦相手の力不足だったんだ――なんて思いながら試合を眺めていると……。『!』、右腕はミアーの左脇を差したままの状態で、左手でアッパーを放っていくカーウィン。その回転数がどんどんと速くなり、ミアーの動きが鈍くなっていく。結局、距離をとって、フックの連打からパウンドでKO勝ちしてしまった。あんな態勢、あの短い距離で元世界王者をKOできる拳の力。皇帝に続きレスナー陥落だって十分に有り得る」


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16位 3月21日UFC VERSUS ジュニオール・ドスサントス×ガブリエル・ナパァオン 
「ナパォンは言わずと知れた、ミルコをハイキックで破ったブラジリアン。一方のドスサントスもミルコをTKOで下している。ブラジル=柔術王国は今も続く、その一方で打撃の成長が著しいのは、純粋立ち技イベント=イッツショータイムで、ブラジル人世界王者とヘビー級トップコンテンダーすることで明らかになっている。そんなブラジリアン対決で、シガノは一方的な展開でナパォンを倒してしまった。同じハイキック、左ストレートにしても、シガノのそれはナパォンをずっと上回る速さを見せた。シガノ(流れ者)は完全にUFCヘビー級戦線に定着した」


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15位 5月08日 UFC113 マウリシオ・ショーグン×リョート・マチダ
「昨年10月にはローでとことんリョートを追い込んだショーグンが、今度はパンチ攻撃でリョートを前に出て来させ、右クロスでテンプルを打ち抜いて勝利を手にした。前回は手堅く攻めたショーグン、あの攻めを続けられると対戦相手はかなり厳しい。一方、TKO勝利を手にした今回の戦法は、KO負けの恐れもあるが、KO勝ちのチャンスも出てくるというもの。つまり、これまでのMMAでは××は△△が得意だから、○○な試合展開になる――という予想を立てていたのが、そこに対戦相手の得手不得手、心理状態まで読まないと、どんな試合展開になるのかなど、予想することが非常に難しくなった。相手によって戦い方が変化する――なんてことは百も承知のはずだったが、このショーグンの勝利で本当の意味で気付かされたと思う」


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14位 6月26日 Strikeforce カン・リー×スコット・スミス
「38歳、映画にも出て、この後は生まれ故郷ベトナムで大きなプロジェクトも待っている。自らの名がついたジムは、流行りのメガジムで、なぜか女性のインストラクターが目立つ。そんな満ち足りてしかりという状況でも、半年前の敗北の悔しさを払拭しないと気が済まない。カン・リーはとかく批判されやすい立ち位置でMMAと向かい合っているが、そんな声を払拭する説得力がファイト自体から伝わってくることが多い。年老いたとはいえ、誰がフランク・シャムロックの腕をブロックの上から骨折させる蹴りを放てるだろうか? 誰がスコット・スミスをスピニングバックキックでKOすることができるだろうか? フック系のパンチがほとんどだった左が、ストレートと打ち分けられるようになっていたカン・リー。満ち足りているはずの男の闘争本能が見えた一戦だった」


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13位 2月21日 UFC110 ケイン・ベラスケス×アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ
「ヘビー級、元カレッジレスラー。この2つのエレメントが頭に入っているファンなら、ケイン・ベラスケスがあれだけスピーディな打撃を見せることが、まず信じられないだろう。この二つの要素、特に元カレッジレスラーというキャリアを知らなければ、彼のことを元K-1ファイターだと勘違いしてしまうかもしれない。PRIDEでキャリアの頂点を迎えた時期、ミノタウロはそのボクシング、特にジャブの精度の高さを称賛されたものだ。打たれ弱くなった彼がTKO負けすることは、それほど驚くべき事態ではない(と、自らを言い聞かせる)。ただし、彼よりも素早いコンビネーション、蹴り技の上下の打ち分けまで見せる対戦相手の出現には、驚かずにはいられなかった。新ヘビー級時代、カーウィンがパンチの強さとパワーが売りなら、ケイン・ベラスケスとジュニオール・ドスサントスこそ、ライト級の動きができる重量級時代の到来、その旗手といえる」


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12位 06月17日 BFC22  ベン・アスクレン×ダン・ホーンバックル
「レスリングが、なくてはならないMMAの軸として存在しているとしても、承知のようにレスリングの技術だけでは、MMAは勝てない。これは常識だろう。今、最もレスラーらしさを残しているMMAファイターは、マット・リンドランド、あるいはブロック・レスナーだと個人的に思っている。打撃は手打ちでも、KOパワーを持つ。そして抜群のトップコントロールを誇る。そんな彼ら以上に、レスリングを全面に打ち出して戦うファイターが現れた。それがベン・アスクレン。ダン・ホーンバックルという強豪を相手に、ダブルでなく、シングルレッグであれほどテイクダウンを奪えることにまずは驚くしかないし、その後のグラウンドコントロールの強さは目を見張る。あれだけレスリングが強いと、例え動きのなかで下になっても、柔術家のソレとは完全に違う方程式で、上を取り返してしまう。やはり五輪代表のフィジカルとメンタル、両面で飛び抜けた強さを持っている。残念ながらベラトールFCはシーズン3を持って終了という声が多いが、その後、どのような舞台で戦うのか、非常に楽しみなアスクレンだ」


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11位 3月31日 UFN21 岡見勇信×ルッシオ・リニャレス
「2006年8月の初戦から、3年7カ月でついにUFC10戦目を迎えた岡見勇信。前戦で敗れたチェール・ソネンの下へ赴き、自分を破った人間と練習することで、弱点と長所を体に染み込ませた。対戦相手のルッシオ・リニャレスはフィンランド在住とはいえ、ブラジルの名門、2年連続ムンジアル団体優勝を成し遂げているアリアンシ所属の柔術家だ。これまで生粋の柔術家との対戦経験がない岡見が、つけ込まれる可能性もあり楽な相手ではなかった。しかし、彼はそんな不安を払しょくするかのように、決して下にならず、スタンドでこれまで以上に切れる打撃を武器に戦い、TKO勝ちを収めた。MMAでやるべきことに徹し、前に出ようという気持ちが動きにも反映できた一戦。日本のMMAを背負っているのか、背負っていないのか、意見が分かれるかもしれないが、リードしていることは確かだ」


10位以上は、また次の機会にして、
Biggest Up Set部門ってな感じで2試合ほど言及してみたい。


番狂わせ大賞、次点は
6月26日Strikeforce エメリヤーエンコ・ヒョードル×ファブリシオ・ベルドゥム


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記憶に新しい皇帝の敗北。勝負に絶対はないから、ヒョードルが敗れることも考えられた。そして、その場合は寝技で関節か絞めを極められることであって、決してスタンドでの打撃戦ではないことも予想はできた。だからといって、まさか試合開始直後に三角絞めで一本を取られるとは誰が予想できただろうか。


彼の敗北後、PRIDE後はコンスタントに戦っていない――、強い相手と戦ってこなかった――、あるいは『やはり柔道の寝技で柔術が分かっていない』など、したり顔で意見する者が増えた。


確かにそれらの意見は結果として、間違っていないだろう。
だからこそ、敢えて思うのは、ヒョードルに戦い続ける意思が残っているのなら、この敗北で彼はとてつもなく強くなるということ。


ヒョードルが負けるとすれば、それは寝技だと予想はできた――と書いた。
確かに彼は柔術を柔術家のように理解はしていないだろう。
それでいて、ノゲイラにも他のファイターにも一本など極められたことはない。


それはノーギMMAだからだ。
現時点でのヒョードルの柔術への知識だと、仮に柔術競技会で柔術のトップ選手と戦えば、かなりの率で極められるはずだ。
あるいは道衣MMAなる分野ができたとして(コンバットサンボではなく、ブレイクが少ないルール)、打撃やパウンドが認められていても、柔術のトップには極められるだろう。


一方、この敗戦でも、例えばベルドゥムが試合開始早々、引き込んであの形になっていれば、ヒョードルは極められなかったに違いない。なぜか?


彼は寝技へ移行せず、スタンドで待っていたに違いないからだ。
ただし、幸か不幸か――、この場合は不幸だったのだろう、アッパーを打ち込み、ダウンを奪ったのだから、パウンドで仕留めにかかった。


しかも、それは時間にして試合開始後、30秒ほどしか経過していない時点でのこと。もう少しベルドゥムがスタンドでヒョードルと戦うことができる技量の持ち主で、
打撃の攻防やテイクダウンを狙ったり、あるいはテイクダウンを防ごうとしていれば、
彼自身もそうだし、ヒョードルも汗をかいていたに違いない。


ヒョードルにとって不運だったのは、余りにも簡単にスタンドの攻防を制し、
ダウンを奪ったことで、汗をかく前に寝技に付き合ったこと。
あと2分でもスタンドで戦っていれば、例えヒョードルの三角絞めの対処が、遅れ気味だったとしても、滑って極まらなかった。
というわけで、ヒョードルは試合開始直後のドライな時間帯では、
今後、グラウンドへ移行しない。
あるいは汗をかいていない状態で柔術家が、どのように仕掛け、
どう動けば逃げることができるのか、研究することになる。
仮に彼が後者を選択すれば、これほど厄介なことはないし、
そんなヒョードルがやっぱり見てみたい。


かなり文字数が増えてしまったので、大賞も次の機会にさせてもらおうと思います。

 

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