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Photo by Zuffa, Strikeforce, Keith Mills and Manabu Takashima
前回に引き続き、個人的北米MMA大賞、まずはベストバウト部門の続きから。
10位 04月24日 WEC48 レオナルド・ガルシア×ジョン・チャンソン
「ガルシアがマウスピースを吐きだし、チャンソンが棒立ちになってパンチを受ける。殴り、殴られ、そんな攻防が序盤の2Rの間、ずっと続いた。二人の殴り合いに、常にハイテンションのARCOアリーナの観客は、総立ちになり足踏みを繰り返す。ガルシアもチャンソンも勝つために自分の持つ最高の武器を使い続けた。結果、3Rに距離を取り、殴り合いを避けたはずのガルシアがスプリットで勝利を手に。大絶賛の対価はベストファイト賞の6万5千ドル、代償は拳の骨折。MMAであるなら武器はパンチだけではない。そして格闘技であるなら、身を守る術の習得を――という意見も言いたくなるが、実際にライブで試合を見ている間は、ただただ両者の殴り合いに引き込まれた」
09位 05月06日 BFC17 トビー・イマダ×ケーリー・ヴァニアー
「人材発掘+再生工場的な役割のベラトールにあって、トビー・イマダは2シーズン連続ライト級トーナメント準優勝という結果を残した言わば、AAAの最多勝利投手のような存在だ。試合の組み立てのなかに柔道的な要素を織り込み、いわゆるMMAらしさとは一線を画す攻撃が魅力的だ。この試合でも、足払いで揺さぶっておいて、ヴァニアーのシングルレッグにカニ挟みからヒザ十字、フィニッシュもシングルの頭を殺して反転、腕十字とらしい攻撃で一本を奪った。昨年、空中横三角絞めでホルヘ・マスビダルを破ったイマダ、現代MMAを理解した上で、極め中心のMMAを展開する彼は、もっとスポットが当たってほしいファイターだ」
08位 6月26日 Strikeforce ジョシュ・トムソン×パット・ヒーリー
「自分にとってジョシュ・トムソンは、ある意味、現代MMAの理想形だ。打撃ができて、レスリングに強く、柔術も理解している。そして、動きがある。そのトムソンが昨年12月にギルバート・メレンデスとの殴り合いに敗れた一戦は、スリーディメンション・ファイターの彼が、まるでワンディメンション・ファイターになったようで、いくら好試合に見えても、本来の彼の姿とは思えなかった。そして復帰戦となったこの試合で、ウェルター級から落としてきたヒーリーに、トムソンは打撃の間合いを潰され、テイクダウンを何度も許し、劣勢を強いられた。このままでは負ける――そんなとき、トムソンは千載一遇のチャンスで、抑え込みからバックに回り、極まるかどうか分からない状況下、態勢を入れ換えられれば万事休すという状態で、リアネイキドチョークに勝負を賭けた。自らのグローブの隙間に指を差しこみ引っかけて極めた執念のチョークだった」
07位 5月24日BFC23 ジョー・ウォーレン×ファブリシオ・ピッチブル
「グレコローマン世界選手権優勝のジョー・ウォーレンは、MMAではフィジカルとスタミナ、そしてテイクダウンを武器に判定勝ちを続ける。対するピッチブルは、このBFCフェザー級トーナメントに参戦するまでは無名のブラジリアン柔術家だった。初戦でヒールホールド、準決勝で柔術&MMAの実績で上のウィルソン・ヘイスのテイクダウン狙い、リバーサルの仕掛けをことごとく潰し、スタンドの打撃で試合を支配して勝利。ウォーレンからはムエタイ流の組みでバックを奪い、首相撲の応用でスタンド肩固めを見せるなど、ムエタイ・グラップリングin MMAを存分に披露してくれた。その上、トップばかりかマウントまでウォーレンから奪ったピッチブル――、最終ラウンドこそ失速したが、試合を通してフィニッシュに近づいていたのは明らかに彼の方。ウォーレンの途切れない気持ちとレスリング能力は本当に大したものだとは思うが、よりインパクトを残したのは小さなピッチブル=ファブリシオの方だった」
06位 6月20日WEC49 マーク・ホーミニック×イーブス・ジャボウィン
「WEC初のカナダ大会で行なわれたカナダ人対決。MMAもやはり手が合う、手が合わないということが存在するのだろうが、思わぬ攻撃を仕掛けるという部分まで手が合うケースはそうそうないはず。互いに打撃を得意とするが、精度の高さはホーミニック。左ボディで動きを止めて、ヒザをついたジャボウィンに連打を見舞う。立ちあがったジャボウィンからバックを奪おうとしたところで、何とスピニングバックエルボーを受け、逆に動きが止まってしまった。この後、右フックでダウンを喫したホーミニックは、一気呵成にパウンドを狙ったジャボウィンに対し、見事なフラワースイープからマウントを奪い、パウンドの連打で勝利した。この鮮やかな流れ、ある意味、出来過ぎの神MMAといえるだろう。ホーミニックにアッパレ!!」
05 位 2 月06 日 UFC109 チェール・ソネン×ネイト・マーコート
「打撃でソネンの突進を阻みたいマーコート。それでもソネンは組みついて、テイクダウンを仕掛けていく。マーコートは倒されても、隙を見て立ち上がろうとするが、ソネンはその度に立ちバックを奪い、ケージに押し込む。そして、向きを入れ換えたマーコートを再びテイクダウン。平たくいえば、15分間ずっとこんな感じで試合は進んだ。ソネンのエルボー、マーコートのギロチンがアクセントをつけたものの、大局に変化はない。最後の最後で、バックを奪われたマーコートが投げを打って、トップを奪うと、必死のパウンド攻撃。勝負を諦めず、攻める姿勢を持ち続けたマーコートだったが、無情にもタイムアップとなりソネンが判定勝ちを収めた。起伏が少なく、泥臭い一戦。ただし、力の限り戦った両者にマンダレイベイ・イベンツセンターに集まった観客は万雷の拍手をおくった。派手とか、動きとか、個性とかでなく、必死で戦うファイターの姿にファンが歓喜の声をあげる――そんな場内を見渡して、少し感動してしまった」
04位 3月06日WEC47 ドミニク・クルーズ×ブライアン・ボーウェルズ
「ミゲール・トーレスを下し、WEC世界バンタム級王座についたボーウェルズ。その初防衛戦だったが、試合開始早々に拳を負傷。それを差し引いても、10分間攻め続けたクルーズは圧巻だった。小刻みに変化する構え、オーソドックスから右ストレートが伸びたかと思うと、続いて右ロー。するとサウスポーになって右ローに左ハイ、左ボディの直後には再びオーソに戻して左ストレート、そしてダブルレッグ・ダイブ。あらゆる方角から、打撃+組み技が仕掛けられる。目の前の攻撃への対処を追われるボーウェルズが後に下がっても、前に出てきても、手を変え、品を変え、攻撃は間断なく続く。これぞMMAイノベーション、ドミニク・クルーズはMMAに革命を起こしている」
03位 1月30日 Strikeforce ロビー・ローラー×メルビン・マヌーフ
「かつてNHBによって、柔術は米国、そして世界に広まった。今、ムエタイがMMAによって北米に広まりつつある。当然、足を使う技術はキックやムエタイが定期的に行なわれてきた国に一日の長がある。キック王国からストライクフォースにチャレンジしたマヌーフは、ローキックの連打でローラーを圧倒し続けた。カットができず、足を蹴りあげられるたびに、振り子時計のように右足が大きく振り上がるローラー。立っているのもやっと――という状態になり、ローラーの顔面を右フックで打ち抜こうとしたマヌーフだったが、余りの一方的な展開にディフェンスが疎かになり、顔面がガラ空き。ここでローラーの右フックが炸裂。目を剥いて失神したマヌーフ、その見開かれた瞳に口をカットした際の自らの鮮血が飛び散っても気付くこともない。万に一つの逆転劇を可能にしたのは、ローラーの我慢強さ。そんな彼を次の試合で、195ポンドの契約体重で、意味のないヘナート・ババル戦を用意するとは、ちょっとストライクフォースのマッチメイクには首を傾げざるを得ない。同時に、このKO負けの後、5月にイッツショータイムで再びKO負けを喫したマヌーフが、僅か1カ月のインターバルでDREAMに出場する。その事実に、誰も警鐘を鳴らさない。首を傾げるどころの事態じゃない」
02位 4月17日 Strikeforce ジェイク・シールズ×ダン・ヘンダーソン
「チャンピオンなのにアンダードッグ、王者なのに引き立て役。その上、開始数10秒のところで、テンプルにパンチを受け、KO負け直前に追い込まれる。まるでダン・ヘンダーソンのためのCBSライブ中継で、ジェイクは期待された役割を全うしそうになっていた。が、潜りから足関、向きを変えられるとシングルレッグの要領でスイープを仕掛け、この難局を乗り切ると、2Rからはテイクダウン+ポジショニングでダン・ヘンを圧倒した。MMAで下になることは危険だ。だから、ガードポジションは……、ガードワークは必要ないのか。下になると危険だからこそ、その状況を乗り切るためにガードワークは不可欠とも言える。ジェイクのテイクダウンの強さと、ポジショニングもあのガードワークなくして、発揮されることはなかった。ただし、この大逆転の勝利にも、攻め続けている試合途中も、ナッシュビルの観客はブーイング。ダン・ヘンに勝つことだけで評価されない、それも北米MMAの一面といえる。とにかくダン・ヘンに勝ったジェイク、今、一番見てみたいのは、ジェイク・シールズ×GSPだ」
01位 6月12日 UFC115 カーロス・コンディット×ローリー・マクドナルド
「まず、ローリー・マクドナルドというUFC配下選手のなかで最年少のカナダ人ファイターの戦い振り、そして強さに驚くしかなかった。きっと彼には『格闘技のベースは何?』だとか、『グラップラータイプ?』、『ストライカータイプ?』という問いは意味を持たない。立ちレスが苦手なコンディットとはいえ、簡単に2度続けてテイクダウンを奪い、ヒザ十字狙いも遮断。立ち上がられると左右のロー、ミドル、前蹴り、ヒザで距離をコントロールし、ラウンド終了間際にまたもテイクダウン。マクドナルドにとって、テイクダウンと打撃は別モノでなく、サブミッションとパウンドも別モノでない。MMAで勝つために必要な手段として同列にあるに違いない。ピュアMMAファイターのマクドナルドだが、逆転男コンディットは1&2Rの劣勢を3Rに放った一発のエルボーで形勢逆転に成功した。ここはキャリアの差で、劣勢になり失ったリズムを立て直すことができなかったマクドナルドに対し、コンディットはトップからエルボーとパウンドを連打し、試合終了の僅か7秒前にTKO勝ちを収めた。逆転勝ちしたコンディットもさすがだが、やはり怖いと感じたのはマクドナルド。このネオMMAと呼ぶべきスタイルの持ち主マクドナルドの将来性と、その芽を摘むやもしれない一発のエルボー。そのエルボーを放つことができるコンディット、全くもって脱帽だ」
ということで、私的2010年上半期のベストバウト20でした。ここ2~3年で見られたMMAの技術的発展が、別次元で進んでいる――、そんな印象を持つ試合が増えた。
立力や抑え、それ以前の打撃、それ以降の極め――というものを融解し、
パラレルワールドのように、横の世界に持ち込んで、その技術を駆使する。
それがネオMMA。ベストバウトにあげたローリー・マクドナルド、マイケル・マクドナルド、名前を挙げることができなかったが、エヴァン・ダナムらに象徴される戦い方。
総合には際の攻撃というものが存在し、そこを制する者が、試合を有利に進めることができるという風に考えられてきたが、もう際そのものがなくなった。
それが今のMMA。
と同時に、その最先端のスタイルと戦って、なお打撃系、あるいはグラップリング系といわれる古いとされるスタイルのファイターが勝利を得ることができる。
それもMMAの醍醐味だ。
続いてBiggest Up Set部門の大賞は
4月10日 UFC112フランキー・エドガー×BJ・ペン
先日、次点に挙げた番狂わせ大賞、エメリヤーエンコ・ヒョードル×ファブリシオ・ベルドゥムでは、結果論とはいえヒョードル敗北に納得できる要素がいくつか存在した。対して、BJ・ペンの敗北理由をこの試合前に遡っても見つけることができない。
ここ数年、以前と比較して試合の間隔が空き、同じ階級のトップ中のトップとされるファイターとは戦ってこなかったヒョードルに対して、BJはウェルター級王座挑戦こそ失敗に終わったが、ライト級ではジョー・スティーブンソン、ショーン・シャーク、ケニー・フロリアン、ディエゴ・サンチェスとUFCライト級トップコンテンダーを完封し続けてきた。
オクタゴン中央のBJに対し、出入りの激しいボクシングを仕掛け、決して打ち合いはしないエドガー。手数こそ多いが、自分の目にはカウンターで迎え撃つBJのパンチの方が精度は高いように見えた。
エドガーは3Rと5Rに一度ずつ尻持ちをつくようにBJをテイクダウンした。ただし、最初の時はすぐに立たれ、二度目もBJのガードワークで効果的な攻撃に結び付けることはできていない。
BJは自ら攻撃を仕掛けるべきだったという意見が、試合後に挙がった。それはそうかもしれない――、大事に大事を取るという意味なら。
迎え撃ってパンチを当てる。これまでの防衛戦で、常にBJが見せてきた手段だ。
ただし、エドガーはBJの懐に留まることなく、すぐに下がっていたので、
パンチを当てても、倒すことはできなかった。
倒すことはできなくても、これまでと同じように戦ってきて、
拳は挑戦者の顔面を捉えているのだから、BJ陣営がポイントでリードしていると
思っていたとしても、仕方がない。
逆に明確に攻められていると感じていれば、BJなら自らテイクダウンを仕掛け、
グラウンド戦に挑むことも、自ら前に出て打撃を繰り出す機会ももっとあったはず。
つまり勝っていると判断したことが、敗因となったわけだ。
これは、しんどい。
どこまでがセーフティリードで、どこからがグレーゾーンなのか、
BJ陣営でなくとも、しっかりと把握している者は、選手サイドには存在しないだろう。
もちろん、ジャッジ自身も分かっていない。
ジャッジの基準があまりにも不鮮明な故、ファイターは大事をとるために
流すのではなく、攻め続けないといけない。
UFCのルールをつかさどる州コミッションとの橋渡し役の
マーク・ラトナーは、MMAはラウンドマストではないと言うが、
北米のMMA中継では、ハッキリとラウンドマストと発言することもある。
僅か3Rの戦いで、ニア・フィニッシュ(関節、KOともに)だろうが、
手数、あるいは一つのテイクダウンだろうが、つけられるポイントの殆どが10-9、
こんな状態では、ジャッジの裁定を頭に入れて戦うこと自体がナンセンスだ。
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