【Fight&Lifeコラム】Fuck U !!/高島学

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外国人のお辞儀の仕方や、手の合わせ方に対し、
ちょっと微笑んでしまうことがある。
視線を上げて、お尻を突き出して、あまりにも様になっていない。


でも、微笑んでしまうのは、彼らが礼節に関して、
相手や神仏に対して、尊敬の念、畏敬の念を持ったうえでの、不格好な行為だから。


そんなちょっと温っかい気持ちになるのと、正反対な感情を持ってしまう光景がある。


一応、英語でコミュニケーションができる人間として、
英語を話せない日本人が、『F○ck You』という言葉を吐くシーンほど、
様になってなく、格好が悪いことはないと思っている。


英語でコミュニケーションが取れる人間は、
間違っても、そんな言葉を普通は吐かない。


もちろん、中指を立てるという行為も――だ。
実は、もう20年近く前になるが、大学生のときに米国へ行き、
車を運転中に後方からクラクションを鳴らされ、
この中指を立てるという行為を行なったことがある。
次に車が止めた時、
後方の車から降りてきたアフリカン系アメリカ人の怒りようはなかった。
それはそれは空恐ろしく、ひょっとしたら命がないものかとビビったものだ。
シカゴ郊外、当地に住むようになって3年目の兄は
『お前、殺される覚悟がないなら、そんなこと絶対にするな』と、
目の色を変えて、どなり散らした。


兄から母へ渡すよう、預かっていた現金を競馬でスッてしまうような最悪な愚弟に対しても言葉を荒げることがなかった兄が、目に怒りを込めて大声を出していた。


本当にバカでバカでしょうがなかった自分でも、
その中指を立てるという行為だけは、今後の人生で決してしまいと思った。


というわけで、大晦日の話に移ります。


昨年の大晦日は、自分のような人間にとって、
格闘技として、これまでの大晦日興行と比較すると、
最も真っ当なイベントだと感じた良質なイベントだった。
なぜ必要?――と思うカードもあったけど、
対抗戦のクオリティの高さと、魔娑斗+K-1甲子園(の是非は別にして)で
PRIDEシンドロームが、ようやく感じられないイベント、
そしてビックショーをニッポンの格闘技界は持っていることを証明した。


7時間、18試合のロングランイベントのなかで、
川尻達也の肩固めへの入り方、
郷野聡寛の腕十字を仕掛けた際の、左足の突き差し方、
そして、立ち力を利したアミール(自分は柔術的な動きのなかでなく、MMAで立ち力を利した際には、ライアン・シュルツと呼んでいる)から、青木がパウンドでなく
関節を極めにいった3つのシーンこそ、同大会のハイライトだった。


青木は本当に素晴らしい勝ち方をした。
廣田の負傷は気の毒で、その身を案ずるが、
格闘技として、タップをしなかったし、
セコンドがタオルを投入しなかったのだから、
インシデントだろうが、アクシデントだろうが、ああいう結果に終わっても致し方ない。


ただ、その相手に腕を伸ばして、中指を突き立てる行為は言語道断。
あの瞬間、青木という素晴らしいファイターが、
何とオゾマシイ存在に見えてしまったことか。
本人も反省しているだろうし、謝罪の言葉を述べている。
だが、彼が行なった行為が、我々の歴史から抹消されることは決してない。


あるいは、前述したことに関連するが、
その行為の持つ、おぞましさを理解していなかったのかもしれない。


あの行為だけが、青木の人間性というわけでは決してない。
稀代の名グラップラーを、あの行為だけで、評価を貶めたくないという気持ちは当然ある。
自分は旧知の人間と会話中に、
その傍を通った青木に「やったよ」という風に拳を上げられ、
手を挙げてうなずいた。


そう、彼を知っている人間なら、勝って良かったと発言するだろうし、
勝利に対して、笑顔を見せる。
手を挙げて、その奮闘をねぎらう。


だが、アレは絶対にダメ。


青木に近しい人間がいるように、廣田にもいる。
そして青木には、廣田にない知名度、格闘技を引っ張るポジションもついて回っている。
アレを目にして、格闘技を習わそうと思う親は、まずいない。


自分が見た限り、セコンドの八隅は必至で青木を止めていたように見えた。
青木は、八隅のような先輩がいることを有難く思い――、
しっかりと、彼のことを『さん』づけで呼ぶことだ。


反省しているなら、そこから。
格闘技が強いから――で、済まされない事態を引き起こしてしまったから、
普段の生活のなかから、変えていく必要がある。


青木自身が試合後のコメントで、
「笹原さんが刺しに行けっていうんで」という発言をしているけど、
本当にそのような発言があったとしても、
青木は彼の発言を信じて、行動に移したのか。
試合後の会見で、モノゴトの真理があるとは思っていないが、
切腹発言と同じ程度の軽口に
青木が素直に従った上での愚行なら、
厳重注意を与えた本人にも、厳重注意が必要になってくる。
何だか、とてもレベルの低いことが、自分のなかで疑問として残っている。


あと、自分が思うに、今回のように、青木の行為が話題になると、
アレを肯定する者が出てくるし、ちゃかしたり、煽ったりする者も出てくるが、
そういう人たちは、格闘技ファンでなくなってもらって結構だし、
格闘技を語ったり、見てもらわなくて全然構わない。
同様に批判する人間の言葉にも、常識が求められることを知ってほしい。


この件に関し、青木が強がりを言おうが、反省しようが、きっと色々、学ぶことになる。
勉強することになるのに、そういう声が、青木を突っ張らせてしまう。
やってしまった過ちは、罪に問われようが、不問で終わろうが今後の糧にするしかない。


とにかく、青木に分かってほしいことは、
試合は100点でも、試合後がマイナス200点なら、
それは彼のいう職業、仕事として、失格だということ。


自分は格闘技記者だから、選手を尊敬したい。
強い選手を追いかけたい。
ただし、ただ強いだけでは、獣と同じ。
なら、ライオンやトラ、熊と戦っていればいい。


ライオンやトラ、熊と戦って恐怖を覚えるなら、
人を敬う気持ちを持ってほしい。
青木は恐怖を知っている人間、だからこそ、今回のことを反省とかでなく、
深く考えてほしい。


最後にあのシーンをそのまま中継したTBS。
明らかに大晦日を特別仕様とし、ストップのタイミングが早かったり、
流血に対して、放送コードを持ち込むはずの彼ら――。
深夜枠やプライムタイムなど、中継環境で、格闘技の軸をずらすTV局が、
あのシーンを流した。
スポンサーが離れ、批判が集中することが予想されるシーンを普通に流した。
魔娑斗がいなくなった格闘技は、もう必要ない――、
青木をスケープゴートにでもするかのような中継だった。
格闘技界は、どこまでそのようなTV局を必要とするのか、
メディアの形態が変わっている今、考え直す必要がある。
テレビ視聴率によって、広告費が集まる世の中は、
2011年の地デジ化で、何か変化が起こるはず。
一軒に複数おかれたTVを、この不況のなか、
全て買い代えることなどできない。
ネットTVの需要が増える――、その時、企業の資金の宣伝のための
費用のつぎ込み方は、確実に変わる(雑誌ももちろん、対策が必要)。


話が横道にそれてしまった――。


青木以上に考える時間があり、どうとにでもできるTV局の大人の所業は、
青木のソレよりも、ずっと悪意に満ちていたように感じる。


青木もそうだし、TBSの姿勢もそう、
格闘技とは何なのか、各々の立場で、格闘技が持つ価値観は違ってくると思うが、
やはり一歩間違えれば暴力と取られかねないものであるので、
礼節を以って臨めるものであってほしい。
選手にしても、伝える側にしても、そして見ているファンの人たち、
練習で汗を流す人たちにとっても、格闘技とはそういうものであってほしい。
そうであれば、例え不格好でも、格闘技は温っかいモノに見えるはずだから。


最後になりましたが、
Fight&Life読者のみなさん、明けましておめでとうございます。
誌面を通してですが、本年もよろしくお願いします。

 

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【 2010年01月04日 00:06 】

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