【最新号】Fight&Life vol.15
デイブ・コントレラスくんに初めて会ったのは、
2006年11月、サクラメントのARCOアリーナだったと記憶している。
UFC65、ブームといわれた始めた米国MMAだったが、
まだ、今のように米国の大手雑誌媒体は定期的にUFCを取材しておらず、
日本の雑誌メディアでも、気楽にオクタゴンサイドでの撮影が可能だった頃。
左隣にデイブ・コントレラスくんが、
ブラジルのグレイシー・マガジンの名でクレデンシャルを受け取る。
右隣はゴング格闘技でクレデンシャルを取ったシャードッグのデイブ・マンデルくんが、撮影を行っていた。
GSPが、ハイキックでマット・ヒューズを下し、
初めてUFC世界ウェルター級のベルトを巻いた大会として、記憶に残る同大会。
個人的には会場に向かうために宿泊先を出たところで、強烈な腹痛に見舞われ、
部屋に逆戻り、到着が第一試合ギリギリになったこと、
そして、一刻も早くオクラゴンサイドに着くことだけを考えていたので、
広い広い駐車場のどこに、車を停めたのかも、一切記憶になく、
大会終了後、冷え冷えとした会場周辺を1時間半もレンタカーを探しまわったことで、
忘れ得ない大会となっている。
そのARCOアリーナで、カタカナ仕様のビジネスカードを差しだした
デイブ・コントレラスくんは、片言の日本語を操るが、
会話をするには英語にしたほうが無難――、そんな日本好きの青年だった。
グレイシーバッハ・アメリカで柔術を学ぶ格闘技好きで、
今はケトルベルにハマっている彼の名刺には
ブドービデオ・コムという会社名が記されていた。
その後も、何度か会場で顔を合わすようになり、
自分が取材に行けない大会の撮影を依頼するなど、徐々に連絡が密になっていった。
LAで合流し、もう一人のデイブとベガスまで車を走らせ、WECを取材したこともある。
そのデイブ・コントレラスくんが友人と作ったブドービデオのオフィスは、
オレンジカウンティの北端、LAXからだと渋滞なしで、30分ぐらいのドライブで
着くガーデングローブに構えられていた。
南は大ヴェトナム・コミュニティのあるウェストミンスターということもあり、
ヴェトナミン・レストランの看板を目にすることができるだけで、
取り立てて特徴があるわけでもない、人口20万人弱の住宅地にあるオフィスは、
ちょっとしたショップを併設していた。
マンハッタンビーチの柔術プロギア・ショップや、
レドンドに進出したOTMなど、LAに取材に行くと、
教本や教則DVDやTシャツなどを買い漁ることもシバシバあるが、
それら2つのショップと比べると、如何にもこじんまりとした印象を
ブドーコムのショップには持っていた。
友人と、日本のクエストビデオで1500ドル分ほどのDVDを購入し、
インターネットで販売することで、このビジネスを始めたデイブ・コントレラスくん。
これが時代の流れ、彼はショップでなく、
ネットでの商売をメインとしていた。
2度目の訪問時に、ショップの裏に個々の仕事部屋を持ち、
従業員を5人雇っていることを初めて知った。
その後、彼は4つほど建ち並ぶウェアハウスの一つを買い取り、巨大な倉庫や
技術教則DVDのためのスタジオ設備まで保有するようになった。
それが去年までのデイブ・コントレラスくんとブドービデオの話。
先週の月曜日に彼の下を訪れると、ウェアハウスをもう一棟を借りあげ、
倉庫だけでなく、Tシャツやラッシュガードを製作するファクトリーまで
併設されるようになっていた。
従業員は一挙に3倍以上となり、17名。
YouTubeでパイロット版を流したグローバー・トラベルの完全版を
DVDで発売するなど、映像ビジネスへの進出に意欲を持っている。
さらにさらに、
クリス・ブレナンが立ちあげたNo-Gi(ブラジル版No- Giとは別モノ)を買収し、
自らブランドとして製作、発売も開始した。
今週の日曜日に行なわれるノーギ・ワールドの公式サプライヤーとなり、
白帯から茶帯の大会公式ユニフォーム製作もひと段落したようで、
ファクトリー内にはラッシュガードが整理整頓され、出荷の時を待っている状態だ。
ブドービデオでは、ノーギ・ワールドの模様を
No-Giの公式ホームページ、www.nogi.comでライブストリーミングを行なう。
「無料だから、数多くの人に見てもらいたい。
それがブランドの説明になるしね」
フォーを食べながら、コークをお代りするデイブ・コントレラスくんは、
そう言って、目を輝かせた。
MMA人気が爆発しても、ブドービデオはMMAには走らない。
その理由は「柔術やグラップリングのことは理解できても、
サンドバッグを蹴ったこともないから、製品を関してアイデアが浮かばない」から。
至ってシンプル、そして積極的にトライする。
ブドービデオでは、去年の終わりから、今年の春過ぎにかけて、
3ドル95セントで販売された季刊誌『マーシャル・ジェネレーション』を発売していた。
カタログ雑誌のようだが、そこそこの値段がしたMGは、
3号をもって廃刊となった。
「プリントは費用がかさみ過ぎたんだ。
ちょっと、僕たちには敷居が高く――、少し時代遅れのものだった」
デイブ・コントレラスくんが、自分に気を遣いながら言った一言は、
それでもズシンとこの胸に響いた。
印刷物は時代遅れ――、
時代に適合していない。
確かになぁ、PCをつけて
クリックし、選手の生の声が聞こえ、
選手の表情が見られるインタビューの方が、
ストレートに人々に受け入れられるかもしれない。
ただ、自分は
その一瞬、一瞬を刻むような写真は、
動画と違った意味で、最高に胸に残るものだと信じて疑わない。
一瞬にして、一生に残る作品を残すことができる
カメラマンさんが、自分の回りには存在する。
その写真がさらに見栄え良く見えるために、
限られたスペースのなかで、悪戦苦闘する
優秀なデザイナーさんが、存在する。
敷居が高くなるのは、そこに努力と才能があるから。
そんな身の周りの人たちの努力と才能、
そして格闘技に情熱を燃やしつづけるプレイヤーたちの想いを
無駄にしないための原稿――、が書けない自分に腹立たしさを感じる。
だから、もうチョット、見苦しく、もがいてみようと思う。
自分は古い人間として、自分を真っ当するしかできない。
その一方で、デイブ・コントレラスくんのような若者が、
日本の格闘技界という土壌で、育ってくることを願ってやまない。
勝手ながら、新しい時代が元気だからこそ、
古い世代だって頑張ることができる――と思っている。
同時に古い世代が、しっかりしなければ、若い世代が育つことがない。
互いに切磋琢磨し、正常な新陳代謝を活発化させるには――、
ぐだぐだ言うんじゃなくて、
(本当は一番使いたくない言葉だけど)、頑張るしかない。
「フォーじゃなくて、
ミリオンネアーにはアイオワ・ビーフをごちそうになればよかったよ」
別れ際の自分のジョークに対し、
「ミリオンネアー? 今はまだだよ」と
明るく言葉を返してきたデイブ・コントレラスくん。
その眩しさを前にして、どこか雑誌の限界なんてことを
勝手に自分のなかに持っていたことを恥じる。
時代遅れの良さ――を、
追及させてもらおうかなとチョット思った次第です。
デイブの言葉を借りるなら、
「自分は格闘技のページを創ることしか、分からない人間」なので。
<編集部からのお詫び>
今回のコラムは本来、ノーギ・ワールズ大会の前に掲載予定でしたが、当編集部の都合により大会後の掲載となりました。関係者の方々にご迷惑をおかけしたことを心よりお詫び申し上げます。
今大会は日本時間14日(土)午前4時より、24時間リプレイ中継で、決勝戦の模様が視聴可能です。ぜひご覧下さい。
視聴はコチラから
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【 2009年11月12日 20:01 】http://www.fnlweb.com/mtv33/mt-tb.cgi/4652