格闘技ファンとして、純粋でへんこ。
人間として、純粋でへんこ。そんな最も信用のおける知人の携帯から、
こんなテキストメッセージが、PCのメールボックスに届いていた。
Who do u think r top welter wt in japan now?
その1時間後に、彼から数名の名前が挙げられ、その他には?と尋ねられた。
誰がベストファイターか、それは十人十色。
直接対決があったとしても、その結果が未来永劫に続くわけでもないから、
誰か一人を挙げても、そこに真実はない。
ただし、このやりとりのなかで、ちょっとゾッとした現実を見てしまった。
その知人が挙げたファイターは、6名。
「そのなかの2人と、もし、減量したら」ということで、1人の名前を追加した。
このやり取りで挙げられた7人のファイター、全員が30代だ。
MMAは新しいスポーツ、そして元は異分野と捉えられていた技術を集結させるため、
その習得に時間がかかり、中心が30代になってもおかしくない。
そのMMAテクニックも打撃、グラップリングが組み合わさり、
一つの分野に収めつつある、その途中にある。
MMAというルール内の攻防で、優劣をつけるため
技術には流行り廃りもあり、また別個のモノとして学んだ技術にしても
基本に忠実な正しい技術を進化させ、MMA用にアレンジする必要もある。
打撃と組み技、別々のモノとして学んだ技術が、正しくないと
MMAに取り入れても通じない。
そして、その正しい技術を学んだ者が、MMAに必要な部分を加え、
同時に必要ない部分を捨てる作業を積んでいる。
そんな熟練されたテクニックを、
MMAファイターを目指すモノ全てに指導できる段階には入っていない。
柔術やキックを学び、MMA用のトレーニング、スパーリングを行なう。
あるいは柔道やレスリング、キック、ベースを持つファイターが、
自分に必要なテクニックを学び、MMA用とする。
進化の過程にあって、現時点で完璧と思われる
練習形態もないし、手探りの状況が続いている。
そんな状態なので、30代のファイターの経験が、若い選手を上回る。
12~13年ほど前は、上がない状態だった。
だから、キャリアの少ない選手が勝ち上がり、
そこでトップになった選手が、このスポーツを代表するようになった。
当時の日本は世界一のマーケットを持つ国だったがために、
それらのファイターが、世界を舞台に戦うことができた。
もう、1年も前になるが、
浜松で青木真也と、
「日本のトップは世界のトップ。これは間違いない。
ただし、日本の15位と米国の15位の差は確実に存在する。
トップは世界と戦えても、日本のトップ15と米国のトップ15のアベレージを考えると恐ろしい」という風な話になったことがあった。
1年前だ。
そして、それはライト級以下の話で、
冒頭にあるウェルター級の日本のトップは、
残念ながら北米ではトップ10入りできていないことが、この12カ月で明らかになった。
それは、12~13年ほど前のヘビー級、そしてライトヘビー級の状況だ。
ミドル級も岡見勇信のあとに続く――、という20代のファイターを
ファンのみならず、記者、あるいはジム関係者でも、
すぐに名前を挙げることができるだろうか。
ライト級には青木真也(26歳)がいる。
川尻達也(31歳)がいる。菊野克紀(27歳)が育ってきた。
廣田瑞人(28歳)が出てきた。
五味隆典(30歳)もいる。
北岡悟(29歳)は、ウェルターで復活してほしい(あくまでも個人的な意見)。
ここに挙げたファイターだけでなく、「自分のことを忘れるな」と言いたいであろう
選手は、ライト級にはまだまだ存在している。
その多くのファイターが、アマチュア時代から鎬を削り、
修斗やパンクラス、DEEPという大会で名前を挙げ、
ビッグプロモーションに活躍の舞台を移していった。
鎬を削り、世界のトップと対戦する機会、
その経験が彼らを世界のトップファイターに仕立て上げた。
日本のライト級の質と量は、人材を供給する側が育んできた。
彼らのブランドを高めたのが、PRIDEだった。
振り返って、現在を見てみよう。
彼らトップファイターを切り崩す、トップ下のファイターから
トップを食う存在がなかなか現れない。
鎬を削り合って、結果を残しても、
世界と戦えないファイターが増えている。
実力はトップレベルかもしれない、
そうでないかもしれない。
大切なことは、腕試しをする機会がほとんどないという点だ。
相対的な部分で力を発揮し、絶対的な部分で力を示すことができないので、
名前を浸透させることができない。
これは日本のMMAの構造的欠陥といえるだろう。
一度、名前の売れたファイターの商品価値を大切する部分と、
知名度がないファイターの将来性を買うという部分のバランスが隔たっていたため、
その将来を狭めてしまった。
誰もが菊野や廣田になれるわけではない。
ただし、彼らのようにチャンスを与えられる者が、もっと多くてもいいはず。
支持を得るのに、偶然か必然か分からないが、
時おり現われるスーパースター頼りになっている。
UFCでは、TUFで知名度が底上げされたファイターも、
その既得権には、賞味期限が設けられている。
力なきファイターは、TUF以外のファイターに追い越されていく。
そういう機会が巡ってくることを知っているから、
TUF卒業生以外のファイターも、モチベーションを保つことができる。
格闘技は実力社会。
世界選手権で勝てなくなった男子柔道、
五輪のたびに復活する柔道家の知名度で、この窮地を脱することができるのか。
あるいは柔道をTVコンテンツとして残すために、
今まで以上に個の部分、私生活のドキュメントがタタミの上よりも、
クローズアップされるのか。
日本のMMAでは全階級で世界の頂点を決める戦いが、身近に見られたのは、
もう4年も前の話だ。
今は確かな力を持つ、
日本人選手が存在する階級でのみ、世界を身近が感じることができる。
現時点のトップファイターが、引退を考える時期、
引退するときまで、日本のMMAは持つかもしれない。
だが、その後を考えると――。
だからこそ、今、懐に入れられるだけ入れようという考えも起こるし、
その将来を悲観し、若い世代がこの業界に入ってこない可能性もある。
五輪出場選手や金メダリストに注目が集まるのは良しとして、
なお、それだけじゃない部分にスポットを当てる。
そういう作業をするのは、誰の役割か。
そういう目を養う役目を担うのは誰なのか。
答は出ているはずだ。
フェザー級やバンタム級では、
若い世代の活躍している割合が、ライト級よりも高い。
日本には両階級の歴史があり、
また世界的にみて他の階級よりも層が薄く、
北米のマーケットがまだ十分でないことが、その理由だ。
国内大手も、興業の売りとしてこなかった。
フェザー級やバンタム級は、可能性を秘めた、若い選手が多い。
外へ出て行って、新鮮に感じるベテランファイターも多い。
ただし、そのフェザー級やバンタム級でさえ、
WECがズッファに買収されてからは、
米国とブラジルのポテンシャルの前に、日本の経験からくる強さは瓦解しつつある。
それでも、LAに住む友人から
Who do u think r top feather wt in japan now?
あるいは
Who do u think r top bantam wt in japan now?
とテキストが送られてきたら、
ファイターの名前を思い浮かべることが大変だったウェルター級と違い、
スラスラと名前が出てきて、
絞りこむことが大変だったと思う。
柔道のように軽量級から重量級まで、全てトップになる必要はない。
勝てる階級をビジネスにする、
あるいは世界で戦うためのビジネスモデルを構築する。
格闘技が好きでいることは、生活と違い、
いつでも放棄できる。
放棄できる人たちの興味が長続きするモノ。
結局のところ、強さを追及することだと自分は思う。
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