【Fight&Lifeコラム】Necessary /高島学

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締め切りラッシュを終え、一息つけばいいのに
世界陸上の合間に、ちょっと試しで始めたゲームに夢中になり、
朝まで、いや昼前まで続行。暑さと寝不足で頭がボォっとしている。


全く「いい年こいて、何やったんだ」ということだが、
コンピューターゲームなんて、ウィイレ5からやってなかったものだから、
両手の親指が痛くてしょうがない。


日本では10月に発売されるUFC2009 UNDIEPUTED。
米国では既に150万以上も売れたらしい、この格闘ゲーム。
いやぁ、面白い。
何が面白いって、登場人物が見覚えのある連中ばかりっていうのが、
個人的に楽しめる。


ブルース・バッファーのコール、ジョー・ローガンの解説。
カットマンのステッチ、レフェリーのマリオ。
ディエゴ・サンチェスのセコンドにはサウロ・ヒベイロまでいる。
思わず、ほくそ笑んでしまう。


テレビ局から派遣される中継スタッフを拒絶し、
TV中継ディールがまとまらなかったという話を聞いたことがらあるが、
彼らが一つのパッケージにこだわっているのも納得できる。
選手だけでなく、関わる人間、パーツとパーツが組み合わさって、
UFCという形を形成していることが、
ゲームを通して、改めて理解することができた。


リアルさの再現という部分で、階級別になっているけどBJ・ペンは
ライト級とウェルター級の両方で戦うことができる。
アンデウソン・シウバも同様にミドル級だけでなく、ライトヘビー級でも戦えるので、
早速、LYOTOと夢の対決を自宅で実現させてしまった。


最近の格闘ゲームというものを知らないので、比較対象を持てないが、
パスガードをしたり、テイクダウンされると同時にギロチン、
何かの拍子で飛びつき十字を仕掛けたり、かなり新鮮に感じた。


正直、遊んでみる前は、ゲームなんだから、
別にMMAでなくても、プロレスで勝敗を競い、派手な技があった方が
面白くないかと思っていた。


ダメージのゲージが出るのでなく、一カ所を攻め続けると体が腫れたり、
カットが大きくなるという部分は、まさにバーチャル。
スーパーマンパンチで飛び込んで、パンチはブロックされても、
すぐにテイクダウンへいこうとか、
勝手に自分がGSPになったようで、ジャーマンもケプラーダもなくても十分。


負けると悔しいし、同じところを攻められないように、サークリングの方向を変えたり、
ウサイン・ボルトの登場を見逃すほど、必死になってやりこんでしまった。


そんなUFCの攻防が再現されている当ゲームだが、
ケージにもたれるシーンは出てこない。
ケージ際の攻防が再現されていないのは、きっと視的効果、CGや操作性、
製作プログラムの問題だろうけど、構えがオーソドックスに統一されているのは、
どういう理由からなのか、ちょっと気になった。


なんせ、このゲームの素晴らしいところは、
スタンドではボクシング、キック、ムエタイ、
グラップリングではレスリング、柔道、レスリングと得意分野が分かれており、
その選手や競技スタイル、それぞれの特性にあった操作が必要になる。
リョートはテイクダウンにはなかなかいかないけど、
グレイ・メイナードはガンガン決めるし、マット・ヒューズはハーフのトップから、
アメリカーナを極めに行きやすいなど、
ただ技を出すだけでなく、特性を考えて、技を繰り出す必要がある。


だからこそ、サウスポーのファイターは、そのままでいてほしかったが、
製作サイドの技術的な問題でなければ、
やはり、米国でもそこまでこだわってUFCを見る人は
それほど多くないということなのだろう。


ただ、一つ、確信が持てたのは、
サウスポーの利点なんてどうでもいいと思って、
MMAを見ている人も、このゲームをすれば
きっとガードの操作方法を覚えるに違いない。


攻撃だけに頭が行っていると、勝てない。
自分が操作している選手が、パンチや蹴りをヒットさせるには、
手や足が届く距離まで前にいく必要がある。
つまり、相手の攻撃も受ける位置に立たないといけない。
ディフェンスをしなければ、相手の攻防を受けることになる。


足の方が腕よりも長いから、ミドルで相手の動きを止め、そこからパンチにつなげる。
ただし、そのミドルを掴まれて、テイクダウンを取られることもあるので、
すぐにアームロックで切り返す準備を、心の中でしている41歳のオヤジがいた。


バーチャル、ゲーム、そこで勝つためにディフェンスや戦略、
ラッシュだけでない、勝つために必要な何か=手段を講じる。


リング上で戦う選手は、ゲームにはない痛み、恐怖を抱え、
それこそ、何千、何万通りとあるシュミレーションし、
自分の得意・不得手、スタミナを考えて戦う必要がある。


いかに自分に都合良く戦うのか。
自分は傷つかずに戦いたいと思うのは、当然のこと。
反則以外、あらゆる手、頭を使って勝利を目指す試合を否定するのは、
やはり都合が良過ぎる。


格闘技は面白くない――と言われてしまえば、
それはそれまで。


リング上では、面白くない試合も当然起こる。


選手の試合に対する意気込み、葛藤、
あるいは生い立ちや将来の夢――、これらの背景を伝えることで、
格闘技は面白いとするのも有り。
大言を吐くから、面白いとしてもいいだろう。


それら、背景を伝えるという部分と同じように、
行って来いの打ち合いにならない勝負のアヤを伝えること、
そして、勝負のアヤとなる攻防を、
理解できるよう役立つページも不可欠なはず。


どちらも格闘技の面白さを追求し、結果が全て出ないことを伝えている。


選手にはもっと工夫があり、その工夫の内容を知れば、
殴り合いとか、試合結果、決着方法だけでない角度で
MMAを楽しめると自分は思っている。


あるいは試合前から、もっと楽しくなる。


GBRの中村君が、話題のMMAムエタイを、青木真也本人に尋ねて、レポートした。
自分も手前みそながら、エルボー有りの首相撲の攻防、
足払いとタイナーという部分で、MMAムエタイを少しでも解き明かせることができればと、吉鷹弘さん、佐々木功輔さんの経験とお知恵を拝借させてもらった。


「力を使わない、楽する技はリスキーなんです」と佐々木さんは言った。
「エルボー有りでは、首相撲で内側から手を通すと危険」だと、吉鷹さんが教えてくれた。


もう、10年も昔に、覚えるのも大変な場単操作で、技のコンビネーションを
繰り出せる格闘ゲームがあった。
ただし、下段を蹴り続けていれば、勝てた。
距離をとって、ローで勝つやり方は、仕事中の息抜きで本気になる
当時の編集仲間の間で、否定されていた。


なぜか?
距離をとって、ローを蹴ることが安全だからだ。
片一方が安全だと、ゲームとはいえ見ている者も面白くない。


ただし、本来はローで勝つことだってリスクが伴う。
そのリスクをついて、対戦相手は攻略する。
相手がいる格闘技で、危険を伴わない攻撃なんて、存在しない。
だから、少しでも危険を伴わないよう、考え、
精度を上げるためにトレーニングを積んでいる。


それが、攻防だ。


技術って書くと、拒絶反応が出るのかもしれないが、
全ては工夫次第。技術=工夫。
工夫をしないと、ゲームだって次へ進めない。


面白い、面白くない――で格闘技を結論づけていると、
同じように、格闘技界も先に進めなくなる。

 

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【 2009年08月22日 20:32 】

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