【最新号】Fight&Life vol.13

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ここ2度のコラム、私的2009年上半期MMAアワードというものを記させていただいた。
そのおかげで、改めて半年も前のことを振り返ることができた。
こうでもしないと、これだけ時間の過ぎるのが早くなった今日で、
180日も前に、日常的に行われているMMAの試合を見つめなおす機会もないだろう。
こうやって見つめなおすと、改めてMMAは手っとり早く勝てる方法論が
確立されつつあることが感じられた半年だった。
英国勢の戦いぶり――、
レスリング+ボクシングを軸とするファイターが増えたことからも明らかだ。
単発で殴る、テイクダウンを狙う、倒しても、すぐに立ち上がることを厭わない。
テイクダウンを潰す、がぶっても、そこからは立ち上がる。
どうにも未成熟に見えるファイターたちの、フィジカルを全面に押し出した運動。
そう、戦いというよりも、どうにも“運動”に見えてしまうファイトが、増えている。
なぜか――。
なせ、テイクダウンを奪われそうになったファイターは、
ガードを取らずに懸命に立ち上がるのか。
なぜ、テイクダウンを奪ったファイターは、簡単に自ら立ち上がるのか。
それは――。
ガードワークからの仕掛けは、一本以外ほとんど評価されないから。
寝技で態勢を入れ変えられると、それだけジャッジの印象が悪くなるから。
下になってからの仕掛けを評価できないジャッジが、試合を裁くから、
ポイント計算上、寝技の攻防はリスキーになる。
そして、スタンドキープの評価が高い。
あるいは、その後がなくても、尻もちをつかせるようなテイクダウン、
寝かせることができずに、その後に有効な攻めがなくても、リフトでもすれば、
もうノックアウト分ほど評価される。
そのスタンドの攻防は、打ち合いになると、
どれだけリードしていても、一発で終わることがある。
ポイント上でなく、戦いそのものがリスキーなものとなる。
そんなリスキーさは、ファンに歓迎され、
ファンの声援に左右されるほど、(組技を理解していない)ジャッジに影響を与える。
組技は減点法で、立ち技は加点方、そんな10ポイントシステム。
加えて、1Pの格差は大きいままの北米MMA。
対戦カードの決定までが、非常にスムーズなのに、
判定決着には、いつまでもモヤモヤ感がついて回るが、
そんな状況下で、勝者になりやすい道筋は見えた。
ただし、勝者以上の勝者になるファイターは、
実はそんな勝利の方程式にとらわれていないかもしれない。
戦い方、戦いのベースがはっきりとしているファイターが、
トップに君臨していないだろうか?
MMAは何でもやっていいが、別に何でもやる必要はない。
得意分野という軸を持ち、違う要素の枝葉を伸ばしていく。
軸がないファイターが、手っとりばやく自らの武器にできるのが、フィジカル。
抑え込む技術、極める技術、倒す技術、殴る技術、蹴る技術、
それよりも、努力の数だけ目に見えて伸びるのが、フィジカルだと思う。
だから、フィジカル面の伸長は著しい。
ベースとなる技術を手中にするには、時間がかかる。
ベースがはっきりしなくて、全方面で強いファイターなんてGSPぐらいだ。
ただし、あのサイボーグのような強さに対抗するのは、
苦手分野を持ち、得意な攻撃を持つ人間たち。
BJは天性の打撃の才能があったかもしれないが、
彼はボクサーでなく柔術がベースのMMAファイターだ。
チアゴ・ピッチブルは、テイクダウンに強く、
倒されても立ち上がる能力を持つ、キックボクシングがベースのMMAファイターだ。
そのローキックとヒザ蹴りで、相手を潰してきた。
リョートは――、他に比肩できないカラテがベースのMMAファイター。
ユライアは、レスリングにムエタイを加え、
逃げとカウンターの寝技を身に付けたMMAファイターだ。
ドナルド・セラーニは、得意のムエタイと倒されてから真価を発揮する
ガードワークを身につけたMMAファイター。
いろいろなタイプの軸があるMMAファイターが存在する。
彼らの共通項は、
得意分野を伸ばす一方で、苦手分野をいかに克服するか――という部分。
そこに力を注いでいるファイターたちが、MMAの頂点にあり、頂点を目指している。
勝利の方程式が、絶対でないからMMAは面白い。
そんな北米MMAをさらに面白くしてくれそうなファイターたち。
下半期に期待したいファイター、そして彼らに臨むマッチアップ10試合を並べて、
この項を終わりとしたい。
個人的2009年下半期、見てみたいマッチアップ
01★エメリヤーエンコ・ヒョードル×チーク・カンゴ
「カンゴの試合を見ていて思うことは、もし、仮にこの世にMMAルールのファイトは存在しても、格闘技は存在しなかったらということ。フィジカルと闘争心だけの勝負になれば、カンゴが世界最強じゃないかと思ってしまう。バックマウントを取っていながら、立ち上がる。ホーイドンクに蹴り勝つ。カレッジ・レスリングの猛者で、ノーギムンジアル優勝のバラスケスがテイクダウンをいくら奪っても、コントロールしきれない馬鹿力の持ち主。そんな肉体派ファイターと、世界最強の皇帝との一戦。仮にヒョードルがUFCに上がることがある、あるいはカンゴがUFCからリリースされれば、ぜひとも見てみたい。生まれながらに強い人間と、格闘技とともに強くなった人間の戦い、とても楽しみだ」
02★ドゥエイン・ラドウィック×オーレ・ローセン
「グラップラー好きな自分だけど、実はムエタイも好き。60kg~70kgのキック好きだったという過去系を、現在進行形に変えようと努力している人間だ。ただ、立ち技ばかりのMMAは嫌いな自分は、ムエタイやキック=殴る、蹴るではない。特にムエタイの組みには興味がある。そういうわけで、このところあまり目立たないラドウィック。SHOMMAで敗北を喫してしまった彼だからこそ、中国でしか試合をしていないローセンとの試合が見てみたい。元K-1MAXファイター同士のMMA。新しいモノが見られるかも」
03★ケイン・バラスケス×ショーン・デルロサリオ
「だからなんだ? と言われかねないけど、本当に見てみたい試合。カレッジ・レスリングの強豪で、AKAで打撃+柔術の習得に励むバラスケスと、コリン・オーヤマの秘蔵っ子でWBCムエタイ王者、エリートXCからM-1を経て、どうやらストライクフォースに参戦しそうなデルロサリオ。動けるヘビー級次世代対決、、、実現の可能性は限りなく低いけど」
04★KJ・ヌーン×ジョシュ・トムソン
「5月中旬から、MMA復帰に向け、人知れず(一部はもちろん知っている)動き始めたKJ。戦極もその視野に入っていたみたいだが、落ち着く先はストライクフォースか。そうなれば、トムソン戦は非UFCライト級ベスト4対決といえる一番。あるいはアルバレスのようなケースで、ベラトール参戦もありか。とにかく、彼のMMA復帰は嬉しい限りだ」
05★イズラエル・ジーロン×ディエゴ・ガリーホ
「まだまだ未知のメキシカンファイターたち。メキシコ=ラテン・ボクシングのイメージが強く、実際ベラトールを見てもティファナで開かれるMMAイベントから出場してくるメキシコ在住の選手は、パンチ屋、そしてレスリングに課題が残るファイターが多い。しかし、ここに挙げたメキシコ期待のライト級ファイターは、ジーロンがヘンゾ・グレイシー、ガリーホがサウロ・ヒベイロの弟子にあたる。どちらかといえば、打撃に課題が残るグラップラーたち。軽量級拳闘王国から、MMAにチャレンジするファイターのなかで、特に期待される彼らが、グラップラーだというのも、ちょっと面白い話だ」
06★テリー・エティン×エフライン・エスクデロ
「自分は英国系UFCファイターに厳しい。彼らこそ、即席MMAファイターの代表に思えてならないからだ。英語を理解していない国の人間にとって――つまりTUFの是非に関係なくMMAが好きな人間にとって、彼らほど非個性的なファイターはいない。そんななか、エティンは特別な輝きを持っている。基本は他のUKファイターと同じく、即席培養、勝利の方程式に沿った戦い方をする。しかし、その蹴りの威力、積極的な姿勢、さらにはカウンターのグラップリングに強い。他と同じ方程式で戦っているのに、あのインパクトを残すファイトができる個の強さは、才能の賜物だと思う。対するエスクデロ、TUFウィナーだが、上半期には試合がなく、やや印象が弱くなったが、彼がUFCライト級のエリートであることは間違いない。そんなTUFの人気者、キャラが世に伝わった者を相手にしても、オクタゴンで見せる動きだけで、エティンはより輝くように思える」

07★ディエゴ・サンチェス×グレイ・メイナード
「ジョー・スティーブンソン、そしてクレイ・グィダというタフファイトを制し、ライト級トップコンテンダーの地位を獲得したディエゴ。対するメイナードは、9月に復活するロジャー・フエルタとの試合が組まれるようだが、この二人の対照的なグラップラー対決も楽しみだ。柔術的な仕掛けと、レスリングの強さ以上に打撃で見る者を納得できるようにあった両者だが、その打撃を餌にテイクダウンとポジショニングの妙技、そしてパウンドの威力を存分に発揮する削りあい――が見られそう。あるいはディエゴとフランキー・エドガー戦も◎」
08★ユライア・フェイバー×レオナルド・ガルシア
「ともにマイク・ブラウンに敗れ、ジェンス・パルバーを破壊した者同士。ブラウンの丁寧さと比較し、ともに荒く、そこが魅力でもあるユライアとガルシア。ものすごく、アンダーグラウンドの匂いをさせながら、オクタゴンが存在することで、その人間的な魅力が伝わってくるガルシア。あの爆発的な打撃が、ミスター・フィジカル+アグレッシブなユライアと対戦すると、どのような怖さを見せることになるのか。WECフェザー級にはヴァグネイ・ファビアーノやジョシュ・グリスピもいるが、ここにマルロン・サンドロ、小見川道広、日沖発らが絡んでほしい、、、といえば戦極関係者に怒られてしまうか。あと、ビビアーノもできるなら、フェザーで見てみたい」

09★パウロ・チアゴ×ジャスティン・トリー
「ジョシュ・コスチェックにワンパンチKO勝ちしたパウロ・チアゴ。ブラジリアンらしい、ラフな打撃の使い手。薄いオープンフィンガーと、テイクダウンが許されることで、打撃系ファイターとして存在する、間違ってもキックでは戦わない方が良いのではと思わされる選手。一方、トリーはまだキャリア5戦(5勝)のムエタイ系ファイター。パンチも蹴りもヒザも荒い、米国産ナックモエだけど、タイナーや足払いであれだけ対戦相手を転がすことができる選手は初めて見た。それも打撃系ファイターが増えたMMAだから通用するのかもしれないが、とにかく足払いからマウントを取るファイターに魅力を感じないわけにはいかない。きっとジョー・シルバなら、トリーのことをチェックしているに違いない」

10★五味隆典×クリス・ホロデッキー
「五味の米国チャレンジは、どうやらUFC参戦ということではないよう。その後の活動がどうなるか分からないアフリクションだが、もし仮に五味の米国再挑戦の舞台がトム・アテンシオのリングとなるなら、そこはカナダの若者ホロデッキーとの対戦ぐらいしか、めぼしいライト級ファイターはいない。UFCなら五味と戦ってほしいファイターはいくらでもいる。ストライクフォースでも、トムソンや実現するならKJ。ベラトールでさえ、アルバレスはともかくとして、ホルヘ・マスヴィダルがいる。彼らのほうが、一時期噂に上がったブレット・クーパーよりずっと見てみたいマッチアップだ。中蔵戦で、改めてのその魅力を見せつけた五味だからこそ、本当に強い相手との対戦を見続けたい。アメリカで試合をするのではなく、アメリカで戦う五味が見たい」
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