【Fight&Lifeコラム】Personal MMA Awards, 2009’s the first half /高島学

【最新号】Fight&Life vol.13
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Photo by Zuffa, Bellator FC, Strikeforce and Manabu Takashima

 

 

何度も何度も、見たり、聞いたセリフだと思うけど、
「早いもので、もう2009年も半年が終わろうといている」。

 


ウチの三女が「ダッコシテ」、「ジューシュ、チョーダイ」などと意思表示をするようになったのを喜んでいた頃、ラシャド・エヴァンズがUFC世界ライトヘビー級王座を獲得。その娘が

「アマネ、ヤサイ、タベナイ」、「トーチャン、アサ、オキテェ」と
主語を交えて話すようになった今、エヴァンズはリョート・マチダに王座を明け渡した。
この王座交代劇は、スポーツ新聞の紙面を賑やかにしたことは一切なかったようだが、
石井慧がUFCではなく戦極でのMMAデビューを表明したことは、
ある程度、巷でも注目されているようだ。
その石井が盛んに口にしていたTUFには、キンボ・スライスの出演が決定した。
これも全く報道されたようには感じない。
(実際、5月22日に日本を発ち、ベガス、アルバカーキ、LA、オランダ、ドイツ、再びLAと回っていたので、あまり日本のことは分かっていませんが――)

 


ということで――本題へ。

 


時の流れるのは、本当に早い。
エリートXCの崩壊から、ストライクフォースが多くの契約を買い取り、
SHOWTIMEへ進出。人材育成大会のSHOMMAとともに
3カ月で4度のイベントを開催し、全てライブ中継が行われている。
ESPNのスパニッシュ・チャンネル、DEPORTESで
ベラトール・ファイティング・チャンピオンシップが始まり、シーズン1が終了した。

 


やや緩やかになった感のある北米MMAイベントの盛り上がりだが、
ストライクフォースの台頭、ベラトールの開始により、
またぞろ、才能あふれるファイターが発掘され、
ケージやリングの上では、激しい生き残り合戦が繰り広げられている。

 


その間、MMA組力と勝手に呼んでいる――、ケージを利したテイクダウンや、
スプロールの攻防は、ますます進化し、
デミアン・マイアによる潜りスイープからの極める柔術も、一部で復活。
さらにはムエタイのテクニックを随所に見せるファイターが現れ(タイナーや、見事な足払いを魅せるキャリア5戦のファイターを発見した!!!)、
そしてリョート・マチダの王座戴冠によって、カラテが注目を集めるなど、
MMAはより高度な戦い模様を見せている。

 


そんな北米MMAの動向を、自分の記憶にとどめるためにも、
私的2009年上半期北米MMAベストアワードをやってみたい。

 


一年を55週とすると、その折り返し地点を迎えた時点で、
ライブ、DVD、オンデマンド・ストリーミング等で、33イベントの試合を視た。
そのなかから、心に残った試合、ファイター、フィニッシュを挙げてみたい。

 


ベストバウト
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10位 04月05日 WEC ミゲール・トーレス×水垣偉弥
「正直、世の中というか一部MMAファン(関係者?)が絶賛したほど、自分は名勝負だったとは思っていない。全てのラウンドで、ミゲール・トーレスが10-9で取っていたというのが、自分の判断。ただ、水垣がミゲールと互角にやりやった事実に、ものすごく気分が高揚した。引き込んだトーレスに勢いのあるパウンドを1、2発だけでも見舞っておけば、判定勝ちもありえたかもしれない。寝技は避けても、恐れてはならない。今後を考えると、非常に惜しい試合だった」
 

 

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09位 06月14日 UFC スペンシャー・フィッシャー×宇野薫
「館内の大ブーイングに、自分に『思い入れがあるから好勝負に見えたのか……』という気持ちになったが、明らかに直後に行われたマイク・スウィック×ベン・サンダース戦の戦う気持ちが伝わってこない寝技の攻防とは違った。倒せても、寝ころばすことができなかった宇野。やられてはいないが、やることもできなかった。テイクダウンの攻防だけでなく、しっかりとガードを切って、寝技を続けられるようになること、凄くMMAに必要な要素で、宇野云々でなく日本の総合格闘技で重要視されることが少ない技術的な部分が、改めて浮き彫りになった一戦。勝てる戦いだったと思う。しかし、勝っていたとはいえない試合だった」

 

 

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08位 03月07日 UFC グレイ・メイナード×ジム・ミラー
「グレイ・メイナードの評判は、決して良くない。北米MMAをよくチェックしているファイターたちにも、つまらないと切り捨てられてしまう。1試合だけ切り取ってみるとそうかもしれない。ただ、自分にとっては、TUFシーズン5のときの力任せのレスラーが、これだけ打撃を駆使するようになり、ガードからの仕掛けを凌ぐバランス感覚など、米国MMA的進化の実践者なので、非常に興味深い。この試合では、ミラーのテイクダウン狙いとリバーサル狙いを完全に潰し、自身は狙ったテイクダウンをしっかりと決めて見せた。そのテイクダウンも、本来の片足タックルとは頭の入れる方向が逆という完全MMAバージョン。相当、研究しがいのあるファイターだ」
※Fight&Life VOL.12で技術解説あり

 

 

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07位 06月05日 Bellator ディエゴ・ガリーホ×サード・アワッド
「この2人は読者のみなさんも、ほとんどが知らないファイターだと思う。サード・アワッドはパワフルで、積極的だけど、スタミナに難あり。それが分かっていても、とにかく全力疾走型(サンベルナルディーノの佐藤ルミナ?)。ガリーホはメキシコ出身でサウロ&シャンジ・ヒベイロの柔術ユニバーシティで紫帯を巻くファイターだ。打撃に難のあるガリーホが、アワッドのパンチで一度、二度とヒザが折れ、キャンバスに腰を落とし、さらには鼻血で血まみれになる。それでも動きの落ちたアワッドに対し、ギロチンスイープから、リアネイキドチョークで大逆転一本勝ち。ヒザは折れても、気持ちが折れないところが凄い。ファイターだけでなく、ライターやエディターも見習いたいところ」

 

 

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06位 06月06日Strikeforce ニック・ディアズ×スコット・スミス 
「ニックは素晴らしいガードファイターだと思うけど、ここ2年ぐらいは、そのファイトはほとんどスタンドの打撃に偏っている。そして、その打撃が何とも凄まじい。長いリーチを生かし、見た目にはペタ、ペタと当たっているような左右のフックが間断なく繰り出され、スコット・スミスを追い込んでいった。ニックと比較して、とてもパワフルなスミスの反撃も、微妙(絶妙?)なヘッドスリップでかわし、またぞろ自分のペースで戦い続ける。スタンドで根負けしたスミスを一気にリアネイキドチョークで極めた試合が、本来の階級でなく限りなく一階級以上重いキャッチウェイト戦だったことも見逃せない」

 

 

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05位 03月01日 WEC マイク・ブラウン×レオナルド・ガルシア
「テイクダウンとポジショニング、そして首系へのフィニッシュに優れたグラップラー、それがマイク・ブラウンに対して持っていた印象だ。昨年11月にユライア・フェイバーに勝った時も、姿勢を崩したなかでバックエルボーを繰り出す、ユライアの自爆的な敗戦という理解をしていた。それが、もう全く自分には見る眼がないことが、証明されたレオナルド・ガルシア戦となった。あの高谷裕之と真っ向からの殴り合いができ、しかもTKO勝ちを収めているガルシアのプレッシャーに対し、普通に打撃戦に応じる。右クロスでダウンを奪ったあとの、絶妙のバックコントロールからのパウンド、肩固めに固執せず、マウントからパウンドを落とす臨機応変さ。戦いを冷静に戦えるのは、やはりハードトレーニングの賜物なのか――と思った次第だ」

 

 

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04位 06月20日 TUF ディエゴ・サンチェス×クレイ・グィダ
「いきなり足を止めたド迫力の殴り合いを制したのは、UFCを代表するグラップラーのディエゴだった。さらに左ハイでダウンを奪うが、ポジションを許してもトップを奪い返し、関節技の仕掛けを防ぐことにかけては天下一品のグィダが凌ぎきる。不思議なのは、あの打撃を受けても立ち続けることができるグィダのタフネスさ、あるいはディエゴの打撃には穴があるのか。ぜひとも、F&Lの精鋭解説陣の解析をお願いしたい試合。ただ、攻め続けた選手が、最終的トップを奪われ、そこでパウンドを落としたファイターにポイントが入るのは、本当にウンザリ。スプリットでディエゴが勝利したが、グィダ・スタイルで判定勝ちできるよういなると、誰もフィニッシュを狙いにいかなくなるという問題点(※Fight&Life vol.13にて、関連記事あり)が、再び浮き彫りになった試合でもある」

 

 

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03位 06月06日 WEC マイク・ブラウン×ユライア・フェイバー
「5位のところで、ブラウンの冷静さを評価していたけど、この試合は熱くなったのか、ブラウンの男前っプリが感じられた試合となった。ユライアは5Rという長丁場なのに、初回に右拳を見事に骨折。打撃はおろか、軸であるレスリングの攻防でクラッチを組めない厳しい状況に追い込まれた。それでも、なお距離を詰めてエルボーで打撃戦を展開するユライア、その精神力の強さは脱帽モノだが、ブラウンがその近距離に踏み込んで打撃戦に応えたことには驚かされた。仮に自分がブラウンのセコンドなら、即グラウンド戦を指示する。テイクダウン、あるいはガードをとっても右パウンドが打てないユライアはそれほど怖くないので、上か下、どちらからでもモンジバカや、アームロックを狙わせ、痛めている拳を思い切り掴ませる。固定してヒジを押しつけてもいい。それが勝つための最善、ノーリスキーな選択。それなのに、打ち合いに応じ、しっかり打ち勝ったブラウン。自分に対する信頼度が高いファイターなんだと思う」

 

 

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02位 06月20日 TUF ジョー・スティーブンソン×ネイト・ディアズ
「この試合のジョー・スティーブンソンの動きこそ、ケージで戦う日本人ファイター(グラップリング中心選手)に必要な戦いに違いない。ネイトがテイクダウンの攻防に固執しないタイプ、そして兄よりも打撃の熟練度に欠けるように見えるだけに、スティーブンソンが誰と対戦しても、この試合のように素晴らしいポジショニング奪取を魅せることができるかは、議論の余地は残るが、この試合に関していえば完璧だった。一度倒せば抑え込んで、パウンドや極めを狙う。こういう試合を今、流行りのフィジカル+テイクダウンが得意な――寝技は防御中心で、隙を見てパウンドを落とすタイプのファイターと戦った場合も貫くことができるのか。そういう意味で、ダディとグレイ・メイナード、フランキー・エドガー、タイ・グリ、ショーン・シャーク、クレイ・グィダとの戦いが見てみたい。それから、この試合にベストファイト・オブ・ザ・ナイトを与えるズッファの姿勢も◎。ちなみに連敗を喫したネイトだが、2試合連続のベストファイト賞だけで計8万5000ドルのボーナスを獲得している」

 

 

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01位 05月23日 UFC リョート・マチダ×ラシャド・エヴァンズ
「リョートの強さは、ノンモーションの打撃にあり。これは父・嘉三さんから授かった武道の動き、彼特有のもので他のファイターに真似ができるものではない。一方、エヴァンズはアメフト、レスリングというスポーツ育ち、MMA転向後、ボクシング能力も開花させた。エヴァンズのコーチであるグレッグ・ジャクソンは、武道への傾倒も強く、今回の試合前もトラディショナル・マーシャルアーツ系の指導者とともにリョートの動きを解析していた。そして、エヴァンズもまたノーモーションの動きを取り入れた。しかし、戦略によってノーモーションを試行するラシャドと、その動きが体にしみ込んでいるリョートとの差は明確で、動かないことでラシャドは神経をすり減らし、体力を消耗していった。よって、すぐに動きが多くなり、リョートにそこを突かれた。にしても、軸足を変えて単打を連続で放つことで、連打とするリョートには度肝を抜かれてしまう。脱帽、そしてMMA打撃、いや打撃の面白さを再確認させてくれたことに感謝したい」

 


五味隆典×中蔵隆、シャオリン・ヒベイロ×永田克彦、ジョー・ウォーレン×KID、
小見川×LC・デイヴィス、アンドレ・ガウバォン×ジョン・アレッシオ、
ビビアーノ・フェルナンデス×大塚隆史――、確かな技術をもった最高の戦いが日本の
総合格闘技でも、多く見られる。

 


だが、その確かな攻防とその後のマッチメイクに関して、関連性が薄い。
確かな攻防を繰り広げた試合の好勝負の立役者には、勝者&敗者に相応しい次の場というものが、北米MMA、特にUFCやWECには存在するケースが多い。
もちろん、知名度という要素がそこに加わるが、
ある特定のファイターの勝利に大会の将来が左右されるという地盤の緩さは
やはり見られない。

 


弛まぬ日々の努力を続けるには、相当のモチベーションと覚悟が必要だが、
その努力の結晶を受け止める土壌の基礎工事を、北米MMAは終えたように感じる。
確かな土壌では、インフラが進むのも早い。

 


キャリア5戦ほどのファイターのフィジカル、技量、そしてファイトマネーの差、
あまり表面で出ていない部分での違いが、頂上付近の差に大きく影響を及ぼしてくる。
このままでは、北米MMAと日本の総合は接点を失う違うスタイルとして、
共存していくことになるのではないか。

 


ある意味、理想的だが、どこか喪失感があるのは、その二つが競技レベルとして、
同等でなくなってしまうかもいう危惧がつきまとうから。
日本で格闘技イベントが生き残っても、実力的に見劣りしてしまう。
そんな5年後を想像していまう――、ベストバウトの選出になってしまった。

 


ベストバウトだけで、十分に長くなってしまってので、そのほかの私的アワードは続きとさせていただきます。


 

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【 2009年06月23日 15:46 】

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