【最新号】Fight&Life vol.12

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いじめっ子をぶっ飛ばせという感じだろうか?
米国のMTVで放送されている番組名で、
MMAファンならもうその存在を知っているだろう。
日本でもおなじみのジェイソン“メイヘム”ミラーが、
ハマーに乗って、Bullyでなく、Buliied(いじめられっこ)の街に出向く。
その間、TV画面ではいじめられっこが、如何にいじめられているか。
いじめっ子の顔写真とともに、被害者談が語られる。
そして、我らがメイヘム様がいじめられっことともに
いじめっ子の自宅やたむろっている場所に駆けつける。
そこで、「プロのMMAファイターとケージで戦わないか?」とメイヘム。
「ハァっ?」という表情のいじめっ子たち。
ならばとメイヘムは現ナマ1万ドルを手に、これを賭けてどうだと持ちかける。
ハイスクール・レベルのいじめっ子、
ちょっとしたギャングになりかけている危なそうな奴、
フィットネスジムで体を鍛えるバキバキのビルダー。
みんな、目を$マークにして対戦を受諾(しないと番組が成り立たない)。
んで、彼らは一応にハリウッドのレジェンド・ジムに出向き、
ジェレミー・ウィリアムスから、MMAの手ほどきを受ける。
そして、お決まりのようにメイヘムに技を掛けてみるのだが、
ほとんどリアネイキドチョークで、ひどい見よう見まね。
メイヘムはほくそ笑む――ってな感じで番組が進む。
いじめっ子はブーイングのなかケージに上がり、まずはグラップリングマッチ。
最初に掛けられた5000ドルは、3分間のスパーでタップを奪われるたびに
1000ドルずつ手にできる額が減っていく。当然、5度のタップでパァとなる。
続いてヘッドギアをつけたいじめっ子は、打撃スパーを行い
3分間、立ち続けることができると、5000ドル。
ここはオールオアナッシング。
ダウンカウントがあり、
ビッグ・ジョンがカウントを数えるという貴重なシーンも見ることができる。
最終的に6分間の戦いで、獲得できなかった掛け金は、
スパーを観戦している、いじめられっこの手元に渡るという仕組みの30分番組だ。
どこまで演出で、どこまで真剣なのかは分からない。
本当にいじめっ子が番組に出てくるのか?
収録後にいじめらっれこは、
もっといじめられちゃうんじゃないの?――なんて心配になるし。
掛け金を手にした、いじめられっこのハシャギっぷりは、
この番組の低俗性を顕著なモノにしている。
自分がチェックした放送は3回で、
いじめられっこの代わりにケージに入ったのは、
ラバーガード系ファイターのコーナー・ヒュン、
神の階級でGSPに並ぶ雄ジェイク・シールズ!!
そして、トーマス・デニーの3人だった。
ヒュンは見事な寝技で高校生を次から次へと極め続け、
ボディブローでゲロゲロ状態まで追い込んだ(もちろん、手加減している)。
ジェイクがグラップリングで上をとってパスをし、腕十字というパターンで時間を要し、
3度しかタップを奪えなかったことには驚かされた。
ただ、ジェイクと対戦したギャング一歩手前みたいな危ない子は
身体能力が異常に高くて、殴られても折れない気持ちを持っている。
見ていて、いじめられっ子より、自分はこっちの子の方が好感が持てたぐらいだ。
やばかったのが、トーマス・デニー。
もはやシャノン・リッチ級の必殺仕事人の彼は、
体の大きなビルダーを相手に、一度もタップを取れず、
そしてかなり本気度が高い打撃戦でもダウンすら奪うことができんなかった。
まぁ、本当にくだらない番組だ。
だけど、流れるような寝技の攻防を見られるのは、楽しいと思ってしまう。
そして、日本なら総合格闘技でなくて、
プロレスラーが出てきて、コブラツイストとか掛けるんだろうなと。
危険? 保険などどうなっているのか裏事情は分からないが、
ファイターは余裕を持って戦っている。
巧くことが運ばないと焦ってはくるが、本気度は上がっても
素人を無暗に傷つける行為はご法度になっていることはすぐに理解できる。
何度も書くが、くだらない。
フレンドパークの深夜枠番といえるか。
MTVの視聴者層が、MMA視聴者層に被っており、
こういう番組ができたのだろう。
ただ、確実に視聴者層があるところで、MMAの入口になっていることは確か。
MMAファイターを用いることで、MTVの視聴率を稼ぐなんて仕組みじゃない。
つまり、アピール先をしぼっている。
視聴者層にとってはMMAでなくても早食いでも、ダンスでもなんでも良いはず。
それでも採用されたのは、米国でMMAはファッションとして浸透しているからだろう。
MTV視聴者が、さらに喜ぶためのアイテムがMMAだったわけだ。
これって、マスを相手にしているのか。
きっとそうじゃない。
だいたい、1世帯にテレビが一台で
夕食時に父親の見たい番組を、いやいや眺める時代じゃない。
オンデマンドで、見たい時に見たいもものを見る時代がやってきた。
米国ケーブルネットは、見たい時とまではいかないけど、
200チャンネルもあるなかで、MTVを視聴している若者が、
一度として視ることがないチャンネルがいくらでもあるはず。
つまりはMTVのターゲットはマスじゃない。
振り返ってみて、日本の格闘技界だ。
格闘技をマスに訴える試みのなかで、カンセコが出てきた。
視聴率を獲得する入口たる存在になるのか。
あるいは何か、他の役割を持っているのだろうか。
どこを対象に、どんな効果があるのかが見えない。
そして、MMA経験ゼロでリングに上がる。
契約金がいくらかは知らないけど、
タップを奪われるたびに契約金が減っていくわけじゃないだろう。
人前で、実戦としてBullyとプロ選手が戦うことは、本来あってはならない。
マスに広げるためにTV格闘技を続けてくれる間に、
自分らのような記者や編集者が考えるマーケット、
そしてターゲットは、マスのような不特定多数じゃない。
特定少数の複合、ってなことになると、
あの馬鹿げたメイへムの番組からも、色々と学ぶべきことがあると思う。
カンセコつながりで言うなら、格闘技と安全性を語る時に、決まって
格闘技の危険度を測る測定値として、死亡事故件数が引き合いに出される。
オイオイっ、格闘技が目指すべきは、死亡事故0運動じゃないだろう?
死亡事故は、絶対に起きてはならない。想定してはならない基準で。
格闘技が避けるべきは、負傷事故の発生だ。
傷つけあって勝敗を決するスポーツだ。
だから、少しでもケガが起こらないようイコール・コンディションに近づけるべき。
UFCによってMMAが世界に広まったのは、
あの残虐なルールのなかで、ホイスが「傷つけずに戦う」という論法を実践したから。
ジェラルド・ゴルドーが優勝していたら、MMAは世界に広まっていなかった。
凄く危険な戦いが行われた――と、誰もが持つ格闘技のイメージを増幅させただけだ。
格闘技は従来、全て危険だ。
練習するのも、スポーツ保険に加入するけど、死ぬかもって思って
保険に入る人なんて、いると思います?
みんな、想定しているのはケガをしたときのこと。
ケガをするのを覚悟している。だから、そのリスクを減らさないといけない。
その安全基準を死亡事故件数で語るのは、全くもってナンセンスだ。
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