【Fight&Lifeコラム】Shall we start to concern after MASATO?/高島学



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「あれっ、なんか似た人がいると思ったら――。どういうことですか?」

目と目があった瞬間、『あちゃぁ、、、ヤバっ』と思った。

視線の先、声の主はシュートボクシングの森谷広報。

場所は――K-1WORLD MAXのベスト8の抽選会場。





森谷さんの――どういうことですか?――という疑問は、

立ち技大会の会見場、しかも福岡に自分がいるということに対して。





「SBの会場って、オリンピックの年に来るぐらいですよね。

冬季と夏季が交互に行われるようになったから2年に1回ですね」なんて、

いつか言われたことがあるぐらい、立ち技イベントから遠ざかっている。





国内でキックは、7年で2度見たくらいだ。

自分の仕事のキャパを考えると――、そして仕事相手に求められている分野を

考えると、会場を訪れる余裕がない。





以前、取材していた選手たちの多くが現役を退き、

裏方に回ることが非常に多くなってきた。





伊東隆さん、山口元気さん、小野寺力さん、それこそ森谷さん、

モノクロや1/2ページで、ペイペイの自分が書かせていただいていた人たちが、

これからの立ち技格闘技界を創る側の中心になりつつある。



そして、そんな自分にとって、立ち技格闘技マインドは
吉鷹さんや小林聡から直接、耳にした強さへの想いだ。


だから、打倒オランダやタイ――、
今やほとんどのメディアですら、感じなくなったかもしれない頂点が、
いつも自分にある。
立ち技の頂点はムエタイのままなんて、
全く世情にあっていないんだと思う。


なぜ、ムエタイか、なぜオランダか?
それは、ムエタイやオランダ人ファイターが、強さの象徴だったから。
国籍や細かなルール、大きなルールの違いを抜きに、
立ち技でも、総合でも、本当に強いと思うものが、
自分がこの仕事を始めたときに、業界の頂点にあった。


八百長が混在する雑誌業界だったけど、
だからこそ――後ろめたさを払しょくしたいからこそか、
雑誌を作る軸は、強い者を追い求めるというスタンスだった。
「もっと、男前なら世界が変わったのに――」なんて話をしながら、
いわゆる男前でなくても、強い格闘家を追いかけた。


技格闘技に対する思考が、そんな当時のまま、
いつまでも、何か分からないものを追いかけている自分にとって、
首相撲からのヒザが1回、ローよりパンチのほうが採点の際に有利――、
強い弱いよりも噛みあうかどうかが問題視されるように見受けられる3分×3Rの戦いは、どうにもしっくりくるものじゃなかった。
5Rを見てみたいと思ってしまう。
ワンマッチで、とことん相手を研究してきた上で、
もう少し展開が作れる、そんな戦いを見てみたいと、大会後にいつも感じていた。


だというのに――、ここ3年ほど、
K-1MAXだけは、とある仕事の関係上、首都圏の大会は欠かさず目にしてきた。


誤解を恐れずにいうならば、それはビジネス。
目の前で行われている試合を文字にして、とある媒体で報じる。
だから、通っていた――に過ぎないなんていったら、
本当に失礼な話だが、自分は本当に失礼な人間だ。
ファイターや業界には、『最強を求める姿勢』を求め、
自らはビジネスに走る――ホント、最低だ……。


ただ、そんな自分でも、MAXを見るたびに
昔とった何とか~~ではないが、
その身の内にフツフツを滾るような想いが起こっているのは感じていた。
その対象は魔裟斗を中心としたトーナメント戦ではない。


もちろん、MAXのリング上からは、
その魔裟斗を中心とした素晴らしいという表現では済まない、
高見にあるある戦いを見せてもらってきたことは否定しないし、できない。
キシェンコやアンディ・サワーなんて、鳥肌モノの凄みを見せてくれた。


ただ、それ以上に目を奪われた存在があった。
ジョーダン・タイ、ユーリ・メス、ニキー・ホルツケン、ファリド・ヴィヨム、
アルビアール・リマ、ムラット・ディレッキー、ダニエル・ドーソン、
ヨーセングライ・フェアテックス、オープニングファイト出場やベスト16で敗れた選手たち。


世界には、とんでもなく強い奴らがいる。
MAXがワールド・スタンダードになりつつある今、
このルールで戦うことで、
「もし、ヒジが認められたら」だとか、「首相撲がフリーなら」という仮定法が
必要とされない世界が、クリエイトされつつある――と感じるようになった。


そして、そんなツワモノたちの多くが、
テレビ画面はおろか、専門誌でも、その姿を確認できない。


昨年までの彼らは、ビジネスに必要とされない
ただの強い人間たちでしかなかったように思う。
ただの強い人たちがビジネスになれば、
今をマックスとして、ある程度、グレードが下がるからもしれないが、
強いことが現時点よりも、ビジネスに直結できるなら、格闘技コンテンツ創りは楽になる――なんて、自分も思っていたに過ぎなかたったけど、MAXの世界観は、
今、大きく変わろうとしている。


魔裟斗がいなくなる2010年、果たしてテレビの電波に乗って
立ち技70kg最高峰の戦いを目にすることはできるのか。


魔裟斗がいなくなる前に、いや、魔裟斗がいるこの8カ月で
新たな方向性、そして軸を見つけ出す、
あるいはそこに向かって一歩を踏み出す必要がある。


そんななかで、ジョルジオ・ペトロシアン×シャバル・アスケロフ、
リマ×キシェンコ、シャビット×ニキーが組まれた先日の大会に――、
思わず福岡まで足を運んでしまった次第だ。


あからさまに知名度の低い強豪同士をぶつけるのと同時に、
日本人には何とか生き残ってほしいという試合を組み、いきなり誕生した
四天王と新たなストーリーを展開し、さらには広げてほしい。
そんな願望が織り交ざったトーナメント表は、
正直、ここ数年のMAXで最も見どころが多い初戦だと、
いてもたってもいられなくなった。


結果、ドラゴ復活、佐藤敗北という(きっと)見込み違いの方向にも進んでしまったが、
これぞ70kg立ち技格闘技の頂点というべき大会になったと思う。
この佐藤敗北を受け入れてこそ、魔裟斗なきあとのMAXが動きだすはず。


そして、MAXを見る軸も、魔裟斗以外にしなければならない。
ユーラシア大陸の反対側では、MAXワンマッチ大会ともいえる
IT‘S SHOWTIMEが5月16日に開催される。
そこにはMAXに出場していないメス、シャバリ、サヒン・ヤクートらとともに
多くのMAX勢の名前が見られる。


この国では、スラム、グローリー、ビースト・オブ・ザ・イーストなど、
いくらでもトップファイターの姿を目にできる大会が存在する。
そこには、魔裟斗以降に欠かせない60kgのファイターたちも多く活躍している。


奇しくも谷川さんが、ショータイムとの連係を口にしたが、
これこそ、魔裟斗以降を踏まえてのことだと思う。


PRIDEなきあと、総合がどういう状態になっているのか?
UFCという巨大資本に、日本の格闘技界が育んできた才能が流れ続けた。


魔裟斗なきあと、
日本の立ち技=魔裟斗で進んできた業界、
そこに乗ってきたメディア、彼がいなくなったらどうするのか。


立ち技を総合格闘技業界のように、避けられるべきだった苦悩の道を歩ませてはならない。
ファイターを守ること、それが業界を守ることになる。
ショータイム云々は、そこを睨んでの谷川さんの発言――だと自分は思っている。


メディアルームで、その強さが際立ちながらも、
反応は今一歩どころか、強いからこそ引かれてしまった感もあったペトロシアン。


その彼を大会後の会見や、翌日の抽選会場で意外なほど絶賛した谷川さん。
ペトロシアン・プッシュの裏に、
業界の存亡を賭けた戦いがあることを、メディア――特に専門誌は、
今一度、身を引き締め、脇を固めて、耳を傾ける必要があると思う。


魔裟斗、最後の2試合を追いかけるのと同じ歩調で、いやそれ以上の歩の進め方で
魔裟斗ノスタルジーから、逃れなければならない。


この大会のオープニングファイト――リアルディール勢とのしのぎ合いに見られた
立ち技格闘の醍醐味――。
あのオープニングの熱さや、全日本キック、NJKF、M-1、
シュートボクシング、RISEの盛り上がりで、業界を引っ張る
(俺がいうなって感じはするのですが……)
そんな意気ごみと輪郭が見えてくれば――。


魔裟斗のいない立ち技格闘技は
森谷さんと目があった自分とは違う意味で、ヤバいことになる。


エェことばかりじゃない業界でも、
強さを求めて戦い続けたトップファイターたちが、
裏方に回り始めた――この国の立ち技格闘技界は、情熱も可能性も持っている。
彼らの現役時代だったら、見てきた自分は……無責任もそう信じている。


その一手を谷川さんは、既に打ってきた。そんな福岡大会だった。


【 2009年04月27日 18:45 】

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