【Fight&Lifeコラム】New Year/高島学

【Fight&Life vol.10】

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正月三が日は確実に存在したけど、正月休みはあってなかったような2009年が始まり、
もう10日が過ぎようとしている。
正月休みがなかったのに、正月気分が抜けない。
両手の指の数以上の取材をこなしているのに、今もまったりしているままだ。


大晦日と4日に大きなイベントがあり、その前後に取材を重ねたのは、
自分の記者生活でも初めてのこと。
子供が3人になるまで、大晦日の取材は断っていた。
いわく「大みそかまで働いたら、良い年を迎えることができない」と。
リングで身を削っている選手たちには、申し訳ないが、本気で思っていた。
この大柄な物言いの裏には、
大晦日興業が格闘技にとって特別でなくてもいいという思いと、
大晦日興業がなくても、格闘技は普通にあるという奢りがあった。


今はそんなこと(私生活とともに)言っていられない状況だ。
大晦日イベントから、ポジティブな点を拾い集め、
深く踏み込んでいく必要がある(と、自分は思っている)。


ただ、やたらと明けましておめでとうございますという言葉を
職場で耳にしたものだから、どうにもメリハリがなくなってしまった。
仕事と休みのオン・オフがつかず、ダラダラとした日々を過ごしてしまう。
山ほどとはいえないけど、丘ほどの締切りも間近に迫ってきたことだし、
ここいらで気持ちをしっかり切り替えないといけない。
幸い、子供の学校も始まり、家のなかの空気は特別でなくなりつつある――、
と思ったらいきなりの3連休で、またもまったりとした空気に逆戻り。

 

そんな現状脱皮を目指すためにも、無理やりながら、
大晦日のDYNAMITE!!と4日の戦極を振り返り、
頭と体を仕事モードにしたいと思う。

 

「格闘技の中心が日本であること」。
「イベントでは世界の誰にも負けないこと」。
元旦の一夜明け会見で、K-1の谷川さんはこう明言した。

 

結果的に――、大晦日の大会は大いに盛り上がったと思う。
だから、それで良かったのか――とは、決して言いきれないし、
あの大会が、格闘技が持つ本来の意味を捉えたうえで成功したとも、やはり思えない。

 

格闘技――を軸に考えた場合、自分が率直に感じたことは、
青木×アルバレスが、最後の試合だったら、良かったのに――、ということだった。

 

メルヴィン・マヌーフとマーク・ハントの試合は、結果が逆ならどういう状態になったか。
その可能性がある限り、やはり体重差の大きな試合は行うべきでない。
武蔵とゲガール・ムサシ、体の小さい方が勝ってしまった――、本職でない人間が勝った劇的な結果よりも、体の大きな人間が自分のルールで順等に勝った場合の危険性、
そして意味合いを考えると――、自分は手放しでK-1が負けたとか、
DREAMが勝ち交流が始まるという風に、結果を競技論で論じたり、
手放しでは歓迎できない。

 

マスクマンは、マスクを直している最中に殴られ続けた。
その危険性と同様に、片ほうの選手が一方的にカットの可能性が低い状態で、
戦いがスタートする試合形式は、なんとも言い難いものがある。
あるいは片方の選手は汗をかいても、滑りにくい状態――、
逆ヌルヌルを肯定するコスチュームは、
僅か2年前のあのデキゴトがなかったような感覚に襲われてしまった。

 

バダ・ハリは、この負けにより、K-1ファイナルの暴挙が帳消しになるのだろうか?
川尻の勇気ある挑戦は――、彼が何度も口にしたように
MMA、DREAMでのステップアップの材料として、捉えてほしい。
武田幸三に勝ったから、MAXの手駒になる――、そんな事態は絶対に避けてほしい。

実戦でありながら、オールスター戦とファン感謝デーが入り混じったような
形態のイベントを、今後、どのようにオーガナイズしていくのか。
大晦日にTVがなくなった場合、このような世間受けを考えた手法が、
各大会に波及してしまうのではないか。
そんな危惧さけ、感じてしまう。

 

DREAMでは、フェザー級GPとウェルター級GPが行われ、
ヘビー級やライトヘビー級も王座決定戦が、今年は行われるという話だが、
その前兆となる戦いが大晦日には見られなかったことで、
大晦日のイベントは、1日限りの限定版になってしまう恐れがある。
そんななかで見られた09年のDREAMにつながる戦いは、
青木、川尻、そして試合がなくなってしまったJZのライト級戦線、
それとミドル級のムサシ。
存在感が増した彼らが、09年を桜庭に変わってファンを引っ張っていくことになるのか。いや、ならなくては、あの夜の戦いに意義を認められなくなってしまう。

 

それから、
自分は谷川さんの言うように、日本の格闘技イベントが世界の中心でなくても、
その点にあがなったり、努力するよりも、日本の大会のなかで、
青木×アルバレスのようなワールドクラスの試合が実現してくれればそれで良いと思う。
現実に眼をやると、以前のように日本に実力者が集結するのは、もう無理な話だ。
だからこそ、DREAM内のジャパン×ワールド、
あるいはジャパン・チャレンジが必要になってくる。

 

PRIDE時代のトップ選手が、太平洋を越え、
さらに苦戦を強いられている状況で、もうPRIDE時代を懐古してもしょうがない。
DREAMに青木がいる。
彼が満足するカードの実現、
日本が世界に勝てる階級の日本人選手のプッシュ、環境作りが、
今後のDREAMに欠かせないものになってくる。

 

年が明けて、戦極。
「リアル、競技性を追求していきたい」と、
1月5日の一夜明け会見で戦極の國保氏が発言した。

 

通訳の方が、リアルと競技性の両方をリアルファイティングと訳したように、
取り方が凄く難しい表現だと思う。
格闘技にとって、何がリアルなのか。
何が競技性なのか。
それは、単なる言葉のやりとりですむことではない。

ただし、五味×北岡、そしてジョルジ・サンチャゴ×三崎の試合は、
まさにリアル。リアルディールだった。
自分にとって、格闘技のリアルさとは、
勝者と敗者の明暗が分かれること。

 

この夜の最後の2試合は、勝者と敗者をとりまく空気が全く別モノだった。
セミで敗れた三崎は、それでも今後への期待が募る――、
本物の試合で敗れたからこそ、得ることができる評価を得た。

 

一方、メインで敗れた五味。
強さの象徴だった彼に、今後の厳しさが指摘される敗戦となった。
本物の試合で敗れたからこそ、この現実を突きつけられた。

 

その厳しい戦いの末に巻いたベルトのデザインが賛否両論のようだが、
日本らしさ――という面では、参加外国勢の評判は決して悪くない。
スタッフのホスピタリティの良さも、上々のように聞き伝わってきた。

 

そんななか、石井慧の挨拶ばかりが、一般マスコミを賑わせたが、
個人的には吉田道場、グラバカ、パンクラス、和術慧舟會、シューティングジム東京との
協力で始められる育成システムが気になる。
この試みはプロモーション側が選手をマネージメントするという、
権力の集中を生みかねないが、
マネージメントと育成の場が同一にならないという点に注目したい。

 

懐古主義とは、一線を画している分、一般への浸透度が今一つの戦極だが、
09年の方向性は、ちょっと気になるもの。
世界の中心でなくても、世界の割って入れるジャパン・ベスト。
ジャパン・オリジナルを、本物を掲げる戦極の今後に期待したい。

 

そんな戦極で目指してほしいのが、勝者の機会均等の実現、だ。
リング上で、追及されるべきリアルは、トライアウトを前にして
リング上で自らのジムの特徴を説明した彼らのジム所属選手、
いや、あらゆる戦極のリングに上がる選手が、
勝利を基準とした機会の平等を与えられるのか。

 

旗揚げ1年目は、グラバカとJ-ROCKに重きを置いた登用が見られたが、
ここが解消されれば、その期待値は一段と高まる。

 

逆にいうと、機会均等の徹底は、リアルを標榜する戦極に不可欠ということになる。

 

ジャパン・オリジナル、ジャパン・チャレンジ、
機会均等とリアルさ。
TV社会が受け入れてくれるかどうか、難しいかもしれないが、
格闘技界の人間として、09年が新たな一歩になってほしい。
その結果、強い選手が生まれ、選手の選択肢が増え、
意思が反映されるスポーツになれば――と思うのみ。

 

イベントで世界一になる云々が、選手のモチベーションになるのでなく、
選手が強くなることに専念できる。
そんな環境、試合の機会を与えられる現実に、一歩でも近づいてほしい。

 

UFCが全てじゃない――、がUFCは世界を代表する人材が揃っているのも事実。
ならば、現実問題として、UFC以外の強豪を日本のプロモーションは
しっかりと確保することができるのか。

 

そして、そういう強豪の存在を、日本のファンに認めさせる業界にできるのか、
日本の財産を手元に置いておくには、業界全般の努力が必要になる。

 

PRIDE以前、PRIDE後、格闘技界のビジネス的な勢力が変わっただけで、
自分のやる仕事と、日本人選手が強くなってほしいという姿勢に変わりはない。
自分は……、
本当に強い人間は、本当に強い人間同士が戦う場にチャレンジすればいいという考えだ。
だから、現状で日本の財産が海を渡っても、構わない。
その現状を伝えるのが、仕事。

 

と同時に、その戦いの場が日本にあれば、それも、それでいい。
海を超えて、日本にやってきて、
そんな場で戦うことが相応しいと思う選手を紹介していくのが仕事になるから。

 

ということで仕事モードに、気持ちと体、頭を切り替えようと思う。


【 2009年01月13日 15:53 】

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