Photo by Zuffa, Pro Elite, Strikeforce and Manabu Takashima
何度も何度も、見たり、聞いたセリフだと思うけど、
「早いもので2008年が終わろうとしている」。
「年をとると、時が過ぎるのが異様に早い。早く感じる」。
このセリフも、周囲の年長者、
こないだまで大学出たてだと思っていたら、もう30歳を超えんとしている
業界の“もう決して若くない”若者たち、自らの言葉として、何百回も繰り返し、
見たり、聞いたり、話されてきたセリフだろう。
ウチの三女が、「ウー」などと意思表示をするようになったのを喜んでいた頃、
BJ・ペンがショーン・シャークを圧倒し、UFC世界ライト級王座を防衛、
GSPへのチャレンジを口にした。
その娘が「ダッコシテ」と言葉と言葉を繋ぎ合せることができるようになっている今、
石井慧がUFCへのチャレンジを表明し、スポーツ新聞では『UFC入り』だとか、『UFCにはWECというマイナー団体がある』などという文字が躍っている。
別に米国のMMAを書いて、飯の種にしているわけじゃないのだから知らないことなどいくらあってもいい――、ただし、人前に出る活字を打つことを生業にしているのなら、
知らないことは調べて書いて欲しい。
『WECで下積み』?って――。なめとんのか! 世の中のMMAファイターたちを。
まぁ、いいや。あの人たちの書く格闘技の記事に対して、目くじらをたてていれば、
本題に入る前に体力を消耗してしまう――。
石井慧に感謝したいのは、そういう人たちにWECだけでなく、ATTやMMAという言葉を伝えてくれたということ。知る気のない人たちに、その言葉を植え付けてくれるだけでも、本当にありがたい存在だ。
ということで――本題へ。
時の流れるのは、本当に早い。
この半年間で、北米ではMMAライブ中継が始めたEXCが崩壊した。
それでも、春に向けてESPNのスパニッシュ・チャンネルで
ベラトール・ファイティング・チャンピオンシップなる番組が始まり、
その準備が進められている。
ちょっと、アンテナを広げてみると、
エディ・アルバレス、エドウィン・アギラー、サミ・アジス、ヘクター・ロンバート、
ヴァージル・ラザーノ、ダニエル・モライー、ノーマン・バライシー、ジョー・ソト、
ダニエル・タベラ、トーマス・シュルテ、ベン・グリアー、
オマル・ダラクルスらの参戦がほぼ決まったらしい。
ちょっとボードッグっぽい。
EXC崩壊とともに、個人的にはUFNのように楽しみにしていたShoXCも当然、活動停止。
最初の大きなステップを終えたWECは、
その進歩のスピードが緩やかに映る時期に差し掛かってきた。
半年前は毎週のように地上波、PPV、ケーブル、有料ケーブルで中継されていたMMA
番組ラッシュも落ち着きを見せ、UFC+スパイク、バーサスのWEC、深夜のNBC=ストライクフォース、あとは(きっと)一般層には届かないHDネットの中継が、現在のラインナップだ。
ただ、来年の春にはここにベラトールが加わるのだから、十分という見方もできる。
そして、ファイターのレベルは上がり続け、
試合のクオリティも上がり続けている。
結果、やや大会開催数がペースダウンしたにも関わらず、
個々の試合の印象は、すぐに忘れ去られる。
心にとどめておくべきファイト、
テクニック、選手の気持ちも――簡単に記憶の彼方に流されていく。
酒に弱くなり、体力が落ち、モノ忘れがひどくなっている
自分の脳味噌にインプットさせるために、
私的2008年下半期北米MMAベストアワードをやってみたい。
まだ12月27日にUFCが残されているが、果たして今年も残り3日となった時点で、
自分がPCに向かう気持ちが残っているかどうか――、甚だ疑問なので、
今回は7月3日にオランダで行われたGLORYから、
12月13日TUFシーズン8フィナーレまで、
ライブ、ストリーミング、DVDなどで、この半年間でチェックした26大会から、
私的2008年下半期北米MMAアワードとさせて
もらおうと思う(主に、自分のために)。
Best Bout
十位 山下義韶(講道館) 対 奥田松五郎(起倒流)
九位 武田惣角(大東流) 対 中曽根安趙(首里手)
八位 武田惣角(大東流) 対 嘉納治五郎(講道館)
七位 飯久保恒年(起倒流) 対 嘉納治五郎(天神真楊流 ※当時)
六位 保科四郎(講道館) 対 東恩納寛量(那覇手)
五位 佐村正明(竹内三統流)対 中村半助(良移心頭流)※一度目
四位 島袋案徳(那覇手) 対 大竹森吉(揚心流戸塚派)
参位 保科四郎(講道館) 対 好地円太郎(揚心流戸塚派)
弐位 武田惣角(大東流) 対 東恩納寛量(那覇手)
壱位 武田惣角(大東流) 対 新垣世璋(那覇手)
って――、現実逃避からもしれないけど、本当に胸をわくわくさせられた。
何も考えずに、格闘技を楽しませてもらったのは、
ホント、いったい、いつ以来だろう。
ただの格闘技好きに戻れて、良かった。
違う、自分が格闘技好きだったと、再確認させてくれた。
夢枕獏さんには、大感謝。
『東天の獅子』は、世界一の格闘技好きが記してくださった――
自分のバイブルになった。
なんて風にいきなり書いてしまったのも、
正直、今年の上半期と比較し、下半期はパッと頭に浮かぶ試合が少ない。
それはUFCが階級のなかのトップ対決をなかなか組めない――、
組んでいないことが大いに影響している。
上半期は、そこで活躍したファイターが、
いかに下半期でビッグファイトへ結びつくか――。
そういう期待の目で、数々の試合を眺めることができた。
様々な事情があるのだろうが、上半期の流れでいけば、
BJ・ペン×ケニー・フロリアン、
アントニオ・ノゲイラ×ブロック・レスナー(もしくは)ランディ・クートゥアーが
実現しなければ――、それはスポーツとはいえない。
少なくとも、彼らが、これまで「正しく」日本の総合格闘技界に警告を鳴らす、
あるいは指摘をしてきた言動に伴っていない。
トップにあるプロモーションだからこそ、ダブルスタンダードは許されない。
技術的見地に立たず、
1試合、1試合でなく、格闘技を流れで楽しめる
(決してトーナメント戦というわけではない)試合が少なくなってしまった。
そんな、下半期MMAワールドだったように思う。
そんななかで選んだベストバウトは以下の通りだ。
10位09 月17日UFN ネイト・ディアズ×ジョシュ・ニアー
9位 11月21日PFC ランバー・ソムデート×ユリシーズ・ゴメス
8位 11月15日UFC ケニー・フロリアン×ジョー・スティーブンス
7位 11月15日UFC ジェレミー・スティーブンス×ハファエル・ドスアンジョス
6位 10月03日Strikeforce ビリー・エヴァンゲリスタ×ルーク・カディーロ
5位 12月13日TUF エフライン・エスクデロ×フィリップ・ノヴァー
4位 08月09日UFC ケニー・フロリアン×ロジャー・フエルタ
3位 08月09日UFC GSP×ジョン・フィッチ
2位 10月25日UFC チアゴ・アウベス×ジョシュ・コスチェック
1位 08月03日WECカーロス・コンディット×三浦広光
上半期と比べ、勝者の強さが目立つ勝負が多かった。
攻守の交換や逆転という意味合いでの好勝負は、
コンディット×三浦、エヴァンゲリスタ×カディート、
スティーブンス×ドスアンジョス、ディアズ弟×ニアー戦ぐらい。
勝者の強さが際立ち、敗者の頑張りが見られた試合は
アウベス×コスチェック、GSP×フィッチ、エスクデロ×ノヴァー、
ランバー×ユリシーズ、ジナ×コボルトだった。
勝者が一方的に強く、敗者が霞んでします試合――、それは
ケン・フロの2試合。
この他、ショーン・シャーク×タイソン・グリフィン、ミゲール・トーレス×マニー・タピア、レオナルド・ガルシア×ジェンス・パルバー戦なども挙げられるだろう。
三浦は日本人として、北米メジャー系のベルトにあと一歩という試合をやってのけた。
あれだけ高評価のコンディットに対し、「実はそれほどでないかも」と思わせたのは、
彼の頑張り以外、何ものでもない。
Best Finish
10位12月03日WEC ミゲール・トーレス×マニー・タピア
9位 11月06日WEC レオナルド・ガルシア×ジェンス・パルバー
8位 11月15日 UFC ダスティン・ヘザレー×タンダム・マックローリー
7位 10月04日 EXC ベンジー・ラダック×ムリーロ・ニンジャ
6位 07月26日 EXC ジェイク・シールズ×ニック・トンプソン
5位 09月20日 Strikeforce 石田光洋×ジャスティ・ウィルコックス
4位 10月25日 UFCターレス・レイチ×ドリュー・マックフィールズ
3位 12月10日 UFN ジョシュ・コスチェック×吉田善行
2位 07月19日 Affliction エメリヤーエンコ・ヒョードル×ティム・シルビア
1位 09月06日 UFCラシャド・エヴァンズ×チャック・リデル
好勝負が判定までもつれ込むことが多かったためか、
インパクトを残すフィニッシュも、上半期と比較すると決して多くなかった。
そんななかで大会全般的に低調だった9月6日のUFCで、
イベント自体を救ったラシャドのKO勝ち、
アフリクションで皇帝が魅せた一方的な強さ、
吉田を失神に追い込んだジョシュ・コスチェックのKOパンチは、
群を抜いてインパクトを残したフィニッシュだった。
Best Event
5位 09月17日 UFN
4位 10月04 日 EXC
3位 10月03日 Strikeforce
2位 08月09 日 UFC87
1位 12月13日 TUF 8 FINALE
UFCのPPV+英国のインターナショナル格付けの大会は9月以降、
どうした?といいたくなる低調ぶり。
ランディ・クートゥアー×ブロック・レスナーは
会場もダナも盛り上がっていたが、正直、自分は熱くなれなかった。
結果的にレスナーは、クートゥアーを破った。
そして王者より強かった。ただ、王者も挑戦者も、この一戦の前に
戦わないといけない相手がいた――と思う。
ストライクフォースは、UFCとは違ったベースの地元+世界、
そしてアップ&カミング・ファイターの試合で大いに盛り上がる。
UFNも同じようなカラーのラインナップ。
EXCは乗れないカードもあるが、UFCが好まない実力者が出場しており、
自分が子供の頃のプロ野球パリーグのような
(もちろんキンボ&ジナを除き)雰囲気が楽しめた。
短い活動期間ながら、EXCがMMA界で果たした功績は決して小さくないと思う。
Most improved Fighter
5位 ドナルド・セラーニ
4位 マイク・ブラウン
3位 レオナルド・ガルシア
2位 ミゲール・トーレス
1位 ケニー・フロリアン
ケン・フロは、北米にあって打・倒・抑・極の融合をもっとも見せてくれる選手。
自分の距離の作り方、相手の距離の潰し方など、
今、もっとも進んでいるファイターといえるだろう。
MVP
5位 ジナ・カラーノ
4位 ブロック・レスナー
3位 GSP
2位 ミゲール・トーレス
1位 ケニー・フロリアン
下半期だけで、トップランカーに二人に圧勝。
対戦相手の株を大暴落させてしまう強さを見せつけたケン・フロ。
BJ戦が実現しないなら、ショーン・シャークとの再戦が見たいというのは、
彼にとって、酷な要求というものだろうか――。
Most Disappointing Fighter
5位 アンデウソン・シウバ
4位 ウィルソン・ゴヘイア
3位 キム・クートゥアー
2位 チェール・ソネン
1位 パウロ・フィリョ
戦意のないフィリョ、そんな相手を仕留めに行かなかったソネン。
自分は、こんな試合が見たくて、格闘技が好きになったのではない。
フィリョは
体重を落とせてないいのに――、舌を出して、嘲笑うかのように
『体重なんて落とさない』と関係者に言ったそうだ。
格闘技を戦う以前、人間として失格。
ソネンは、格闘家として、何もしない相手に対し、何もしなかった。
ポイントゲームで勝つことは否定しない。
ただし、それは戦ってポイントゲームで勝たなければ、
格闘技は戦いでなくなってしまう。
旦那のブランドで、何もできない相手を慈しむことなく、
楽しげに殴り続ける人――、あれはMMAでなく私刑。
あんなことをしていれば、女子MMAは広がらない。
ウィルソンは、体重オーバー。そして圧倒的なKO勝ち。
こういう勝利は、どのように捉えればいいのか?
体重オーバーによって得たウェイトで勝っているわけじゃないだろう。
ただ、対戦相手のジェイソン・マクドナルドは、ギリギリまで
約束ごとを守るために自分を追い込んでいたかもしれない。
約束ごとを守るために、体力を消耗していたかもしれない。
だから、こういう試合の勝利と敗北をどのような価値観を持って、とらえればいいのか、個人的には非常に難しい。
アンデウソンは、コーテ戦の振る舞い。
彼はショーマンシップのように思ったかもしれない。
ただ、いくらアンデウソンにそんな気持ちがなかったとしても、
対戦相手に尊敬心を持っていないように映ったのは、やはりまずい行為だ。
本当に強いファイターだけに、
あれが彼の本性がチョッピリ出てしまったとは、思いたくない。
私的MMAアワードは、こんな感じ。上半期のほうが、熱気があった。
なんか年末のFMラジオの企画のようだが、
2008年度上半期の北米MMAワールドを一字で表すと――
『停』。
ということで、そんな自分が間違いだったと悔いるような
12月27日になってほしい。
【 2008年12月22日 12:41 】
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