【Fight&Life vol.09】
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「面白い大会になりそうだ」
11月1日にさいたまアリーナで行われた戦極に関して、
周囲からはそんな声が多く聞かれた。
自分もそう思った。
しかしながら、改めて格闘技イベントは難しいものだと実感させられた。
正直、その必要性を問うてはいたが、ホジェリオの試合があんな風になるとは思いもしなかったし、ホルヘ・マスヴィダルがローキックも使わず、テイクダウンも狙わないなんて想像だにできなかった。
その一方で、寝技が続いたというだけで、退屈な一戦のように捉えられがちな
竹内出とジョー・ドークセンの試合は、あれだけポジションが入れ替わる攻防――
それを可能にするパウンドの圧力がなかったとしても――十分に楽しめた。満喫できた。
トーナメント戦に関しては、その特性を考えると、
横田×廣田の試合も、ジョルジーニョと中村の決勝も、ああいう展開になるのは
致し方ない――、と思う。
結果、五味の思わぬ敗北と、北岡が大会を救った形になったといって差し支えないだろう。
MVPは北岡だ。五味に勝ったロシア人ではない。
特に決勝の横田戦が、個人的は感じ入ることが多かった。
準決勝、その一本勝ち、極めの強さは十分に評価に値するが、
その一方で、『光岡、何やってんだ?』という想いも少なくない。
ヒールを取られたことはしょうがない。
引き込んでから、上を取った北岡の技術も、これまた個人的に大好きな動きだ。
すぐにパスしたのも、また自分好み。
しかし、足を戻したあとに関節技、寝技、組技が得意な北岡と対戦している光岡が、
立ち上がろうという素振りすら見せなかったのが、自分は解せない。
ひょっとしたら、立ち上がろうとしたのかもしれない。
それを北岡が潰したのかもしれない。
ただし、自分にはそうは見えなかった。
光岡は、悠長に戦っていたようにしか見えなかった。
この一瞬が危ない――という感覚が欠けているとしか思えなかった。
北岡と対戦して、勝つならスタンドのはず。
下になって、上を取る技術。ここを磨き続けている練習が、彼の周囲にどれだけいるか。
極めを狙う仲間の存在を知らないとは言わせない。
だから、準決勝は北岡の殊勲というよりも、光岡の非が目立った試合だと感じている。
決勝戦は北岡が、あの変てこな表情を作ることをすらできなくなるほど
疲れている中で、テイクダウンを奪いに行った。
勝負をその一点に賭けていった、見事な一芸を見るような清涼感溢れる試合だった。
実はこの大会、自分は次女の幼稚園の試験&面接と重なり、
取材できるかどうか、ハッキリとしていなかった。
そのことを彼に話したときに、ヘンテコじゃない真っ直ぐな眼とともに、
こう言われてしまった。
「決勝戦は見られるはずですから、会場に来て下さい」と。
今、自分は国内の試合を見るとき、北米で勝てるのか。
北米で戦うとどうなるのか――、そこが中心軸にある。
そこで横田の足を使って、ジャブ、タックルを切るスタイル、
廣田のカウンター狙いで、一発KO勝ち――とは対極にある
最近の北岡が魅せる、
グラップリングで勝つための総合の試合――に非常に興味があった。
そこにいきつくまでの道程として、如何に寝技に誘い込むのか。
横田戦は、北岡にとって気の毒な試合展開だったと思う。
テイクダウンされることをいやがり、バックを許し、スタンドをキープした横田は、
何度も何度も、背中を許したままロープの間に体を出し、ブレイク後に、リング中央の打撃の展開からリスタートが許された。
あれって、寝技のドンムーブと同じで、バックを制した状態から、再開にならないのか。
倒す力、打撃の間合いを詰める精神的圧迫、そこを乗り越え、肩で息をしながら
組みつき、一度は倒す。
そこで立ちあがって、胸を合わせる努力をせずに、
体を入れ替えることもなく、
力を振りしぼって体を突き放すことなく、
横田はスタンドの状態で、打撃の間合いで試合が再開できる。
観客にチケットを売っている格闘エンターテインメントとしても、
戦極が、『総合格闘技』と名乗るのであれば、グラップラーに不利すぎる試合進行だ。
両足タックルでテイクダウンを奪われ、場外に逃げた横田。
イエローこそ提示されたが、絶対的にディスアドバンテージな状態にあり、
場外逃避をしたにも関わらず、イエロー後の再開はスタンドで向き合った状態だった。
試合後、競技面を統括する梅木さんに話を伺ったところ、
「レフェリーが元の状態で試合再開が不可能と判断したのだと思います。
スタンドで背中をあずけた状態で、ブレイクが続き、離れて再開となるのは、今後、話し合っていきたいです」という、答をいただいた。
元の状態に戻れない――、ことはないと思う。見た目は悪いが。
五味が判定負けになろうがなるまいが、
戦国の競技面統括面は国内総合格闘技で随一、最高だと思うので、ぜひ一考してほしい。
そう、北岡だ。
傍から試合を眺めている自分が、こんな風に感じたのだから、
戦っている本人はどうだったのか。
よく、最後まで気持ちを切らすことなく――戦えたものだと思う。
その北岡、インタビュールームを横切って、一度、ドレッシングルームに戻る際、
またも真っ直ぐな眼で、「高島さん、北米と比べて、僕、どうですか?」と尋ねてきた。
明らかに周囲の記者に分かるような大声での問いかけは、
実は問いかけなどでなく、
『俺が日本の総合の威信を守ったんだ』とばかりの、宣言に聞こえた。
正直、行儀が良いとはいえない。
勝ったあとだから、なおさらだ。
「なんだ? あの態度」とも思った。
ただ、その時、自分の脳裏には、なぜか、そういう嫌な思いよりも、
あの日の情景が、克明に思い出されたのだ。
もう10年も前の話しだ。
正確な月日は覚えていない。
今のような季節、いやもう少し暖かい時期だろうか。
仙台の公共の体育館で、活動し始めたばかりの日本のブラジリアン柔術家たちが、
中井祐樹に率いられ、BJJジャムという名の下で、
東北大学の柔道部、つまり高専柔道を受け継ぐ寝技の柔道、
七帝国柔道部と交流したことがあった。
確かサンボ全日本王者の勢多選手など、柔道、サンボなど、柔術に限らず、
仙台・東北を基盤にしている組技の選手が、顔をのぞかせていたはずだ。
そこで、青帯か白帯だった金髪か茶髪(笑)の早川クンが、
東北大の柔道部員に小手絞りで一本負けをした。これは間違いない――はず。
ここからの記憶は確かだ。
早川クンの敗北を見た瞬間、わけのわからないほど興奮し、
肩をいからせ、目を三角にして、
まだ茶帯を巻いていた中井さんに「俺が仇とります」と意気込んでいる若い子がいた。
今なら彼らの帯の色では、反則のはずのヒザ十字でアドバンを奪い、その子は勝利した。
その顔には「俺が柔術を守った」と宣言しているかのような、高揚感が見られた。
それが、北岡悟という格闘技をやっている子がいることを初めて知った時――。
【こいつ、どうなるんだろう?】
彼に興味を持っていたなんて書くのは、あまりにも都合の良い話。
ムンヂアルに挑戦した際、パレストラ(当時)の元気印とキャプションで称したぐらいで、ZSTの大会――、トイレで後ろ髪を伸ばし、
メチャクチャ胸回りが分厚くなった北岡を見たとき、本当にびっくりしたものだ。
だから、正直にいうと、北岡のその後の葛藤、努力と無関係なところで、
あの仙台で、思い切り力んでいた子がなぁ――という感慨深い部分が先立つ、
昨今の北岡の活躍だ。
横田戦で、自分は【こいつ、どうなるんだろう?】と興味を持った。
だから、彼の「北米と比較して――」という問いに、答えたい。
『それは――、
分からない』――と。
北米には、横田のようなスタンスで、一発でKOする力を持った選手が大勢いる。
横田のように、粘ることなく、すぐにテイクダウンを奪われる選手も大勢いる。
逆に、テイクダウンを切ることに卓越したファイターもいる。
柔術を身につけて――、
関節技の仕掛けを遮断し、立ち上がる力、倒れない力を持つ、
ダーティ・ボクシングと言われる破壊力溢れるパンチと
ヒザ蹴りを持つファイターと、北岡が戦う。
いわゆる典型的な北米的MMAファイター、そのなかでもトップに位置する選手と
彼が戦えば――。
どうなるんやろう? 凄く、興味がある。
今は、これが、自分の答だ。
【 2008年11月07日 19:29 】
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