
Fight&Life vol.07
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結局のところ、文句を言ったり、称賛したり
彼らの動向に逐一反応を示しているということは、
自分たちはしてやられているんだ。
ダナ・ホワイトの重大発表は、
「ロレンツォ・ファティータが、ステーション・カジノの運営から離れ、
ズッファに専念する」というものだった。
「ネットの連中が喜ぶものじゃないけど、とても重要な意味合いを持つ」とダナ。
ネット媒体、ファンが喜ぶものを、彼らが食いつくように
流布していた結果、自らの会社の人事の発表をしたようなものだ。
だからこそ、その発表の中身を気にしていた自分たちはしてやられている。
自分は、情報を伝える格闘技媒体の人間として、
まずはリング上の出来事と、
オフィシャルの発表があった対戦カードやイベントについて、
あれこれ、考えるのが好きで、
それらをどのように伝えるのか――が、自分たちの仕事だと思っている。
内外のイベントに関して、オフィシャルの発表前に対戦カードを
知ることも、ままある。
仕事仲間とはそれを話す。取材アポやページ作りが関係してくるから。
いまや、この情報化社会ではそれらを公にすることが、自分たちの役目なのかもしれない。
正式発表以前の情報を流すという育てられ方をしなかった。
だから、ダメなんだ――と言われば、反論はできない。
けど、なんでも情報が公になっているような米国のネット社会だが、
彼らの中にも口をつぐむ問題がある。
では、表に出すもの、表に出さないもの、この判断はどのように決定しているのか。
一般ファン、一般メディアを装って、
一プロモーションの資金で、それらに有利な情報が流れる。
公式発表でなく、ファンを扇動できる。
そういう風に物事を疑うことはできないだろうか。
自分は、公式発表をリークするような育てられ方は、運よく業界内でされなかった。
共同会見場で、他の雑誌の記者がたずねた質問を活字にし、
独占インタビューなんて、するように育てられた覚えは一度としてない。
そこは、凄く潔癖に育ててもらった、ものすごく格闘技通信に感謝している。
ソース元を明らかにできない噂話の流布、
その噂話が間違っていたときに訂正しない――ロジックに嵌ると、
きっと自分の格闘技に対する思いは疲弊してしまうと思う。
氾濫した情報を整理したり、追っていると自分は疲れてしまう。
公式に発表されているものが、全て正しいとか限らない――、
と自分の仕事を否定しかねない意見の下で、言わせてもらうなら、
やはり頼りになるのが、生の声だ。
そして、頼りにしないといけないのが、自分自身の判断能力。
ステーション・カジノは、いわゆるラスベガスのストリップにある
観光客目当てのカジノでなく、ローカルを相手に商売してきたカジノだと
現地で聞いたことがある。
好景気に支えられ、人口が増え続けるラスベガス近郊の住民のための娯楽。
そして、レッドロックに代表される彼らが近年、
郊外に建ててきたホテル&リゾートは、
近隣の州から車でやってくる人々がターゲットだった。
ストリップは、今も環境客であふれかえっている。
ただし、以前よりずっと英語以外の言語が耳に届く。
英語でも単語と単語の間がぶつりと途切れたブレッシング、
現地のメキシコ系従業員が使うのとは明らかにイントネーションの違うスペイン語、
フランス語、ドイツ語、オランダ語、意外に目立つのがロシア語。
そう、ドル安・ユーロ高の影響ははっきり出ており、
欧州からの観光客が圧倒的に増えたように感じられる。
加えて、原油高。自分は学生の頃から、アメ車好きで、よく友人から
「あんな燃費の悪い車――、金がかかるだけ」と言われていた。
そのとき、「アメリカは、ガソリンが日本の1/4ぐらいやから、燃費だってそんなもんでエェんや」と反論していた。
そんな時代が夢のように、米国のガソリンが上がっている。
1ガロン(約3・8リットル)が4ドル以上もするのは、日本のガソリン代上昇とは
比較にならない。
そして、車が流通の基盤となっている米国、ガソリン代(特にディーゼルは高い)の上昇は全ての物価に影響してくる。
車通勤が基本、でも、ガソリン代は自分持ちという企業が多い。
そう、ラスベガスの住民や近隣の州の人々の財布の紐が固くなりつつある。
だからステーション・カジノの経営に何が影響し、何が影響しないのか。
これから、何が起ころうとしているのか、考えてみるが――、
専門外のことを自分の想像の範囲で記すような、軽はずみな行動は控えたい。
今、確かになっていること。それはロレンツォの全面参入と100人規模の雇用の増加。
これは、ズッファにとって前向きの変化に違いない。
大会ごとに感じる、彼ら成功者が醸し出す勢いとオーラ。
そして、大会終了後の疲労感。
広報とのやりとりも、以前よりレスポンスがグッと悪くなっていたのも確か。
今後の補強人員で、よりスムーズなやりとりが期待できる。
こんな些細なことでも、問題がクリアできそうなのだから、
ズッファにとって、本当に大きな出来事なんだと思う。
(だからといって、わざわざ発表することがあるのかどうか、今も疑問だけど)
これまでのロレンツォは、ポジション的に露出も少なく、
何かの機会の発言の一つひとつが、
ダナのサービス・トークよりもピュアな意見が多かったように記憶している。
ピュアに、ファイターをほめたたえ。ピュアに業界人を批判する。
まぁ、言いたいことを何でも言っているような感じだった。
ダナは、そんなロレンツォの言動が知れ渡らないよう、
いつもいつもエキセントリックな自分を演じてきた(最近は、本当にそうなのかと思う)。
ズッファには、表に出ない首脳が多く存在する。
そういう人々の意見を尊重し、実行しつつ、
表ではダナが言いたい放題の広報官の役割まで務めてきた。
ダナの言葉だけに左右されていては、結局は彼に踊らされているに過ぎない。
情報を目と耳で楽しむものでなく、
頭を巡らせて楽しむ方が、有効だと――と自戒の念も含め、記しておきたい。
情報は消化するのでなく、情報によってインスパイアーされるほうが、
ずっと楽しいと思う。
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