The Outsider/高島学

格闘技と人は、色々な付き合い方がある。


だから、それぞれが色々な意見を、この大会にも持っているだろう。

面白かったというのも、有り。
ああいうレベルの試合で、入場料金を取るのは? というのも有り。
普通のアマチュアの試合じゃん。もっと、喧嘩が見たかった――も有り。
不良は何人いたの? も有り。
上手い金儲けだというのも有り。


以上、全て、自分が実際にこの耳で聞いたTHE OUTSIDERの感想です。


「結構、楽しんで見ているじゃない」と、某・熊久保さんに言われた。
そう、楽しんでいた自分がいた。
特に最後の3試合。


で、何を楽しんでいたのか。
非日常的な情景、格闘技会場では起こってはいけない事態、
それが起こりそうな雰囲気を楽しんでいた。
そこには、そんな事態にはならないという結論が、自分のなかで出ていた。
本当に起こりそうなら、起こらない様に神経が働く。
起こらないなと思うから、楽しめる。


これは観客席にいた人の心理も同じじゃないだろうか。
危険っぽい、そんなスリルは楽しめるが、
身の危険が生じるなかに、本当に足を踏み込める人は、そんなにいないはずだ。


楽しそうに見ていたのは、それまでの反動でもあった。
大会スタートから3時間以上が経ち、20試合も試合を見ていると、
もう退屈で退屈でしょうがない。
マスコミだし、格闘技が楽しい試合ばかりになるわけないと理解していても、
退屈なものは退屈だ。


そこで見られたほとんどの試合が、総合の練習をしている人たちの試合の連続。
なら、もっと技術の高い試合の方が自分は楽しい。


最後の数試合、凄く悪そうな出場選手が、
意外に総合の技術を使い。そして、ばてるのが早い。
マイクを握ると、凄く礼儀正しい。
そんな、日常生活を脱したっぽい楽しさが、THE OUTSIDERでは見られた。


この大会はエンターテインメント、
格闘エンターテインメントの最初の大会として、成功したと思う。
格闘技を使ったビジネス、第1回大会として、大成功だったと思う。
それは、前田日明という人が持つ、
人々を巻き込むことができる魅力の勝利かもしれないし、
このコンセプトを伝授、実行した人たちの勝利かもしれない。


格闘技と喧嘩は違う。


格闘技はお金もちになれる、ひとつの手段になったかもしれない。
ただし、強さが全てではない。
それがプロのエンターテインメントの世界で、
人気がある者、
数字を取れるものが強いという部分とは明らかに違う――と自分は思っている。


金属探知器、私服警官がいるという話、エンセンと村上クンのガードマン的役割、、、
全ては、観客を一種の期待に導くために役立った、リアルな演出だと自分は感じた。


1試合目の乱闘劇、普段から話すプロ総合格闘家の一人が、
違う試合のセコンドについていて、
「やらせじゃなかったみたいですよ」と言っていた。


乱闘がOKという雰囲気、
そこを呼びものにしていること自体、自分が考える格闘技の普及とは絶対的な距離がある。


この大会から格闘技界を背負って立つ選手が現れないとは断言できない。
ただし、その選手が格闘技界を背負ってたつ技量は大会ではなく、
普段の練習で身につけられるもの。


喧嘩と格闘技は違う。


街のなかで時間もルールもなく、人数制限がない暴力と、
リングの上で、ヨーイ・ドンで始まり、
首を絞めても、殴り倒しても、警察に捕まらないスポーツとは全く違う。


不良だから根性があるのではなく、
不良のなかにも、根性がある人がいるということ。
受験勉強を必死にできる人、
部活動に取り組む人たちのなかに、根性がある人がいるのと同じで。


「普通なら諦めるところで、諦めない」――?
普通なら諦めているところが、打撃攻撃によるもの、
関節、骨、筋、靭帯にダメージを与えているなら、
絞めで意識を失いかけているのなら、
試合はストップしなければならない。
それが、格闘技。それがスポーツ。


格闘技をやることで、更生できる。
そういうこともあるだろう。
ただし、それは道場での話。
THE OUTSIDERのリングの上下で、前田日明という人と、
出場選手が交わした言葉が、その選手たちのすべてじゃない。
リングと実生活は、別の選手がほとんどだ。


最後の3試合ぐらいがなければ、ごく普通のアマ総合の大会だったと思う。
レベルでいえば、アマ修斗以下の試合がほとんど。
柔術の大会にも、
彼ら以上のマッチョなアマチュア格闘技愛好家は、いくらでも目にすることができる。


この大会を否定しない。


パウンドは反対だけど、憧れの人が開く大会で、
花道を入場曲に乗り、登場できる。
そして、前田日明に勝利者メダルを渡してもらえる。
これって、普段から格闘技を練習している人にとって最高、至福の時だと思う。


だから、アマ格闘技大会として、続くのは大いに歓迎したい。
ただし、それが金儲けにつながる保証はない。


ビジネスとして続けるのであれば、正直、
もっと不良、不良のような香りが必要になると思う。
その手の期待感を煽って、集客するのであれば、
ほとんどの試合は、退屈な見世物で、
上記に記したように、戦った本人は満足できるが、
エンターテインメントとして成立しないだろう。


個人の力でチケットをさばく力を見せつけた一部の出場選手たち。
その選手がプロの技量があるにふさわしいと判断した他のプロモーションは、
彼らに声を掛けるに違いない。
プロのファイターとして、更生も不良も関係ない舞台で、
ファイトマネーを手にする存在になるだろう。
そして、そんな彼らを束縛することは、THE OUTSIDERはできないし、すべきでもない。
なぜなら、彼らを強くしたのは、彼らが属するジムの力だから。


では、徹底的に不良を集まる大会(当初は、そういう大会になると思っていた)に、
していくとしよう。
ならば、会場内で何か起こったときの責任の所在をハッキリとさせる必要もでてくる。
何が起こるか分からないので、観客席での安全は保障できません――と。


そして、出場選手も、第1試合に出て負けた選手、
最後から2試合目に出て勝った選手、彼らのような選手ばかりにならないと、
何かを求める、格闘技専門でないメディアも興味を失うに違いない。
(格闘技をビジネスにするのは、専門誌以外の役割になっている)
ただし、そういう格闘技経験がなさそうな選手が集まる大会としてやっていくなら、
絶対に格闘技だと名乗ってほしくない。


喧嘩と格闘技は違う。


4月6日に愛知県小牧市パークアリーナ小牧で行われる
グラップリングツアー「初陣」。
名古屋ブラジリアン柔術クラブ代表の早川正城さんや、
バルボーザジャパンの岩間朝美さん、NEXスポーツの梅村クン、木部選手、
アライブの鈴木社長、グラップリングシュートボクサーの坪井選手らが中心となり、
中部地方でグラップリングの普及を考えて発足した組織の今年、最初の大会。


子供クラスに100名を超える参加者があるという。
ノーギトーナメントには、マルコス・ソウザという強豪が参加し、
90名ものエントリーがあるそうだ。


そうやって、格闘技の普及を考える側に回った彼らのなかには、
もともとは不良というレッテルを張られたことがある人も混ざっている。


エントリー選手には、不良とされる選手もいるかもしれない。
子供クラスの参加者の何人かが、将来、不良と呼ばれるかもしれない。


でも、この大会はグラップリングを楽しむために、行われる。
そして、運営資金が必要だから、入場は無料でも参加費は必要となる。


格闘技とは、色々な付き合い方がある。
格闘技の普及を考える、格闘技界を大きくしていくにも、
色々な道がある。
だから、THE OUTSIDERが、どこへ行き、
この大会をどのようにハンドリングするのかは、前田日明の自由だ。
彼の周囲にある人の自由だ。


だから、乱闘は、許されるべきじゃないしと、自分がここで書くのも自由。


乱闘があるから、セキュリティを――という考えよりも、
乱闘が起こらない環境作りが必要になる。


THE OUTSIDEで、自分は持ち物検査がなかった。
きっと、メディアだからだろう。
UFCに代表される米国の大会では、セキュリティにカバンのなかを必ずチェックされる。
IFLでも、STRIKEFORCEでもそうだった。
飛行機に乗る目的は色々あるが、乗るという事実は一つなのと同じように。


それらの会場では、観客席でもめ事を起こした者は、
屈強なガードマンに取り囲まれ、場外に出される。


危険の本質を知ること、
格闘技の本質を知ること。


格闘技との付き合いは色々ある。
誰もが、覚悟の大小の差に関係なく、日頃の練習の成果を発揮し、
子供たちがその様子に目を輝かすことができる。


それが、自分にとっての格闘技の未来だ。
色々ある格闘技と人の付き合い方の一つとして、ここに記しておきたい。



 

【 2008年04月02日 18:34 】

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