【コラム】MMA CLASS in Philadelphia/高島学

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Fight&Life vol.06

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某スポーツ総合誌の仕事で、米国ペンシルバニア州フィラデルフィアに来ている。
MMAファンの人、TVで総合格闘技を視る人のなかには、
「ハハ~ン、ひょっとして○○○○○の取材か」とわかる人もいるだろう。


まぁ、その某選手に関しては、ここで書き記すことはできないけど
(某スポーツ総合誌を確認してもらえると、幸いです)、
某選手の練習を見学した際に感じたことに、ちょっと触れてみたい。


某選手が練習しているジムは、今流行りのメガ・ジムと呼ばれるタイプの
設備が何でも整っているようなところではなかった。


レンガつくりの倉庫の2階。
自分がたびたび訪れるカリフォルニアやネヴァダと、
住宅事情が、東部ではずいぶんと違うようで、
駐車スペースを探すのにも苦労する
住宅街の一角。
その家々にも、駐車場がなく、どこか欧州の古い町並みを思わせる
危険なストリート。


MMAクラスには、女子MMAの一人者タラ・ラロサの顔を見えるが、
残りは、知らぬ顔ばかり。
某選手によると、このジムにも8人ほどのプロファイターがいるそうだが、
そのすべてが、お隣ニュージャージー州で行われている小さな大会しか、
出場経験はないという。


そんな彼らのMMAクラス。
もちろん、一般の練習生、
汗を流したいフィットネス感覚の人、プロを目指す者も混ざっている。
世界で最も期待されている一人、某選手を含め
総勢18人のトレーニングセッション。


ランニングから、
ワンツーのコンビネーションを丹念に繰り返す。


相手のパンチをかわして、サイドに回りこんでストレート。
そのままバックへ。


さらにはパンチにヒザを加えたコンビネーション。
バックに回られて、向き合うまで。


片足タックル、
両足タックル。


タックルを受けた人間は、壁を背にして、タックルを防御。
そしてエルボーを入れる。


今度はテイクダウンを奪われた側の練習。
ガードポジションを取り、相手がパンチを狙って胸を張った際に、
両足で体を蹴りあげて、自分もすぐに立ち上がる。


上から足を払いにくる選手に、足を戻し、
正対するよう向き合うと、最後は体を蹴りあげて立ち上がる。


5分間のミット打ち。
腕が上がらなくなった練習生から、大粒の汗だけでなく
苦しそうなうめき声まで聞こえてくる。


インターバルはわずか2?3分、
濃密な1時間にわたるクラスが終了した。


「!」
っ? 寝技のテクニック、寝技のスパーが一度もなかった。
組み技はテイクダウン、そしてテイクダウンの防御。
寝技といえる展開は、上記にある立ち上がる攻防のみ。


正直、こういう練習をしているのかと驚かされた。
最近では、取材でジムを訪れても、
グラップリング、打撃とそれぞれコーチがつき、
専門のトレーニングを行う場面ばかり目にしてきた。
MMA隆盛の頂点にある選手たちの練習は見てきたことになる。


このような一般クラスのトレーニングを目にする機会を失っていたことに気付かされた。
そして、今回、目にした――、
MMA隆盛の底辺を支える、あるいは未来を支える選手たちのトレーニング。
彼らの練習に寝技のスパーがなかった。
これには、本当に驚かされた。


もちろん、自分が目にしたMMAクラスは、それこそ星の数ほどある
MMAクラスのなかのひとつ。
全米のMMAクラスで、寝技が行われていないことにはならない。


ただし、寝技が行われていないクラスが存在したことも、また事実。


自分は米国のMMAで寝技の攻防が見られないとは、決して思っていない。
逆に確率的な話をすると、寝技が増えているのが米国で、
減っているのが日本だと解釈している。


しかし、この目で見た彼らのトレーニングは、
ボクシング+テイクダウンwithニーというものだった。


打撃と組み、組みと寝技、寝技と寝技の打撃、
その際、際で必要な動き、
緻密な技術を、日本人がもちえない肉体の持ち主たちが、
日々、切磋琢磨している。


こりゃあ、敵わないと思う一方で、
NYからやってきた、カメラマンのSさんとも話をしたが、
「ここまで寝技をしないなら、寝技で攻められなくなるだけじゃなくて、
寝技の防御ができなくなるから、これは日本人にもチャンスはありますよ」と、
ちょっとホッとした部分があったのだ。


リングとマット、薄暗い空間。
最後の仕上げで、切れ切れになった息も落ち着いてくると、
ぼちぼち帰り支度を始める練習生もでてきた。


と、その一方で自主トレーニング、フリースパーに興じる者たちも。


「!」
っ? オープンフィンガー・トレーニングを付けたままで
何組も寝技のスパーが始まった。
そう、このジムでは練習の間、参加者はずっとオープンフィンガーをはめている。
だから、立ち技の激しいスパーリングはなかった。


「!」
っ? 寝技のスパーは――、激しいぞ。
ガードを取ったものが、バタフライからスイープ。
パス狙いで立ち上がると、下の選手がヒールホールド。
逃げようと体を捻った選手のバックを取る。


ガードを取った選手、あっ、ラバーガードからゾンビ、
三角からオモプラッタだ。


目に届く範囲で、5組ほどスパー、
寝技だけのスパーリング。
そのレベルは、相当高い。


MMAクラスでは、寝技がなかった。
彼らは寝技ができないのではない。
寝技を使っていなかっただけ。


ただし、状況がくれば使えるように、刀を磨いている。


「参ったなぁ」と思う一方で、ちょっと嬉しくなった自分がいた。

 

【 2008年04月24日 16:35 】

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