文=高島学
text & photograph by Manabu Takashima
仕事柄、格闘技の試合を日常茶飯事のように見ている――と思われがちだが、
実は、余り見ていない。
特に国内では、会場へ行く機会が本当に少なくなった。
というよりも、熱心なファンよりも会場に足を運ぶ回数は少ないだろう。
きっと格闘技の記者のなかで、最も会場に足を運ばない記者だと思う。
隠し立てする必要もないが、
数々のプロモーションから『取材拒否』を受けていたことも関係しているが、そのような劣悪な関係を脱し2?3年経っても、試合会場へ足を運ぶことが極端に少ない。
後楽園ホールを訪れる数よりも、
新宿のコズミックセンターに通うほうが多いかも――しれない。
なぜか――、それは自分が格闘技の記者だから。
海外に取材へいくと、国内にいるとき時よりタイトな取材スケジュールになる。
そもそも、アポ取りに手間がかかるし、日本ではなるべく避けたい、
1日で3件という取材も、それこそ海外ではノルマとしてこなす必要がある。
出国前に、アポ取り。
帰国すれば、それらを記事にする。
取材期間が限られているから、締め切りも集中する。
それから日常欠かせないのが、
海外のプロモーションのプレスリリースのチェック。
実のあるものから、時間の無駄になるもの――、ほぼ全てチェックしないといけない。
加えて、海外の試合の映像のチェック。
仕事柄、UFC、UFC FIGHT NIGHT、そしてTUF
(これが厄介で、どうしても溜め込んでしまう)、
WEC、IFL、EXCやShoXC、bodogを出来る限りマストでチェック。
豪州や欧州、その他の地域の大会なんかも、必要とあらば(必要なんだけど)
チェックする(って執筆に反映されていないという声には同意するしかないのですが)。
なんて、やっていると時間がなくなってしまう。
自分は極力、プライベートの時間は、格闘技とは離れていたい。
格闘技というより、業界と離れていたい。
つまり試合映像のチェックは、趣味でなく、仕事。
だから、それは仕事時間に収めないといけない。
(これが、趣味で生産性のないものなら、自分はただの遊び人だ)
東京の端っこに住んでいるから、どうしても都心に出る時間、往復の時間を考えると
ロスタイムを少なくしたくなるので、出不精になってしまう。
なんて、つらつらと書いたけど、要はこれを生業としているのだから、
仕事になる方を選んでいるに過ぎない。
あとは、皆がみんな目にしているものより、少しでも見ている者が少ない試合、大会が
気になる性分なんだと思う。
サッカーならプレミアよりMLS、ギリシャやトルコ・リーグが気になる。
車のレースなら、F1よりインディカーやチャンプカー。
11月、国内で格闘技を見たのは
ケージフォースEX、
プロ修斗代々木第二大会。
ADCCマスター&シニアとジュニア。
そして、格闘王国。
ストライクフォースとUFCに行く予定だったけど、ちょっとした問題で
キャンセルせざるを得なかったので、今月は極端に見た試合数が少ない。
しかも、上記のうち二大会が途中退席という失礼なもの。
皆さんが、みなさん、「大変ですね」と声を掛けてくれるが、
途中退席や睡眠不足なんて、力不足の表れでしかない。
スケジュール管理がしっかりしていれば、集中力があれば、
もっと大会も見られるし、睡眠も取れる。
(なんといっても、欲をかいて算盤を弾くから、ついつい無茶な仕事量になる)
そのものズバリの日常を過ごした11月――。
生で見た試合でダントツに興味深かった試合が
プロ修斗のランバー・ソムデート×菅原雅顕の一戦だった。
映像でチェックした試合は
IFLのクリス・ホロデスキー×バート・パラジェスキーの試合。
前者は、やはりランバーの組みの強さ。
後者は、相変わらずの打撃全盛といいつつも、全局面で戦える
そんな無名の強豪たちの強さが、際立っていた。
米国では倒れないための立ち技総合が突っ走っている――、
のに対して、ランバーは倒されないから、倒すまで進化してしまっていた。
ついでにいうと、下でも上でも、寝技になっても強かった。
とにかく、あれがムエタイ、タイ人の凄さなのかと。
ランバーは特別だろう。
ただ、ランバーのような頭の柔らかさを持っていれば
ムエタイから、彼のような強さを持ったMMAファイター、
総合格闘家が現れる可能性があるということになる。
立ち技最強、ムエタイ。
ムエタイには、足払いもあるし、首相撲に代表されるタイ・クリンチが存在する。
ただし、それはムエタイの試合を想定してのテクニック。
「ムエタイは護身術、相手が攻撃してきたときしか、投げを使ってはいけない」と
ランバーもいう。
だからといって、ムエタイの組み技は総合で使えないのか。
レスリングのタックルは、レスリングの試合を想定してのもの。
パンチや蹴りを使う試合を想定していない。
サンボの足関節は、サンボの試合で使うために発展した。
柔術のスイープも、護身とは離れたスポーツの部分で、随分とバリエーションが増えた。
ボクシングのパンチは、ボクシングという限定の多いルールのなかで進化した。
ムエタイだって、同じだ。ムエタイに勝つための技術だ。
今、総合用のボクシング、総合用の柔術、総合用のサンボ、総合用の柔道、
総合用のキック、総合用のレスリングをMMAファイターは駆使する。
首相撲でなくても、ムエタイ流組み技のバリエーションは数多く存在する。
特にヒジを含めて、組みと打撃のコンビネーションは、ムエタイが世界一だろう。
米国ではマライペットが、メジャーの入り口に立っている。
北京で行われているアート・オブ・ウォーFCでは、
オーレ・ローセンが見事に総合格闘家に変身していた。
その彼が練習するタイのジムから、元ナックモエが総合に挑戦し始めている。
寝技は、しっかり頭を使い、練習すれば、絶対に伸びるだろう。
加えて、ランバーも、マライペットもとんでもないパウンドを見せている。
そんな状況で、ランバーが組みの強さを見せ始めた。
倒れないタイ人、倒すタイ人。
痛みに耐えることはにかけては右に出る者がない彼らが、
ムエタイ・クリンチにアレンジを加えて、ヒザ蹴り、ヒジ打ちを屈指すれば――。
ありゃぁ、総合、MMAでも、ムエタイ最強説が成立しそうだ。
ボクシングは二つ、世界に広まっているキックは6つ。
ムエタイは8つの飛び道具を持っている、全局面・打撃だ。
立ち技では適わない、だから組みにいく。
そこで倒せる、倒す+打撃のコンビネーションを操るタイ人ファイターが増えると――。
タックルの技術、タックルに行かずにジャンピンガードで引き込み、そこから寝技へ、
などなど、総合のテクニックはまたまた大きな変革を迎えるかもしれない。
総合の技術が、
ようやくムエタイ技術のアレンジを必要とする時代になったという言い方もできる。
ってなことを考えていると、また後楽園ホールへ行く時間がなくなってしまう。
すんません、シーザーさん。
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