【コラム】ドンびきパフォーマンスの勝利は、表裏一体/高島学

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Photo Zuffa LLC


17日(現地時間)に行われたUFC78。
郷野聡寛と長南亮が出場した。


結果は、ご存知のように郷野が2Rに腕十字で一本勝ち。
長南はカロ・バリジャンと対戦し、判定負け。
明暗くっきり分かれる結果――なんて、ありきたりのことは思わない。
それこそ、結果論だからだ。


もちろん、米国、UFCでは結果が大切だ。
だが、二人はスタート地点も違っているし、これからが本当の戦いになる。
(って、凄くありきたりだけど――)。


今、UFCで活躍するファイターから、弱いと印象をもたれる選手はほとんど存在しない(ヘビー級以外)。


そのうえ二人が戦うのは、世界最強、最高の人材が揃うウェルター級で、
長南の相手パリジャンは先頭グループから、いつ、
トップを奪うかを伺っているフロントランナーだ。
パリジャンを相手に、PPV中継された試合に登場した長南は、
ズッファからすると、最初からトップグループを走らせたいランナーだった。


一方の郷野は、第一試合。
対戦相手も全米レベルでは無名。
先頭グループ、第二集団、第三集団、どこを走らせるのか。
郷野のアビリティを測る、試合だった。
ベスト・サブミッション・アワードは、今後、一足飛びで先頭集団に
ジャンプアップできる最高の後押しになるだろう。


長南への期待も込めて、UFC第一戦を終えた二人の差は、
ベストサブミッション賞と勝利者賞、この収入の違い、
そして、郷野は一気に先頭集団の中段につけ、長南は殿になったぐらい
といえば、勝者は気を悪くしてしまうだろうか――。


その郷野、入場シーンはスベリまくったという。
音が流れない事故、
流れたら流れだしたで、曲の盛り上がりが頂点になる瞬間が、
ちょうど入場路の曲がり角にきて、どちらを向いていいか判らなくなった――
という事情があったにしても、観客はドン引きだったそうだ(笑)。


だいたい、ノーPPVの第一試合だ。
渋いカードで、満員マークがつかなかったイベントということも影響し、
観客の数自体が少なく、
やった本人も、それを目にした観客にも、
残念な入場パフォーマンスになってしまった。


オープニング・ファイトなので、観客席はまばらになるかもしれない――。
それは郷野陣営も予測していたので、わざわざズッファに
「観客が少ないなら、パフォーマンスはしない」と相談していたそうだ。
で、ズッファ側は「そんなことない、第一試合から盛り上がる」と
自信満々に応えた。


第一試合だから、観客は少ないかも――。
だから、わざわざ問い合わせる。


すごく良いことだと――と思う。
しっかり考えたうえでの、UFC出陣、
その意識の表れと捉えてもいい、そう自分は思う。


宇野薫の(現時点で)UFC最後の試合は、
ラスベガスのノーPPV、オープニングマッチ。
人影が、本当にまばらな会場だった。
ノーPPVはノーPPVでも、本来はその最後の試合に出るだけの格の持ち主だったにも関わらず、ガラガラの観客席で戦ったのは、
PPV中継のスタートにあわせ、日本でライブ中継するWOWOWの都合。
オープニングから、PPV開始まで、大よそ1時間45分。
日本でのオンエアーの初っ端に、彼の試合を入れるため、
編集時間を稼ぐために、宇野はガラガラの観客の前で戦った。


本人は、決して、そんな愚痴を言うような人間ではないが、
あの雰囲気の中での試合には、相当プライドを傷つけられたようだった。


とにかく、ラスベガスの試合はPPVが始まるまで観客席が埋まらない。
いや、下手をすると、一部の観客席はメインイベントが始まるまで、
人が現れないこともままある。


なんせ、娯楽のメッカだ。
お金を捨てに、ストリップに集まってくる人たちにとって、
有名人のファイト以外なら、他の楽しいことだらけのベガスを堪能したい。


これがMMAが草の根レベルで定着しつつあるカリフォルニアだと、
ノーPPVのオープニングマッチ時も、
メインイベント時も観客の数はそうは変わりない。


ズッファは、NYのお隣のニューアーク大会でも、カリフォルニアと同じ現象になると予想していたのではないだろうか――。


つまりMMAは、東部ではまだ本当の意味で浸透していないのかもしれない、ということ。


現にPPVの開始時間が、今も西海岸の午後7時に設定されている。
もちろん、ウェストコーストの人々のPPV契約数を期待してのことだ。
これだと、東部ではPPVの開始が、夜の10時。
PPVは3時間のプログラムだから、終了は深夜の1時になる。


ちょっと見に行きたい――というレベルなら、
高いチケットを買って会場へ足を運ぶことに、二の足を踏むかもしれない。
LAやベガスなら、10時に終わり、
「さぁ、今からパーティだ」となるのだから、大きな違いだろう。


ニューアークで開くこと自体が、ニューヨーク進出を睨み、
意義あることなんだろうけど、これなら(郷野のためにも)
カジノの街、アトランティックシティやモヒガンサンで
大会を開いた方が観客の入り、乗り、どちらも良かったかもしれない。


どちらにしても、日本なら当然行うパフォーマンスをどうするのか――、
考える必要がある。
当然のようで、なかなかできないことだと思う。


勝手が違う。
それを理解しておかないと、なかなか行動に移せない。
パフォーマンスを気にするのだから、
ファイトスタイルや、練習環境、大会前のインタビュー撮りに、
ドクターチェック、全てにおいて勝手が違うことを覚悟し、
心の準備ができていたのだろう。


試行錯誤を繰り返してきた男だ。
考える癖が、体に染み付いた人間は、
開き直りも同時に覚えることができる――というのが、自分の持論。


そして、実力で掴んだサブミッション賞。
これだけで、サラリーマンの年収近くになると思う。
力があるから、儲けることができる。


これが、もう少し、日本人が活躍できそうな60kgまで
WECの躍進で、実現できそうになっている。


総合格闘技界は、やはり
ホリオン大魔王と、ズッファに感謝すべきだよな――。
真剣勝負が商売になること、
選手が実力で人生の勝負に出られる時代を、切り開いてくれた。


そして、郷野が一夜にして(恐らくは)今までUFCに出場した
日本人のなかで、一番の大金を手にした。


神様は、どこかで一人ひとりの努力を確認しているのかも――、
なんて思えてくるので、ちょっと幸せだ。


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【 2007年11月21日 16:49 】

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