【コラム】LA周辺について、なんとなく。/高島学

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文=高島学
text & photograph=Manabu Takashima,SCOTT ELKIN

              


エクストリームファイターズ・ワールドチャンピオンシップ、
トータル・ファイティング・アライアンス、
カリフォルニア・コンバット・チャンピオンシップス、
フェイトゥル・フェミネスFC、
フィスト・オブ・フューリー、
インヴィシブル・ファイティング・チャンピオンシップ、
ミーリー・オン・ザ・マウンテン、
パレス・ファイティング・チャンピオンシップス、
ノーリミッツ・プロ修斗
ストライクフォース
ShoXC
サンディエゴのトータル・コンバット
KOTC――、そして
アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ。


ここ3ヶ月ほどの間に、LA近郊(というか車で移動できる範囲内)で行われたMMA大会だ。


先月、3年振りにフロリダを訪れ、
ATTへの所要時間など、
自分の記憶が物凄くアバウトだったことに驚く反面、
如何にLAに馴染んでいるのか、実感できた。
LAでは、太平洋を挟んだ隣人Kさんのおかげで
何の不自由もなく取材ができる。


どこにどんなレストランがあって、どの辺りにジムがあるかも把握できている(と思う)。


ほんの少し前まで、LAの取材は何かのついで、
もしくはグラップリングや柔術の取材がメインだった。
MMAの取材をLAでする。
これは距離的にも、理想的な海外取材だ。


メジャーどころでは、
UFCが年に2回ほど大会を開いているに過ぎないが、
実のところベガスはLA近辺の住民にとって、
ほんの少し行く気が起きれば、移動できる範囲。
4時間から6時間のドライブですむし、
航空券もディスカウントが出揃っている。
LAとMMAは、身近な位置にあった。


もともとレスリングが盛んで、
意外とキックボクシングも根付いている土地。
ブラジリアン柔術のアカデミーは、
決して大げさでなく至るところで見ることができる。


だから、MMAイベントが解禁される以前から
選手の供給源として、十分に認知されてきた。
で、MMAが解禁されたら、どんな現象が起こるのか。


次々と大会が開かれるということだ。


関係者の話によると、
週一で行われるのも決して遠くないだろうとのこと。
既に1日に三大会が重なり、
認可するアスレチック・コミッションが手一杯で、
開催日を変更しないといけないということもあった。


MMAがブーム、ブームといわれている米国だが、
PPVショーを中心とした
トップ・プロモーション活動以外で、
ここまで盛んにMMAの大会が行われているのは、
北カリフォルニアのサンフランシスコ&サクラメント、
ベイエリア周辺以外には見当たらない。


なぜ、これほどまで大会が多いのか。


前述したように、選手が育つ基盤があることも理由の一つ、
プロMMAに出場できるファイターが揃っている。


そして、集客が見込めるということ。


オラが街の大会、オラが街のヒーローの存在という意識が
希薄な日本と違い、広大な国土を持つ米国では、
ランディ・クートゥアーを知らなくて、
MMAを見る人がどれだけいることか。


そして、LAには雑多な人種が移り住んでいる。


なんでも、カリフォルニア州はハワイ、ニューメキシコ、
テキサスと並び、全米でたった四つしかない
マイノリティの人口が50%を超える州だという。


もちろん、ラティーノが多いだろう。
だが、テキサスやニューメキシコと違い
サンフランシスコやロス近辺は、
もっと雑多な民族が入り混じっている。


簡単な例を挙げると、サンフランやLAで
目にするレストラン。
チャイニーズやコリアンBBQ、スシ、カレーは
当然として、ヴェトナム、タイ、中央アジアや中近東、
エジプトやエチオピア料理まで食することができる。
東京と違って、リーズナブルな店が多い。
つまり、この地に根付く人々がそれだけいるということ。
(フィリピン人も多いはずだが、フィリピーノ・レストランはまだ見かけたことがない)


LA周辺に住むマイノリティたちは、
ビッグネームなど関係なく
オラが国、同じ血を持つファイターの大サポーターとなる。
メキシカン・ファイターの存在は当たり前で、
数々のマイノリティ・ファイターが出場し、
彼らを母国語で応援する
熱狂的なサポーターが会場に現れるわけだ。


去年の8月、
カリフォルニア・エクストリーム・ファイティングという
大会を取材したときには、
ゴーコー・シビチアンの弟子が大挙出場し、
インドア・ホッケー場に作られたケージの周囲を
アルメニア系のカリフォルニアンが占拠していた。


その大会のメインに出場した、マライペットが10月26日
ShoXCで、全米ライブ中継デビューを果たす。

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サンタバーバラ近郊で行われる当大会では、
メインにハビエル・バスケス(ハビはキューバンだ)、
チーム・オーヤマ&ノーリミッツのブラジリアン、
ジヴァことジヴァニウド・サンタナも出場する。


マライペット――、
米国ではマライペットとだけコールされていたが、
以前はマライペット・サシプラバーと呼ばれていた。


サシプラパージム所属のムエタイ・ファイター。
キャリア170戦近くを誇り、スーパーリーグでも活躍。
オランダの強豪フィクリ・ディアルティを
LAで破っており、そのLAでMMAデビューを果たした。


ちなみにLAのタイ人コミュニティーは、
80000人を数えるという。


デビュー戦は対戦相手も打撃しかできないファイターで、
強烈なローからパンチ攻撃でKO勝ちをしていた。
トップレベルで活躍していたムエタイ選手のMMA転向は、
日本のランバーM16に続き二例目だと思われるが、
マライペットに注目したいのは、若さと階級。
26歳で強豪ひしめく――日本が世界でも戦えるライト級だ。


正直、総合(というか寝技へ)の順応度では、
ランバーには全く適わないと思う。
実際、これまでMMAを3度経験し、結果は2勝1敗。
この1敗の相手がアンソニー・マクデヴィッド、
シュートボクセUSA所属のテイクダウン・ファイターだ。
マライペットは、何度もテクダウンを奪われ、
判定負けを喫している。
それでも、極めさせない体力を持つマライペット。
下から腕十字なども仕掛けており、
どこまでMMAへの対応力を身につけたのか楽しみだ。


総合の打撃――、
ムエタイ・ファイターが、どのようにMMAで
打撃を使いこなすのかも――ヒジ打ち、首相撲、
どんなアレンジが見られるのか。
ムエタイの指導を受けているのでなく、
ムエタイ・ファイターだったタイ人のMMA。
11月8日のランバーとの試合を見比べれば、
日本の総合と米国MMAの違いが見られるかもしれない。


ShoXCが行われるキュマッシュ・カジノは、
サンタバーバラの郊外で、
どれだけタイ人サポーターが出向くかは疑問に残るが、
マライペットはLAの東アジア系住民をMMAに誘う
二番手のファイターになるかもしれない。


ムエタイの強豪マライペットが二番手――、
では一番手はというと、
ヴェトナム系のナム・ファンをおいて、他には存在しない。

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現ヴェトナムの共産党政権を嫌い、
旧南ヴェトナムから米国に逃れてきた人々が多く住む
LA郡ウェストミニスターのヒーロー。
ボクシングでゴールデン・グローブを獲得しているが、
高校のレスリング部でコーチを務めていたこともあり、
レスリング+柔術の技術も相当高い。


「ヴェトナム社会を代表して戦っている。
彼らも撲の活躍を誇りに思ってくれているはずだ」――、
だから勝ち負けに関係なく僕を応援し続けてくれると
ナムは言葉を続ける。


KOTC、ストライクフォース、
そして先日行われたエクストリームファイターズ・ワールドチャンピオンシップらが、
彼の集客能力を買い、重要なポジションを与えてきた。


ナム自身も、
ヴェトナム人社会の期待に応えるファイトを続けてきた。
たった1試合、DYNAMITE USAのJZ戦での敗北だけで、彼を判断して欲しくない。
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自分のためだけに戦う人間よりも、
人のために“も”、戦うことができる人間の方が強い――
と自分は思っている。


ナムのように民族の代表として戦う選手たちが、
MMA人気が高まる一方のLAでは、
これからも増えていくに違いない。


マイノリティとは、人口の多少を問うものでなく
その肌の色、彼らの英語の発音を物差しにして、
できあがっている言葉だ。
経済力を失った日本がどうなったのか?


過剰な表現かもしれないが、
特殊な技術がないと、依然、WASPが社会の中枢を握る、
自由主義のリーダー、自由と平等の国では認められない――、それがかの国の姿だと思う。


だからこそ、マイノリティは
自分たちのコミュニティーが必要になる。


ヒクパニック系の増加に従い、
徐々に米国も変わっていくだろう――が、
MMAでの成功は歴史の変遷を飛び越える力を持つ。


米国のMMAは、そんなマイノリティと呼ばれる人々の
パワーとも結合し、力をつけている。
LAでは、ビッグネーム獲得合戦や
TVの視聴率といった部分だけでなく、
グラスルーツMMAの定着を
生活感と一体となった肌で感じることができる――のだ。


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【 2007年10月22日 13:03 】

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