文=高島学
text & photograph by Manabu Takashima
台風が接近中のなか、スマックガールを観にいった。
自分は海外へ行く機会が多いから、
そんな風に見られないが、実はかなりの出不精だ。
(なんせ、海外でも取材以外で宿泊先から出るのは、食事の時ぐらい)
だから――、
あんな風になる天候を覚悟で、東京の端っこにある自宅から
後楽園ホールに出向くのは
プロ失格だけど、覚悟がいった。
正直、下北だったらなぁと、後楽園に出向くたびに思う。
同じ東京の端っこ(自分より、もう少し川べり)に
住んでいるライターの亀池君は、
どんな天候でも、スマックガールは観戦している。
自分は、あまり出席率の高い方ではない。
けど、今回のスマックはなぜか、絶対に見ておかないと
いけないという風に感じていた。
なぜか?
スマックを引っ張ってきた、あのお方と
スマックとの付き合い方が変わる――
というのは大きかっただろう。
赤野仁美×端貴代が見たかったというのもあるし、
アンナ・ミッシェル・タバレスと闘う
辻さんが見たかったのかもしれない。
ADCC JAPANで一緒に仕事をし、以前よりずっと
会話する機会が増えた勝井さんの真摯な姿勢を見て、
女子総合格闘技をしっかり見ないといけない――と
感じたのかもしれない。
ジョシカクを、女子だからといって
特別扱いしない自分にとって、
最後の二つの試合は、かなり記憶に残る試合になると思う。
格闘技とついている限り、
自分は「女子だから」ということで、
プロとしてのアベレージを下げたくはない。
それは体力や技術じゃなくて、
泥臭い言い方だけど、本気度。
選手だけじゃなく、主催者から「女の子だから」なんて
言葉は絶対に聞きたくない(別に聞いたわけではない)し、
そういう空気感があると、×となってしまう。
最後の2試合は、プロの格闘技エンターテインメントとして
最高レベルにあると感じた。
その前の高橋洋子選手とHIROKOの試合は、
師弟関係のドラマとかそういう部分でなく、
大型選手、総合格闘家としてのキャリアの積み方に関して
高橋選手の存在、あり方を見て大いに感じることがあった。
代役出場、体重差ありの試合、
そんなイレギュラーを、レギャラー感覚で対処できる
スタッフ。
突然のオファーを受けることができる選手、
そしてスタッフとの結びつき。
お世辞でもなんでもなくて、
選手とスマックの信頼関係を見た気がした。
そんな感じの良い興行だった。
信頼関係があるから、試合が飛ばなくて、
長時間興行になった(ちょっと、チクリ)。
妙に可愛いだけでなく、本当に強いハム・ソヒ。
彼女との対戦を受けたEdge選手も大したものだと思う。
風雨が強くなるなか、ホールを出て、
とんでもなく蒸し暑いのに、歩くのがなぜか心地よかった。
そういう夜だったのだ。
水道橋駅で一緒になったTKが、
台風の影響で自宅に帰れないということで、
ジムへ行くと言う。
きちんと奥方に電話をし、
外泊が変な理由でないことを告げているTKが、
自分とは凄く違っていて、なんとなく良かった。
こんなシーンに出くわすのも、
全て大会の雰囲気が良かったから――なんて思ってしまう。
ロングラン興行の影響(再びチクリ)で。
バスがなくなり、タクシーは長蛇の列。
だから、自宅から車で亀池君を送ることにした。
道すがら、当然のように話題はスマックのことになった。
「この日の大会を見て、あの雰囲気、
ファンの声援、選手の頑張りを見て、
彼女がスマックで出たいと思わないなら、
僕はもう、それはそれでいいと思います。
別に辻戦でなくても、スマックに出るという
気持ちを持っているのか」
妙に凛々しく亀ちゃんが言った。
ちなみに亀池君は、自分の女子総合の指南役だ。
ほんっと、尋ねたことはオマケ情報までついてなんでも
答が返ってくる。
ジョシカクへの思い入れも
自分なんかと比べてずっと強い。
彼女――、まぁ、誰のことかはジョシカクを見てきた
人なら、分かるだろう。
だって、去年の夏(だったか?)
もう、辻さんと彼女の戦いを煽り始めていたんだスマックは。
自分は、当事者の間で何があったか、
双方の意見を聞いたわけではない。
ただ、口約束は約束だと思っている。
辻さん側が、ファイトマネーを捻出するために、
スポンサーを探したと耳にしたこともあった。
ランバー・ソムデートM16と闘うために、
ランバーのファイトマネーの半額を支払った
クロスポイント代表の山口元気さんの
現役時代を思い出した。
辻さんは、ADCCに出たかったようだ。
去年の11月ごろだろうか、わざわざ女子予選があるのか
ハマジーニョに尋ねている彼女の姿を
目にしたことがあった。
ただ、スマックで闘う前に、彼女と当たるのをさけ、
ADCC自体を諦めた。
UFC74のあと、プレスルームでかなり長い時間、
ジョシュ・バーネットと話をした。
プライベートの話でもあるから、本来は
ここで書き記すことではないかもしれない。
ジョシュは「ジョシカクとか関係なく、男も含め
最高のMMAファイターになる可能性を持っている」と、
彼女のことを熱く語り始めた。
「トップ中のトップなんだから、
ファイトマネーの高い場所で闘うべきだ」
「女子ファイターとして、その先に何があるのか分からない修斗の試合にはもう出るべきではない」
それでも彼女は、
「修斗初の女子チャンピオンになることを熱望している」とジョシュは言っていた。
だから、お金だけじゃないことは理解できた。
それに業界のトップが、
ファイトマネーの高い場所を選択する――
こと自体、何ら非難されることではないとも思っている。
と同時に業界のトップだからこそ、
彼女が住む世界を支えてきたプロモーションの大一番に
出場して欲しかった――
という多くの人の想いも理解できる。
ちょっとキレイごというならば、
あの場、あの夜に、スマックの大会に来場し、
セコンドを全うしていたのだから、
やっぱり業界――ではなく、ジャンルを背負っている
選手だ、彼女は。
それでも、
それでも、なぁ。
う?ん、
やっぱ、あの日はこう言いたくなったな……、
「ボードックより、スマックでしょ」って。
あの日、藤井恵は何を想って
スマックのリングを眺めていたのか、
自分は、知りたい。
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