【コラム】20070918(20070917含み)-20070924 某井田さん並の長文、スイマセン。/高島学

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文=高島学
text & photograph by Manabu Takashima

photograph by Zuffa

先週の火曜日に東京を発ち、月曜日に東京に戻ってきた。


弘中邦佳が出場するUFCファイトナイト、
チーム対抗戦を行うIFLの決勝。
ショーグンが出るUFCを見つつ、
IFLが行われたフロリダでは、JZ・カルバンと
そのトレーナーのベンケイの話を聞いてきた。


現地5泊、移動距離約2万7千キロ、
グレーシー(Gracieではなく、Greasy)な食事のせいで、気になってしょうがない腹回り以上に
格闘技について、アレコレ考えることが多かった旅路。


結論をまとめるには時間が必要だと感じるほど、
いろいろな想い、思考が頭を駆け巡った1週間。


だから、旅日記なんて立派なものではないけど、時系列に
そった形で、自分が感じたことを書き並べてみたい。


9月18日に成田を出て、サンフラン経由でベガスへ。
火曜日の太平洋便は、横になれるほどガラガラだったけど
サンフランからベガスまでは、いつものように満杯だった。


先着している、カメラマンの長尾さんが待つテリブル・ホテルにチェックインしたのは、18日の夕刻を過ぎていた。


19日、UFCファイトナイト。
弘中の出場は第2試合、前夜にホテルで長尾さんとの
話題の多くを占めていたHERO‘S、
宇野薫の敗北を引きずりながらの取材、
そして弘中の完敗だった。


チアゴ・ピッチブゥ・アウベスは宇野が、
今年も勝てなかったHERO‘Sミドル級トーナメントで
2連覇したJZ・カルバンのチームメートだ。


カルバンに関して――、
今さらながらだけど、何なんだ? カルバンって?
別にカバウカンチでいいじゃないかと思う。
このへんのHERO‘S首脳のプランニングって、
イレギュラーに弱いというか、修正が下手というか
違和感が残ったまま、今日に至るって感じだ。


ジェシアス・カバウカンチ→JZ・カルバン、
ガルター・ギル→ブラックマンバは、
ガムザトキノフ・マゴメットハン→ヴォルク・ハンの到底
足元にも及ばないネーミングだ。


なんてことも結構思ったりしたけど、これは本題じゃない。


本題は――、そうアウベス。
前時代的なVTが盛んなブラジルのセアラー州出身、
ムエタイ・ファイターとして、VTに出ていたところ
アメリカン・トップチームにスカウトされた。
UFC戦績は6勝2敗。
そこそこの戦績だが、
神の階級=UFCウェルター級で、正直、
これといった印象を残しているわけじゃない。


ブラジル人で、ムエタイ出身ときいて思うことは、
大して打撃の精度は高くないということ。
荒く、ガードを空け気味で打ち合ってくる。


ブラジルで、ムエタイと称した打撃の試合を見たとき、
アグレッシブに打ち合えば、ヒット率が低くても
ジャッジが支持するケースが多かったように記憶する。
だから、日本のキックファンが思うムエタイとは
似ても似つかないムエタイが、彼の地には存在する。


シュートボクセでも、アカデミア・ボクセタイでも同じ。
ならセアラー州のムエタイなんて――。
それに、これまでに見たアウベスは、腰も大して強くなく
寝技は正直、粗かった。


だから、
弘中が寝技でちょろく勝てるなと思っていた試合での
完敗劇だ。
打撃で完全に打ち負け、勝負をかけた寝技でも
じっくり攻めることができず、TKO負けを喫した。


 

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ケージに集中し、ヒジ打ちも警戒していた、
去年の10月とは違う意識のなかで、
スタンドで打ち負けた。


アウベスはとにかくデカかった。
一説によると、試合当日は87kg以上もあったという。
打撃はやはり荒かったが、勢いが違った。
ATTで、JZ・カルバン(笑)やグレイソン・チバウ、
ウィルソン・ゴヘイア(UFCライトヘビー級で、自分の一押しの天才肌)、
それにアントニオ・ペイザォン、ジェフ・モンソンらと、
トレーニングをこなしているからこそ――という
自信がアウベスからは伺えた。


20日。
弘中の敗北を目にした翌朝、
7時ベガス発デンバー経由で、IFLファイナルが行われる
フロリダへ向かった。
マイアミ着は、午後4時前。
試合開始は午後7時半。
有名な渋滞もそれほどでなく、宿にチェックインし、
ハリウッドのハードロック・ライブ・アリーナへ。


IFLは、日本の格闘技雑誌でもほとんど
フォローされていないMMAプロモーション。
昨年4月の旗揚げ戦時から、
チーム対抗戦というコンセプトはUFCのダナ・ホワイトを初めMMA界で、ボロクソに言われている。


まぁ、チーム対抗戦云々については、色々あるだろうけど。
ビッグネームはコーチだけで、
出場選手については、よほどのコアなファンでないと
知ることもない選手ばかり。
で、会場には3000人ほどの観客が集まっているのだから
別に質の悪いプロモーションではないと思う。
これは正直な感想だ。


でも、カメラマンの席がローテーション制という名の
早い者勝ち制は、ほんと勘弁ねがいたい。


選手にとっては素晴らしいエプロンの大きさも、
写真を撮る側からすると、ロープがフレームに入ってきて、
写真を撮るモチベーションが保てないぐらい
厳しい劣悪な環境でしかない。


大会のインターバル中、
観客席にいるヒカルド・リボーリオと立ち話をし、
リングサイドに戻ると、隣のおばちゃんカメラマンが、
自分の席の半分以上を占領していた。
「ちょっと、詰めてよ。ここは俺の席でしょ」
「もう、本当にローテーションなのに、誰も席を譲ってくれないし、あなたに対して普通の対応もできないのよ」
ちょい、ちょい、ちょい……。
おばちゃん、誰だって、試合が始まってから来たような人に
席を譲る気はしないでしょ。
こっちだって、スケジュールの都合、
ギリギリに会場に入って、
でも、先に来た人の既得権益を守り、
とんでもない場所で写真を撮っているんだから、ねぇ。


「あのねぇ、俺だって大枚はたいて、TOKYOから
やってきて、文句言わずに撮っているんだから。
あなたの無愛想さは我慢しても、
場所を占領されることには我慢できないよ」
なんてやりとりがリング下であったこととは関係なく、
リング上で、試合は順調に消化されていった


で、肝心の“その”リングの上はというと。
ケージだから、
ヒジ有りだから――、
これまで散々っぱら、自分で言ってきたことが、
過ちだと気づかされた。


リングで、ヒジなしで、
UFCの社長からボロンチョに言われているIFL。
アウベス同様、そこそこの戦績を残している、専門誌でも
取り扱われない無名のファイターたちの動きは――。
正直、予想以上の質の高さを誇っていた。


 

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WECをDVDでチェックしたとき、
70kgや65kg、61kgの選手を見て、
上記にある「米国での試合だから」、
「ケージだから」、「ヒジありだから」という
“だから”という接続詞に続き「~勝てない」と結論づけたことは誤りだった。


米国MMA界の表面だけを見て、
深淵に目を向けていなかった。


リングだから、ヒジなしだから、
日本人(軽量級)ファイターは勝てるのか――、
そんなことは決してない。
リングでも、ヒジなしでも、相当厳しい。
IFLを見て、こう感じた。


パンチの技術はいうまでもなく、
テイクダウンを仕掛けるスピード、パワー、
にもまして、そんな高速タックルへのディフェンス力。
思わず、うなり声を挙げてしまうシーンが度々あった。


 

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それが今の米国MMAワールドで、
名もなきファイターたちが、「そこそこの戦績を残す」
ということの持つ意味合いだと理解できた。


21日、ココナッツクリークがあんなに遠いと思わず
40分遅刻、10時40分にATTに到着。
JZが、腕時計を指差して笑っている。
この日の夜、リオに一時帰国するというのに
自分の取材を快く受けてくれた。
けど、この日、ベガスから戻って来ている
トレーナーのベンケイの姿がない。


 

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それからまた40分ほど待って、ベンケイが現れた。
「ヒロナカはサムライだ」なんて言いながら。


JZとベンケイの取材、
試合の煽りや印象、はたまた技術論でなく、
ちょっとFnLっぽいといえば、FnLっぽい取材だ。


インタビュー時間56分、ATTの撮影30分ほど、
ジムでの雑談、小一時間。
ジムを出てJZとベンケイと、ブラジリアンレストランへ。
ここでの雑談2時間。
こういう時の会話って、自分にとってインタビューより
ずっとタメになる。


「ペケーニョをATTに呼んで、充実したトレーニングが
できる環境を与えてあげたいんだ」
ベンケイは何度も何度も、同じ台詞を吐いた。


ATTには、もうファイターの月給制はないようだ。
ダン・ランバートも投資した資本の回収を諦めたよう。


それでも、ここには
総帥ヒカルド・リボーリオを筆頭に
優秀な柔術家たち、
ベンケイのようなフィジカルコーチ、
ベルギーからやってきたキック担当のモハメッド・オワリ、
モントリオール五輪ボクシング金メダリストのハワード・デイビスという指導者たちがいる。


1670平米のジムには、オクタゴン、リングが二つ、
日本の道場が6個ぐらい入りそうなタタミマットに
ウェイト機器の数々が備わっている。
ノーリミッツ、エクストリーム・クートゥアーなど、
最近流行りの大型ジムの走りがATTだ。


MMAブームが爆発する前から、この規模を誇っている。
それだけの歴史が、ここにはあり
ファイターたちは経験を積んできているということ。


だから米国の総合で、
そこそこ以上の戦績を残すファイターたちが育っていく。


 


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22日、早朝5時にモーテルを出て
マイアミ国際空港へ。
ワシントンDCのダレス国際空港経由で
ロスのLAXエアポートに着いたのは、午後3時。
即レンタカーを借り、
イチロー率いるマリナースに、胴上げを阻止され
苦虫をつぶしたような
エンジェルス・ファンが帰路につくなか、
ホンダ・センターに到着。


UFC76。
ショーグン敗北、リデル敗北。
観客は16000人以上の大入り。


でも、もうダナ・ホワイトの威勢の良い言葉が
面白くてしょうがなかったポストファイト会見も予定調和、
インタビュー同様、別に面白みを感じない。
だからって、「マスコミがマンネリを感じ始めたときから、
ファンのマンネリを呼ぶことになる」――なんて、
格好良いことは決して言えない。
だって、米国のマスコミは、まだまだMMAなる新しいスポーツを知ったばかりで、エキサイティングな渦のなかで
顔を高潮させて、ダナに必死で質問を繰り返している。


ヴァンダレイは誰と対戦する?
カナダでの大会は?
フォレスト、次は誰と戦いたい?


ずらりと並んだ世界最高峰の選手たちに
テクニック的な質問をする記者は一人としていない。
そして、会見場には
古顔だったMMAのジャーナリストたちの姿も見えない。
つまり、格闘技の記者であることしか脳のない自分には
とても退屈な記者会見でしかないということだ。


UFCは、MMAを超えた存在になったのだろう。


世界イチの人材の宝庫だ。
そして、ショーグンが負けた。
練習不足なのかもしれないし、ステロイド・チェックがあるがため彼の肉体は変化したのかもしれない。ただし――。
(ウチの2歳の娘が大のお気に入りの言い回しでいうなら)
「でも、そんなのカンケーねぇ!」


今回の取材旅行で気づいたこと、それは
米国でそこそこの戦績を収めるということの意味合いだ。


UFCは、“そこそこ”どころか優秀な戦績を残している
ファイターたちの集合体。
「無名で強い」が当たり前の世界になっている。


果たして日本、いやPRIDEはどうだっただろうか――、そしてHERO‘Sはどうだろうか。


大物選手は、年間契約をし、対戦相手を選択できる。
そして、大会直前ギリギリの対戦カード決定。
彼らと当たるアンダードッグは、
負けても正々堂々と称される打ち合いを挑む。


GPなど、トーナメント戦以外の試合、
つまり、興行を成立させるための試合と、そこを了承し
一発狙いで挑んでは敗れた日本人ファイターたちが
どれだけ存在したのか。


総合格闘家として、査定のしようのない
話題を持つ者の登用の繰り返しや、
KOや一本決着を演出するためのイージーファイト。


そこを批判できる力を格闘技マスコミは持っていない。
持っていないだけならいい、それらの対戦カードを
別に訝しく思うことなく、喧伝してきた。


今、日本人選手と同様に
格闘技マスコミは厳しい立場にある。
それは、自分たちの行いが招いたことでしかない。


UFCでは、大抵2~3ヶ月前に対戦カードが決まる。
一発狙いや、正々堂々と打ち合うことでなく、
勝ちにいく戦略を狙う時間が、
ショーグンの対戦相手にも、ミルコの対戦相手にもあった。
それが、日本と米国の差じゃないだろうか?


対戦相手を研究したうえで、自分のスタイルを貫くのと
相手を知らずに、自分の得意パターンで試合を組み立てるのとでは大きな違いがある。


せめて、コーナーマンは対戦相手のことを選手以上に知っておくべきだろう。


ディエゴ・サンチェスが、ジョン・フィッチに敗れた。
鉄槌やヒジ、パウンドを喰らった。
それは彼がガードから腕十字やオモプラッタ、三角絞めなどを狙った後、防御されてからもらった攻撃だった。
ディエゴはガードで、もぐり、フックし、
クローズドもしたし、脇も差した。
それでも、自分の攻撃がしのがれるまで、
有効なパウンドやエルボーを受けていない。


ただし、UFCではガードファイター、
そしてグラップラーは、関節を極めないと評価されない。
(チアゴ・タヴァレスの負けも上記に同じ)


二人のジャッジ、そしてPPVを見ているファンも
この夜のディエゴの勝利を支持しないだろう。
ディエゴ自身も敗北を認めた発言をした。


だが、彼はMMAの歴史上、
将来的には勝者たる評価を得るだろう。
ディエゴが披露したガードワークに関しては、
今後、UFCで戦うファイターがこぞって、
取り入れ、さらに研磨していくに違いない。
UFCの戦いをレベルアップさせた敗北だった。


ディエゴは、今後、階級を下げること、
そして、さらなるパワーアップも念頭においている。


それは、彼の持つ、テクニックを活かすため。


 


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日本の総合格闘技界は
ジムの規模、トレーナーなど裏方の充実度、
そして経済の論理的にも、
米国MMAに遠く及ばない状態にあるかもしれない。


物量作戦では、到底適わない。
だが、技術的に蓄積がある(はず)。
日本人の体格、メンタルを活かした技術、戦術は、
まだ残っているし、発展していく。
重要なのは、
各々が己の体格を知った技術、
自分のメンタルにそった戦略、
そして、相手を研究することと、
それらの研究が当たり前と思える周囲の環境だ。
そして――、
プロモーション的には、そこそこの戦績が残っていれば
それは確実に強さを兼ね備えているというマッチメイク(これは、プロ修斗がずっと以前に実現させているが、クラスAという面では、最近、上手く機能していない階級が増えてきた)の存在だ。


23日、早朝、恩人Kさん宅を
5時に出るまで、Kさん、長尾さんとかなりネガティブな
MMA談義が続いた。


そんな米国最後の夜から、
一転、ポジティブな思考に変わったのは、
24日、午後3時に成田に到着、その足でGiグラップリングを観戦したからだ。


下北沢の駅で下車するのはもの凄く躊躇した。
あと、数駅で自宅に帰ることができる。
正直、よく北沢タウンホールに足を向けることができた。


そして、自分へのご褒美なんかでなく、
しっかり選手から、褒美がもらえた――。


直さん、渡辺直由選手が一回戦で見せた
一連のマウント奪取――、アレを話題にしないで、
何がマスコミだと、本当に思う。


創意工夫、自分の体を知る、
可能な限りの高いレベルでの練習環境を作り上げる、
そして信用する練習仲間たちの存在。


直さんに欠けていたのは、相手への研究だけ。
Giグラップリングは、選手にとって最終目標ではない。
だけども、Giで“そこそこ”の戦績を残すのは大変だし、
そういう場で相手を研究するまで、
戦いが高いレベルになることは、とても大切だ。


それを日々、


柔術の普及に懸命になっているハマジーニョの大会で――、
柔術家として強くなろうと努力を続ける直さんの技術で、
気づかせてもらうことができた。


で、記者という立場、選手、関係者と話せる環境。
そんなもんで、自分でも少しは役に立てるかもしれない――と思った。


自分は、
一番勢いのある現場に引っ張られるような記事創り、
雑誌創りを、否定はしないが、やりたいとも思わない。
少しでも格闘技好きの読者を引っ張っていけるもの、
そういうモノ創りをしたい。


いやぁ、本当にGiグラップリングに行って良かった。
家庭人としては失格だけど、
業界が良くなれば、
家庭人としても少しはましな得点を稼げるはず――、
なぁんて移動の連続の1週間の最後の最後、
小田急の各停に揺られながら感じた次第――です。


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【 2007年09月27日 13:29 】

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