Fight&Life vol.1
好評発売中!
文=高島学
text & photograph by Manabu Takashima
このコラムを書いている日に、
bodogFightがニュージャージーで行なわれる。
現地と連絡をとりあっていて、
随分と前に、「ふらりと海外へ行く」なんて、
ここで記しておきながら、帰国後、報告もせずに
日々の仕事に没頭していたことに今さらながら、
気付かされた。
もう3週間前になるけど、自分はストライクフォースと
TUFシーズン5フィナーレを見にいった。
色んなことを感じさせてくれる2日間だった。
ストライクフォースの会場で、
「TVの邪魔になるから、カメラマンのスペースはない」
という指示を受けた。
いやぁ、本当に久しぶりの鶴の一声。
もちろん、カメラマンは大反発。
これはSEG時代のUFCで幾度もなされたシーンだけど、
そんな経験のない米国のプレスたちのなかには、
裁判でも起こさんばかりに怒気を含んで、
捲くし立てる者もいる。
自分は以前、
オランダの会場で同様の指示を大会途中に受け、
激しく抵抗したことがあった。
そして、デッカイ黒服にフロアに叩きつけられた(笑)。
アスレティック・コミッションが介在したPPV大会では、
旧知の関係者に頼み込み、セコンドとして
リングサイドに陣取ることもできない。
(米国のメジャーな大会では、日本でよく見られるような、
セコンドが記念写真を撮るという行為も禁じられている)
上に記したオランダの大会では、
シュートボクセのフジマール・フェディリコ会長に頼み、
自分は即席ブラジリアン選手のコーナーマンとして、
リングサイドを確保。ブラジル人が出る試合だけ、
アカデミーに関わらず写真撮影を続けさせてもらった。
「8席だけ用意した。ヘキサゴンサイドに来てくれ」と、
広報から連絡が入った。
ちなみに広報はストライクフォースの人間で、
指示を出しているのはショータイムとプロエリートの人間。
「雑誌? はぁ? インターネットじゃないのか?」
いきなり、そう言われた。
実際はどちらでも仕事をしているのだが、
自分が雑誌名でクレデンシャルをとるのは、
UFCをつかさどるズッファが、
格闘技専門ネットメディアを締め出したことが起因している。
プロエリートの人間は、
「日本の雑誌? フンッ」という感じだった。
ズッファでは、ブラジルや欧州の雑誌よりも、
日本の専門誌、メディアに対する扱いはいい。
これは付き合いが長いからなんてことでなく、
まだ彼らは、日本のマーケットを大切にしているからだと
自分は判断している。
ズッファと、プロエリートの視線の先が、
見えるなんて大げさなものではないが、面白い現実だ。
ちなみに、昨年12月に訪れたボードッグでは、
凄く狭い場所だが複数の旧知のカメラマン連中が、
リングサイド・パスを与えられ、
そうでないマスコミは後方からの撮影を余儀なくされていた。
とにかく、勢いがあり、
活気に満ちているのが、今の米国のMMA業界。
なかでも、ダントツなのは、ズッファだ。
スパイクTVとPPVを持つUFC、
HBOも口説こうとしているようだが、
TV中継にしても、
しっかりとビジネスとして歯車が噛み合っている。
WECでは、今までの米国MMAにない
日曜夜のLIVE中継を試みている。
ズッファは、業界のフロンティアに相応しく、
新たな試みにチャレンジする。
他の組織はそのあとを追う――。
という事実を改めて、見た。
今、ケーブルネット中継により、
全米で放送されるMMA大会は、かなりの数になっている。
しかし、実際のところ、中継枠を買っている
プロモーションも多い。
TUFシーズン1もそうだった。
だからこそ、PPVビジネスに結び付けないと
資金を回収できない現状がある。
どんな巨大資本も、
少しでも早くビジネス・ベースに乗せなければ、
MMA興行はただの金食い虫で、いずれ衰退に向かう。
ボードッグは、今回のIONでの中継を次のPPVに
結び付けないといけないし、
IFLは中継料が支払われるディールを結ぶ必要がある。
プロエリートは、何だろうか?
ショータイムでPPVこそ行なっているが、
EXC、Dynamaite!! USA、
ストライクフォースと全て違う大会の中継になっている。
どういう目的をもってMMA興行を開いているのか、
実際のところ、顔が見えてこない。
元ニュージャージー州アスレチック・コミッションだった
ボクシング界から転出してきたゲーリー・ショーにしても、
イベント統括者でしかないという話も聞いた。
元KOTC、そしてPRIDE USAの一員だった
某氏が、プロエリートの副社長になったらしいが、
じゃぁ、社長は誰なんだ?
誰がEXCを開き、ICONスポーツやADCCの
ネット配信を決定しているのか?
全く、組織の顔が見えてこない。
そう、プロエリートからは、
ダナ・ホワイトとロレンゾ・ファティータのような人物を
見つけ出すことができないのだ。
一方UFCは、
ロレンゾとダナの役割がハッキリしている。
ダナはズッファの素晴らしいスポークスマンだ。
インタビューをしていても、これだけハッキリと毒を吐き、
ユーモアもあり、そしてスマートな人間も余りいない。
UFCの勢いもあって、
こぞってマスコミもダナ・ホワイトの声を掲載する。
話題の中心にあり、話が面白い。
ダナの会場人気も、また凄いものがある。
今や、ミスターMMAと言っても過言でないだろう。
そんなダナを話題にして、話してみたい選手がいる。
フランク・シャムロックだ。
ストライクフォースのメインで、
フィル・バローニを下し、同組織のミドル級王座を獲得。
試合後の記者会見では、
何かあるたびに「もう歳だ」と繰り返していた。
彼はUFCの第一回大会が行なわれた翌年に、
パンクラスでMMAデビューを果たした。
もう、12年半も昔の話だ。
実は自分は、この業界に入る前に、
世界を放浪していた最中に、
ライオンズ・デンでデビュー前の練習をしている彼に
会ったことがあった。
ケン・シャムロックにボコボコにされていた、
褐色の肌を持つ青年が、
まさかケンの弟(義弟だが)だとは思ってもいなかった。
「あれから何年になる?」
会見を終えたフランクが、話しかけてきた。
そして、「互いに歳をとったな」と。
確かに自分はもう、白髪だらけだし、腹も出た。
手足も細くなった。
大きな力に対抗するパワーも失いつつある。
けど、フランクは本当に変わっていない。
35歳であのフィジカルは驚異的だ。
寝技はやや時代遅れの感もあるが、
打撃は彼の言葉通り、成長し続けている。
ブランクがあったとはいえ、そのブランクこそ
今を掴むためのフランクの選択だったに違いない。
デビューから12年、
この業界の色んな側面を目にしてきたフランク。
彼はダナ・ホワイトのことを、どう思っているのだろうか。
今の北米MMAの勢いは、間違いなくUFCが作った。
ファイターは、その恩恵を受け、フランクもその一人だ。
だが、UFCが成功するまでには、
色んな選手が、汗を流し続けてきた。
そんなファイターの存在が、基本の基本にあると思う。
自分のプロモーションと契約していないからといって、
立場のある人間が、
批判めいた論評を公言して良いものだろうか。
汗を流し続けてきた選手たち、
そこの上に、今の繁栄があると思うべきでないだろうか。
フランク、モーリス・スミス、
マット・ヒューム。
UFCがフロンティアになりえるための――
真のフロンティア。
そんな彼らの声を、今、むしょうに聞きたい。
これって、ノスタルジーなのだろうか?
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