文=高島学
text by Manabu Takashima
photograph by Atsushi Hashimoto
格闘技界に関わって生きてきて、
この数ヶ月の米国の総合格闘技業界の鼻息の荒さは、
ちょっと経験したことがないものだ。
実際、北米の格闘技ビジネスが、どこまで盛り上がっているのか、
数字で表れているのはUFCだけだろう。
まぁ、Fight&Lifeなんて雑誌のコンセプトは、
本来であればそういう事情には
精通していなくていいものかもしれない。
が、一方で、自分たちが以前在籍していた
旧某格闘技雑誌編集部で話し合われてきた、
格闘技雑誌の未来系とでもいえるこの本のコンセプトの根底には
強い者、勢いのあるものを伝えるという部分が、
残っているはず(と思っている)。
とはいえ、プロイベント人気に左右されない、
つまり、好景気になっても、購買数の増加を求めずに創るという、
実は硬派な決断は、当然北米のMMA人気の膨張で、
雑誌の売り上げが左右されることなんてないものを目指している(はずだ)。
そんななか、自分はUFC71の取材でラスベガスへ出かけ、
帰国後、締め切りラッシュ後に、僕にとっては
父親参観という締め切り以上に大切なイベントを無事終え、
一息つこうかな――なんて状態にある。
けど、この一息が本当に一息になりそうで、
ちょっと人生全体に対して、消極的になってしまいそう。
前回、米国へ出かけたのは、
Fight&Lifeと同日発売のスポーツグラフィック系の
スポーツ総合誌のお仕事で、だ。
しかも、同誌のご好意で、時間のあるときには、
個人的な取材をしても良いなんて太っ腹なことを言われて、
感謝感激な米国滞在でもあった
(実際は、某大会のパンフの執筆のため、ホテルにこもりっきりだったけど――、それでもUFCの会場に何人かと意義ある会話が楽しめた)。
その某誌のお仕事で滞在したラスベガスの1週間弱の間に、
ちょっと印象に残っていることがある。
それが、冒頭の写真。
エクストリーム・クートゥアー・ミックスドマーシャルアーツ
という文字が躍る、エナジー・ドリンクだ。
日本では一向に人気が上がる気配が見えないレッドブル、
そしてUFCのオフィシャル・スポンサーである
エグザイエンスのゼネジー・ドリンクとほぼ同じ、
あの炭酸系のエネルギー・ドリンク。
なんていうのか――、今のUFCはMMAとか
格闘技とかいう規模で語れなくなっている。
一つの社会現象だ。
それは日米の格闘技界の差なんてものでなく、
日米のエンターテインメント産業の違いとでも言えばいいのか。
いわゆる、本場の○○――という言い方をすれば、
格闘技の本場がどこにあるのかではなく、
格闘技ショーの本場は米国にあることを認めざるを得ない。
日本は数年来、スタジアム・ショーや大晦日のTVウォーなど、
とんでもない規模の格闘技ショーが存在した。
ただし、それが社会に溶け込んでいたかどうかといえば、
やはり、そこまではいっていなかったように思う。
「大晦日だから」という概念が、格闘技を普遍なものにできなかった。
創世記のJリーグしかり、アイルトン・セナのころのF1しかり。
とんでもなく盛り上がったあとの、潮の引きようを、
バブルという日本を知っている世代は目にしてきたはずだ。
その後、Jリーグはブームでない状態でもやっていけるよう
努力を重ねてきた。
F1は、もう一度バブルが欲しいように見える。
それはF1の内側で関わる人よりも、外側にいる人たちが、
相変わらずずっと多いからだろう。
じゃあ、格闘技はどうなのかってことになると――、
内側だって十分に充実している。
ただ、外側の方が社会に影響力があるのが現状だろう。
内側にいる人間は、この外側にあるパワーとぶつかり合っても、
躍らされてもいけない。
北米はMMAバブルかもしれないが、
UFCはブームを超えた存在になろうとしている。
ラスベガスのストリップを歩く人たちは、
「ミックスドマーシャルアーツ」なんて言葉は知らなくて、
「アルティメット・ファイティング」と総合を呼ぶ。
北米では外側と内側が、上手く付き合えているのか。
あるいはズッファ以外、第2グループってどうなっているのか?
さらなるステップアップに向け、
バンクーバーで実働部隊が動くボードッグに関しては、
一度、その空気を味わった(そして、自分なりに感じるものがあった)。
じゃあ、ショータイムを持つプロエリートは?
彼らはどんな空気のなかで、PPVショーを開いているのだろうか。
日本にいると、さも当然のように北米を考えてしまう。
それが、まぁ、格闘技に食わしてもらっている、自分の役割。
というわけで、ブラリとしてこようかなと思う。
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