文&写真=高島学
text & photograph by Manabu Takashima
5月12日、土曜日の正午。
東京、巣鴨にあるトライフォース柔術アカデミーで
日本ブラジリアン柔術連盟の説明会が行なわれた。
説明会で“説明”される部分は、会員登録と団体登録、
そして帯の昇格制度に関して――が主だった。
それぞれ連盟のホームページ(http://www.bjjfj.com/)に
記載されている内容の説明をし、
参加者からの質疑応答という形が取られた。
質疑に応答するのは、中井祐樹連盟会長と早川光由本部長の2人。
記者として、感じた疑問を質問させてもらうという機会も得られ、
予定された2時間半の間、真剣な質疑応答を拝見させてもらった。
質問する側の疑問は、主に団体登録や会員登録、
つまり出費する側が、なぜ、お金を支払う必要があるのか?
そして、お金を支払うのだから、その見返りはどういうことなのか?
――、という素朴かつ純粋なものだった。
お金を支払う、これは切実な問題だ。
特に、これまで支払う必要のなかった団体登録に関しては、
支払えば大会に出場でき、またその大会の数を多くするという会員登録
(ちなみに、旧体制の2006年度に会員登録してある人は、2007年まで有効。ただし、今後は、団体登録をしていない組織に所属している人は、会員登録できない)
よりも、多くの質疑があった。
思いもしなかった収入があると、ほくそ笑んでしまうのとは対照的に、
これまで柔術の大会に出場するのに、
そして柔術のアカデミーを営むのに必要のなかった出費は、
やはり、“余分”と人は感じてしまう。
だから、支払わないのではない。
支払ったものとして、受ける恩恵を求めたくなる。
これって、納税と同じことだろう。
ただし、納税の義務と違う点は――。
望んで日本という国に生まれたわけでなく、
たまたま生を受けた地が、日本で、
国の政に参加する人たち――自分たちが選んだ人たち――が
作ったルールに従うのが納税だが、
柔術をするのは、自分で望んだこと。
そして、
連盟のトップを自分たちで選出していない。
だから――、
現時点では、登録費を習慣のように支払うことはできない。
極論をいうと、
いやなら支払わずに、連盟公認でない大会を開き、
出場しつづければいい。
もう一つ、会費が必要ない別の連盟を作り、
国際ブラジリアン柔術連盟の公認を受ければいい。
さすがに、説明会に出席した人たちのなかには存在しないだろうが、
そんなことを考えている人だっているだろう。
個人的なことを言うと、やればいいと思う。
結局、その人たちが何かをやると、
その周囲にいる人は、何か文句を言い始める。
コトを成すということは、つまりはそういうことだ。
なぜ、会員登録が必要なのか?
柔術に関わる人たちにボランティアでなく、
労働の対価を支払うためだ。
それって、凄く健全なことじゃないだろうか。
大会は、参加料があるから、参加者次第で
レフェリー、チェアマン、その他、多くの運営陣に
対価を支払うことができる。
質疑応答のなかであった、
「地方ならそうはいかない」という意見。
実は、これこそ、連盟に団体登録費が必要な部分に直結している。
大会も、参加者が少なければ、手弁当ということになる。
実際、どんな格闘技でも、この手弁当に頼っている
部分が存在する。
情熱、愛、ライフ、色んな言葉で表すことができる
格闘技界の手弁当という部分。
ただし、手弁当よりも、
しっかり対価を得ることができたほうが、
良いに決まっているし、健全だ。
いや、
情熱や愛が続き、ライフにするには、収入が不可欠になる。
愛や情熱を謳歌できるのも、
生活ができるからに他ならない。
▲新人戦の際、隣のメインアリーナで行なわれていた関東学生柔道大会から、東京大学柔道部でもコーチをされている柏崎克彦氏が顔を覗かせる場目も。中井代表に、「運営は難しいよねぇ」と声を掛けていた。
話を連盟に戻そう。
連盟の運営には、参加料を支払う人はいない。
だが、運営費は必要だ。
説明会の資料を作る人。
説明会に場所を貸す人。
説明会で説明する側にある人。
ホームページを更新する人。
IDカードを製作する人。
国際連盟と連絡を取る人。
大会開催のために体育館を予約する人。
トーナメント表を作成する人。
大会のための会場設置をする人。
これらの事項が、会社組織内の労働であれば、
全て賃金が支払われる。
連盟の目標は、法人化すること。
だから、公認会計士、公認弁護士が存在する。
説明会の途中、商標という言葉が出たが、
実は商標だけでも、有効な範囲が限定され、
数多くの種類が存在している。
その一つ、一つを取得するだけでも、
登録費が存在する。
(Special thanx toエディさま)
なぜ、商標を登録するのか。
それは、価値を守ること、権利を外部から侵されないため。
で、登録費という出費が必要になる。
柔術連盟を法人化すること、
それは、柔術の価値を守ること。
権利を外部から侵されないこと――だと、
自分は理解している。
なら、そのために出費が必要だ。
たしかに、連盟の新人事にともなう、新しい動きは
急な印象を与えただろう。
過去の要らぬ穿鑿を受けた経験もあり、
会計の報告を約束し、ガラス張りの運営を約束している。
それでも、動き始めたばかりの現状では、
誰もが満足する状況を作れるわけもない。
だからこそ、少しでも理解してもらうための説明会。
凄く、意義があったと思う。
もちろん、頑強な反対意見を持つ人たちは、
この日の説明会に参加しなかっただろう。
ただし、見えない反対意見よりも、
納得してくれる者、
正面を切って、自らの意見を口にしてくれた人たちや、
連盟の変化、将来に賛同している人たちの姿が見られた、
この意味は大きい。
「全国に広まれば、とっとと誰かにバトンタッチしたい」
翌日、上尾市で開催された新人戦で、
早川君(と書かせてもらいます)が、こう呟いた。
アカデミーを運営し、指導する。
それ以上のことに動き始めたのは、
そこに柔術への愛、情熱があるからこそ。
純粋な愛があれば、赤貧生活でも耐えられる――、
なんてことは、僕は絶対に思わない。
そして、愛する柔術を世間に認めてもらうには、
赤貧であっては、決してならない。
柔術を広める――、
柔術が社会的ステイタスを得るには、
柔術を愛していない人たちの、柔術というマーケットへの
参入も拒んで入られない。
だからこそ、柔術を愛する人たちの手による
連盟、大会運営が必要だということ。
働けば対価を得る。
その逆に、好きなことをするには対価を支払う必要がある。
新人戦で、表彰式が行なわれている最中も、
大会運営陣による、ミーティングが行なわれていた。
審判の育成に関して、新たな試みも見られた。
これら、全てが、柔術の発展に関係してくる。
日本の柔術界は、至極真っ当な道を歩んでいるに過ぎない。
でも、真っ当なことを理解してもらうのって、
本当に難しい。
けれども、
(無責任に)「頑張って」という声を掛けさせてほしい。
■関連リンク
[公式]日本ブラジリアン柔術連盟
http://www.fnlweb.com/mtv33/mt-tb.cgi/236
高島さんの文章はとっても分かりやすく、かつその競技への愛情が感じられ、読んでいてとても共鳴出来ます。
ありがとうございます。