【コラム】 レフェリーが試合を止めた、その理由が……/高島学

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文=高島学 text  by Manabu Takashima

写真=デイブ・コントレラス Photo by Dave Contreras


2007年4月22日(日)、ProElite.com

ノーリミッツMMA大会の模様を観た。


太平洋の向こうで行なわれている総合の試合を

自宅の仕事部屋のPCで観る。



朝のアニメ・ラッシュを終え、

DVDを見ることを禁じられている娘が

コーヒーを運んできてくれた。



ホント、世の中、変わっていく一方だと実感する。



お目当ては、タクミの試合だった。



同じ自費での渡米なら、パンナム柔術ではなく

この大会を選んだタクミ。

勝てば、エリートXCへの参戦もあるという。



「柔術、ブラウンベルト」

「柔道、ブラックベルト」――、そして

「日本人で最初の、そして唯一のKOTC王者になったファイター」

とコールされたタクミ。



KOTC以前にHnSでも試合をしているから、

海外の試合は慣れたものだ。



日本と変わらない表情、そして動き。



パンチを受けると、相変わらず両足が止まってしまう。

そして、下を向く。



でも、これがタクミだ。

いつの間にやら、パンチを入れて、マウントを奪い、

最後は勝つだろう――、なんて、まさに日曜日の朝気分を

引きずったままの試合観戦だった。



が――。

タクミのパンチがヒットし、

随分と背が小さい対戦相手アンソニー・マクダビッドが

組み付いてきたところで、

その指がタクミの右目に触れてしまった。



前のめりに倒れ、苦悶の表情を浮かべるタクミ。



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しばらくして、立ち上がると、当然のように臨戦態勢へ。



が、レフェリーがこれを承知しない。



試合をストップすると言っているように、映る。



焦るタクミ、そしてセコンドたち。



激しくレフェリーに試合再開の意思があることを伝える、

タクミ陣営。



セコンドの一人が、しゃがみこんでしまった。

何をいっても、聞いてもらえないような状況だ。



裁定はテクニカル・ドローだった。



レギュレーションだから、仕方がない。

レフェリーが、続行は無理と判断し、

「できる」と言い張る選手をなだめるシーンは、

これまでも何度も目にしてきた。





ん? ? ? ?



何だって?



ノーコンテストの理由は、掻い摘んで言うと――、

レフェリーが2度に渡り、タクミに試合に応じるか確認を取ったが、

2度とも、反応がなかった。

どんなランゲージも、タクミは用いることがなかった。

だから、試合は続行できない――と。



日曜の昼下がり――らしくなく、頭に血がのぼったぞ。

「なんじゃ、そりゃ!」



自分はコミュケーションの手段として、

英語を用いることはできる。



だが、「英語が話せる?」と尋ねられると、

「意思の疎通のために使うことはできるけど、話すとはいえない」と答える。



電話で、ホテルの予約はできる。

銀行口座の話もできる。

宅配ビザも頼める。



以前は恐怖だった、サブウェイで

自分の好きな具だけを使ったサンドウィッチを、

苦もなく作ってもらえるようになったのは、

5年くらい前からだろうか。



自分のことを知っている友人と政治や宗教の話はできるが、

自分のことを知らない人とはできないと思う。



日曜日のミサで話されていることは、話半分以下。



そして、格闘技の話はできる(相手に我慢を強いているとは思うが――)。



なぜ、格闘技の話はできるのか。

格闘技のことは、日本語で、

脳みそで理解し、意見を持っているから。

そして、分からないことは、分からないとハッキリ言うことができるから。



でも、英語が話せるなんて決していえない。



指が目に入った状況で、英語で何かを

話しかけられても、きっと、普通に返事はできないと思う。



シュートボクセLAの連中は、タクミに

「お前は試合を投げた」と言ってきたそうだ。



試合ができると意思表示を続けるタクミに

レフェリーは、

「やめろ。続けると、サスペンドするぞ」と言ったそうだ。



カリフォルニア州アスレチック・コミッションは、

この処理が本当に正しいと思っているのだろうか?



なら、レギュレーションに加えて欲しい。

「ファイターは、英語を話せないといけない」と。



そうでなければ、こうしてほしい。

「英語が話せないファイターは、必ず英語が話せるセコンドを一人つける。そして、何かアクシデントが起こった際は、セコンドを踏まえて意思確認を取ることを認める」と。



実際、タクミ陣営の話では、試合前に英語が話せないことは確認されたという。

そして、英語が話せる、セコンドも当然のようにいた。



もう一つ、不可解なのは、不慮の事故でありながら、回復時間を見なかったことだ。



この辺りは、しっかり確認を取る必要がある。



ルールでは、今回のケースや金的などでは

5分間のリカバリー・タイムがあったという。



正直、あのレフェリーの蛮行

(まるで昨年、ワールド・ベースボール・クラシックで

 日本のタッチアップをアウトにした球審のよう)

――を見逃すようであれば、

何のためのアスレチック・コミッションなのだろう?

アスレチック・コミッションは、

MMAワールドの住民が、

彼らがMMAを認める云々という以前から、

歴史を重ね、尊厳を持っていることを

認めてくれないのだろうか。



傲慢でもなんでもなく、それが規則。

それがアメリカなのだろうか。



鼻持ちならない。



が、その一方で、こうも思う。



米国でトップを狙う選手は、

英語を使うことにチャレンジしてほしい。



現地で車を運転することにチャレンジしてほしい。



かつて、ヒデがイタリア語でインタビューに答え、

今、高原がドイツ語をテレビ番組で操っている。



頂点を目指すということは、

理想をいえばそういうことになるのではないだろうか。



レフェリーが何か言った。



Excuse me, my English is poor. Ask him.

と、セコンドを見やることが出来れば……。



試合続行できたかもしれない。



タクミの身に起こったことは、

海外では誰の身にも起こりうる。



世の中は変わっていく一方だ。



格闘技界も大きく変わっていくだろう。



ならば、選手も技術以外の面で、

世の中の変化に対応していかなければならない――

のだろう。





※タクミ陣営は、テクニカル・ドローではなく

ノーコンテストになるべきだとプロテストしている。



■関連リンク

[公式]
ProElite.com


【 2007年04月25日 03:20 】

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コメント

shoko
2007年05月03日 21:21

タクミ選手は英語を勉強されているようですが・・・
激痛に襲われた時、咄嗟に英語は話せないかもしれませんね。
ご本人は不完全燃焼だったでしょう。
本当に残念です。
でもタクミ選手は今回の経験を活かして前進されることと思います。




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