文=高島学
text by Manabu Takashima
先日、3月12日に名古屋で行なわれる
HERO’Sのパンフレットの企画で、
谷川さんのインタビューを行なった。
僕が谷川さんにインタビューをするのは、
2004年夏前の『ガチ・マガジン』、
2006新年の『ゴン格』以来、3度目のことになる。
1年ちょっと振りのことだ。
谷川さんにインタビューをしたあとは、
いつも「してやられたなぁ」と感じてばかりだ。
色んなチャンネルを持っている人だから、
自分と話すときは、高島学と話すべきことを話せる人だ。
で、翌日になると、全く別チャンネルで他の記者と話せる。
自分の力不足を実感させてくれる、インタビュー相手。
勉強になるし、考えさせられる。そして、緊張する。
ただ、今回、このインタビュー、
最初は断らせてもらっていた。
HERO’Sのパンフは、これまでの色合いを変える。
だから、思ったように質問をして、書いて欲しいという
非常にありがたいお話を頂いていたのだが、
そんなこと、
パンフでやるべきことではないと思ったからだ。
パンフレットとは、会場に足を運んだファンが、
第一試合のゴングが鳴るまで、
手持ち無沙汰な状態を緩和するもの。
これから始まる、LIVEで楽しむ格闘技。
高まる期待、そんな気持ちをさらに高める活字。
それがパンフレットだ。
僕にとっては――。
パンフの原稿は、大会を楽しむためにある。
専門誌の、通称マエモノという大会を煽るレポートも、
ある意味よく似ている。
「如何に大会の期待値を上げるか」ということを念頭に
大会を楽しみにし、興味を持ってもらう、
できれば足を運んで欲しいという思いで、自分は
マエモノを創ってきた(つもり)。
マエモノではポジティブに大会を捉え、取り上げる。
選手の良いところをプッシュする。
勝負のアヤについて書く場合こそ、
出場選手の弱点に触れることもある。
ただ、わざわざ人物を取り上げて、
弱点ばかりを書くような記事は、必要ない。
例えそれが真実だとしても、
それでは煽り記事にはならないし、
そんなことをするライターやエディターがいれば、
自分はそんな人たちの頭の中を疑ってきた。
パンフは、
煽り記事以上に一つひとつの試合、
一人ひとりの出場選手のことをポジティブに捉えるものだ。
HERO’Sのようなイベントなら、なお更のこと。
自分がこれまで関わってきた総合のパンフ――、
プロ修斗やCAGE FORCEなら、
その競技性や選手育成を掲げる団体の特色もあり、
厳しい指摘をしても、
ネガティブに捉えるファンは少ないだろう。
だが、HERO’Sは違う。
テレビで総合を楽しみ、KIDや元気、
ZSTの所でなく、フリーターの所のことが
大好きな人たちが集まる空間だ。
場の雰囲気を高めるためのパンフで、
自分は谷川さんにインタビューすべきでない。
だから、お断りした。
谷川さんにHERO`Sのことを尋ねるなら、
どうしても、年末の秋山ヌルヌル問題の話題になり、
ファンの皆さんが、楽しい気持ちでいるのに
水を差すことになってしまう。
年末のことを尋ねないくらいなら、
この時期に谷川さんと話す必要もない。
「馬鹿にしちゃあいけないよ。HERO`Sのファンを。
一般のファンの方が厳しいよ。
だから、提灯担いだようなインタビューなんて、
必要ないし。そんなんだったら、高島君には頼まないよ」
とある人が、わざわざ電話でこう言ってくれた。
「やります!」
僕は単純過ぎるほど、単純だから
上手く手綱を操る人がいると、すぐに走りだす。
題目は秋山ヌルヌル問題に関連したルール変更、
そしてHERO’Sの米国進出。
谷川さんの話は、正直、面白かった。
でも、口をついて出てきた言葉は、
やはりパンフ向きでない。
そう思うしかない、意外な言葉の連続だった。
「自分はインタビュー中に出てきた会話しか、
原稿にできないです。インタビューしたことと違う内容を、
主催者の都合で書き足したりするなら、
削ったりするなら、
それは僕の仕事じゃないんで、
どれだけ校正されるか、絶対に見せて欲しいです」
――なぁんて、後からすると、
「あぁ、これでまた仕事の依頼がなくなるなぁ」なんて
思うような不遜な態度を示し、原稿をメールした。
インタビューは、
別に過激な言葉が並んでいるわけじゃない。
ただ、HERO’SやTBSにとって、
歓迎したい内容の話でないことも確かだった。
やはりパンフには相応しくない。
だから、これは「赤」が相当入るな――と思い、
わざわざ電話で断りを入れた次第。
だが、驚いたことに、
(本当に驚いたことだった)
原稿は、自分の漢字の間違いや、句読点の間違いなど
ケアレスミスに「赤」が入れられただけだった。
谷川さんと僕は、HERO’Sのパンフなのに
UFCやPRIDEの話ばかりしていたような気がする。
谷川さんは
UFCに対しては、その存在を認めつつも辛口だった。
PRIDEに関しては、
違った。
谷川さんはPRIDEの存在、存続の重要性を
誰よりも理解しているのではないだろうか。
今、日本の格闘技界が地盤沈下しようとしている。
雑誌の売り上げ実績に関係なく、
ゴン格が危機に直面している。
これに対して、正直、僕には複雑な思いがある。
だが、ゴン格がなくなるかもしれないからといって――、
それをライバル誌だとか――、なんだかといって――、
嬉々とした表情を浮かべ、
高笑いしている雑誌関係者がいたなら、
そいつは、本当にバカだ。
したり顔で、今からはネット時代、
雑誌は役目を終えたといっている業界の人間がいたら、
そんな無責任な奴はいない。
PRIDEの危機は、日本の総合の危機。
専門誌がなくなることは、格闘技界の危機だ。
後者に対しては、どうだか知らないが、
前者に関しては、そう谷川さんも感じているに違いない。
だからこそ、エールともとれるPRIDE賛歌が
聞かれたのだろう。
キレイごとをいうならば、
これまでの泥試合、
罵り合いを忘れ、
今は協調路線を歩んで欲しい。
それが実現可能ではないかと思える、
谷川さんの言葉だった。
もちろん、HERO`SとPRIDEはカラーが違う。
それは分かっている。
だが、足を引っ張り合う必要はない。
きっと、
DEEP、
プロ修斗、
CAGE FORCE、
パンクラスも同じだ。
足を引っ張り合っている時ではない。
「協力してやっていく」などという、甘い台詞が聞かれた
インタビューではなかった。もちろん。
でも、何かが変わりつつある。
と、思いたくなるインタビューだった。
まぁ、そんなこんなで、今日、
次のHERO`Sに
お笑いタレントが出ることが発表された。
本当に喰えない、人だ――、なんて思っていたら、
太平洋の向こうの知人から
ZuffaのPRIDE買収について、やたら色んな情報が
飛び込んできた。
DSEは残る。資金提供をZuffaがする。
PRIDEとともにUFCも日本で行われる。
などなど、もっと色んな話、きな臭い話も入ってくるけど、
この手の話は、
正式な発表を待って確かな事実を伝えないと、
無意味な情報の垂れ流しになってしまう。
どちらにしても、
UFC+PRIDE連合 VS HERO`S
なんて、対立劇はお断り申し上げたい。
そんな事態が何も生み出さないことは、
既に、
昨年の1年間で、
業界全体が知ってしまったはず――なのだから。
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