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11年3カ月振りのUFC日本大会を、「ズッファが開く初めてのUFC JAPAN は、過去の大会とは別モノ」とロレンツォは言い切った。日本大会開催会見直後に彼が語ったUFC の将来像と日本大会への意気込みとは。ダナ・ホワイトとは、一味違ったUFC論に耳を傾けたい。
取材・文_高島学 撮影_t.SAKUMA
──UFCが2000年12月以来、実に11年3カ月ぶりに日本大会を開催することが決まりました。
ロレンツォ 日本の多くの人達が、UFCが日本に戻ってきたという風に捉えているようだけど、今回は私たちズッファとして、初めてUFC日本大会を開催するつもりでいるんだよ。ズッファ以前のUFCと、ズッファが開くUFCは別物だと考えてほしい。2000年までに行われたUFCと今回2月26日にさいたまスーパーアリーナで開かれるイベントはまるで別物、私たちはラスベガス、ロンドン、シドニー、リオデジャネイロ、トロント、世界を席巻しているUFCを日本に持ち込むんだ。
──日本はファイティング・ビジネスだけでなく、経済自体が芳しくない情況が続いています。特に3月11日に起った東日本大震災と、それに伴う原子力発電所の問題など、今後も厳しい状態が続くことが予想されるなかで、なぜ、この時期に日本大会を開こうと思われたのでしょうか。
ロレンツォ まず、私たちは日本経済をサポートできると思っている。UFC JAPANの模様は世界150カ国で中継され、10億世帯以上100億人を上回る人々が、視聴することになるだろう。それらの人達に日本の素晴らしさ、埼玉の素晴らしさを示すことになる。そして、UFCを視た人たちのなかから、少しでも日本を訪れたいと思ってくれる人が出て来てくれれば嬉しい。と同時に、UFCを観戦するために世界中からファンが、日本にやってくることを期待している。UFC JAPANのチケットは、世界中のほとんどの国で購入できるからね。そう、UFCがラスベガスにもたらす経済効果は年間で1億ドル以上なんだよ。
──78億円ですか!! ラスベガスはPPV大会やTUFフィナーレというイベントだけでなく、MMAそのものがUFCとともに成長し、飛行場にタップアウトのショップが出展しているほどです。
ロレンツォ トロントでは一つのイベントで、2千2百万ドル(約17億円)の経済効果があった。リオでは6千680万ヘアウ(約27億円)の経済効果だった。ファンが埼玉を訪れることで、イチ都市に巨大な経済効果をもたらすことになるだろう。
──……。
ロレンツォ そうやって日本経済を後押しすることができれば──と、私たちは思っているんだ。日本に利益をもたらしたい。我々は常に日本のMMAマーケットを特別に思ってきた。日本というMMA界で、最大の投資が行われてきた土地の歴史の一部に、UFCも加わるんだよ。
──今回の記者会見で発表されたラインナップで、さいたまスーパーアリーナに2万人の観客を集めることができるとお考えですか。
ロレンツォ そうなることを期待しているよ。早々にチケットが売り切れてほしいと願っている。リオやトロント、ロンドンのようにね。日本のファンだって、きっとすぐにでもチケットを手にしたいと思っているはずさ(笑)。
──私は日本人として、今の日本の状況で、UFCということでなく、MMAがどこまで盛り上がるのか、不安はあります。リオの熱狂を見て、あの盛り上がりをズッファ運営陣が期待しているなら、期待通りの結果を得られなかった時に、落胆とともに日本を顧みなくなるのではと。
ロレンツォ 日本のMMAビジネスはかつてのような状態になく、低下していることは、頭に入れている。と同時に、私たちは最高のイベントを開くことに誇りも持っている。我々はベストショーを日本に持ち込むことができる。なぜなら、私たちにはベストファイターがいるからだ。さきほども言ったように、日本の現状は理解している。だからこそ、この市場を再び大きくするためにUFCは日本大会を開くんだ。そしてアジアの国々で、日本にUFCを見に来るファン層を確立したい。UFCをライブで見たら、どれだけ盛り上がるのか、君は知っているだろう?
──だからこその不安なのですが……。と同様に、放射能問題が解決していない日本にやってくることで、他のスポーツでは、出場選手がネガティブなリアクションを起こしたこともあります。MMAファイターのなかで、日本行きを拒む者は出てこなかったですか。
ロレンツォ フフフ、そんな馬鹿げたことを言うファイターは一人もいないよ。全く逆の現象が起こった。ランペイジを代表して、多くのファイターが、日本で戦いたいって言ってきたよ。
──それはありがたい話です。ところで、米国で取材を行っても、ロレンツォさんの話を伺う機会は、ほとんど訪れないので、今回は日本大会以外についても、話を伺いたいと思っています。
ロレンツォ もちろん、問題ないよ。でも、厳しいクエスチョンはやめてくれよ(笑)。
──UFCにとって、2011年はFOXとの契約がまとまるなど、大きなターニングポイントとなりました。その話題に隠れてしまう感もあるのですが、3月にズッファがMMA第二のプロモーションといえるストライクフォースを買収したことは、業界を揺るがす大ニュースでした。ストライクフォースというライバルをその手中に収めた目的は、いったい何だったのでしょうか。
ロレンツォ 第一に我々がMMAビジネスに関わるのは、MMAが好きだからという大前提があることを知って欲しい。そして、誰よりもMMAビジネスで成功を収めることができた。ファンにベストファイター同士の対戦を提供したいと常に思っている。ベストファイターが、それぞれ別のオーガナイゼーションで戦っていて、戦うチャンスがないのは不幸なことだ。ただし、団体同士が足並みを揃えることはまずない。
──足並みが揃わないので、ライバル・プロモーションを手元に置いて、ファンの喜ぶ試合を提供しようとしたということですか。
ロレンツォ ストライクフォースを買収したことで、10月にラスベガスでニック・ディアズとBJ・ペンが戦い、ファンは本当にエキサイトした。11月、ダン・ヘンダーソンがUFCに戻ってきて、マウリシオ・ショーグンと素晴らしい勝負を繰り広げた。12月にはブロック・レスナーとアリスター・オーフレイムが戦う。2月、ニック・ディアズはGSPと世界戦を行うことが決まった(※その後、GSPの負傷で対戦相手はカーロス・コンディットに変更され暫定王座決定戦が行われることになった)。同じ階級で力の接近した実力者同士が戦う状況が整ったんだ。
──それはUFCにとってポジティブな話ばかりで、チャンピオンがいなくなるストライクフォースの活動自体はじり貧状態になっているように感じられるのですが。ズッファ傘下となって、ストライクフォースの勢いはなくなったと思います。
ロレンツォ ストライクフォースは、もっと活発に、大きなイベントを開くことができた。ただし、ストライクフォースの米国におけるTVパートナー、Showtimeが問題なんだ。彼らにはストライクフォースを拡張する意思があるのか。彼らがどんな風に考えているのかを知りたかったが、その考えが分からないままの状態が続いた。ならば、UFCの持つTVで、彼らに戦ってもらおうということになったんだ。ズッファはストライクフォースの元の経営母体よりも、資金が豊富だ。ストライクフォースで戦っていたファイターは、UFCで試合をすることで、ファイトマネーの未払いなどを恐れることがなくなった。それは、ファンが求める強豪が、力のある会社をバックに持つプロモーションで戦うようになったということなんだ。そして、ファイター達もよりお金を稼ぐことができる。ファンにとっても、ファイターにとっても良い状況になったと私は考えているのだがね……。
──なるほど。では、SpikeからFOX、そして系列のFXやFuelでノーペイTVのプログラムが本格的に始まる2012年を前にして、これまでPPVを軸としたビジネスを展開してきたUFCのTVビジネスを、どのようにハンドリングされるつもりですか。
ロレンツォ バランスを如何にとるかというだけで、我々が2005年から積み重ねてきたビジネスの進め方を大きく変える必要はない。2005年は米国内でフリーTVで中継が始まり、UFCにとって、本当に大きなターニングポイントだった。そして、PPVとフリーTVのバランスを上手く保つことで、このスポーツの人気を高めることになった。フリーTVを視ることで、PPVの視聴方法を多くの人々が知ることになり、結果的にPPVイベントは年々、成長し続けてきた。
──そのフリーTVの果たす役割が、FOXとの中継でより大きくなるということですか。
ロレンツォ FOXはSpikeよりも、大きなプラットフォームを持っている。FOX自体の中継は4大会で、PPVのヘッドライン級のカードや、コ・ヘッドライン(※セミファイナル)級のカードをフリーエアー(※地上波)で中継する。この中継によって、延べ億単位の視聴者を獲得できるかもしれない。05年とはレベルの違う、ステップアップが可能になる。
──まだまだUFCの成長は止まらないということですね。
ロレンツォ 過去6年で、数え切れないほどの成功を手にしてきたけど、まだ成長の余地は残っている。まだまだファイターの知名度は高くないし、もっと親近感のある存在になれるはずだ。そのためには、もっと投資しなければならない。新しいスポーツの発展には、それに見合った投資は欠かせないんだ。
──PPVのメイン級カードを、ケーブルTVに契約する必要もないチャンネルで視聴する人が増えると、PPVを視る必要がないという者も増えることになりませんか。
ロレンツォ それは気にすることじゃない。本当のMMAファンなら、自分が見たい試合を見逃すことはないよ。11月12日、世界ヘビー級選手権試合をフリーTVで中継した。短絡的に見れば、PPV中継でなかったので物凄い額の損失だ。ただし、あの試合をフリーTVで中継したことで、PPVに関心を持つファンが増えたことは間違いない。何よりも、MMAファンが、あの試合をフリーTVで視たからといって、ジョン・ジョーンズ×リョート・マチダを視ないでいられるかい?
──経済的事情が許せば、必ず見たいでしょうね。
ロレンツォ つまり、ノーペイTVで注目度の高いファイトを提供することは、MMAというスポーツの成長につながってくるんだよ。
──実はあるUFC殿堂入りを果たした元世界王者が、ノーペイTVでUFCのようなクオリティの高い試合が視聴できると、お金を払ってローカルショーのチケットを手に入れる人間が少なくなるかもしれない。ローカルショーがなければ、新しい人材は育たないので、そこが心配だという意見を持っていました。
ロレンツォ う?ん、その意見には同意しかねるね。UFCが成功を収めたことで、ローカルショーの開催数は増えてきた。だから、多くの一般層の開拓につながるノーペイTVでのUFC中継は、ローカルのMMAプロモーターに恩恵をもたらすことになるはずだよ。
──米国の経済も先の見えない状況ですが、UFCがリビングで視聴できるようになると、チケットを買って無名のファイターの試合を観戦しようという人の数は、少なくなるのではないですか? この意見はPPVビジネスにも共通していえることだとは思うのですが。
ロレンツォ 米国の不況は、それほどUFCに影響は与えていない。我々はこの状況でも、成長し続けている。確かに人々の財布の紐は固くなった。エンターテインメントに費やすお金も減ってくるのも当然だ。使い道が厳選されてくるからこそ、質の良い大会が重要になってくる。UFCファンでも、カードによってPPVの購買を判断するようになってくるのも確かだ。それは会場に足を運ぶファンにもいえることだろう。それでも、UFCはヒューストンでもラスベガスでも、チケットはソールドアウトだった。ライブで見たいと思わせるカード、PPVを買いたいと思ってもらえるカードをUFCは提供している。
──それでも不況の影響はPPVの売り上げなどで、出て来ていると思うのですが。
ロレンツォ ラスベガスという街は、不況になると最もダメージを被る都市なんだ。サブプライムローン問題を発端に、持ち家の価格が下がり、旅行に出かけようなんて状況でなくなった人々が大勢いる。ただ、最近は少しずつ客足が戻ってきている。良い方向に向かっているサインだ。セプテンバー・イレブンの時と比べれば、大したことではない。あの時はストリップを歩く人がいなくなったからね(笑)。
──確かに、WTCのテロから2週間後、マンダレイベイで行われたUFCを取材したとき、サンフランシスコからベガスまでの飛行機は8人ほどしか乗客がいなかったです。
ロレンツォ 誰もが飛行機に乗るのを怖がった。それでも、みなすぐにラスベガスに戻ってきた。2、3年後にはラスベガスはかつてのような観光客の数を取り戻すよ。
──では、ロレンツォさんはズッファのオーナーとして、日本人ファイターの重要性をどの程度感じているのか、教えていただけますか。
ロレンツォ ユーシン・オカミは確かにアンデウソン・シウバに負けた。しかし、それまでオカミほどUFCで成功を収めた日本人ファイターはいない。他のどの国のファイターと比較しても、最も成功を収めたファイターであることは間違いないんだ。オカミは厳しい道を歩み続けたうえで、成功してきた。UFCに出場するようになって5年、常に厳しい戦いを乗り越えてきた。8月はこのスポーツの歴史上、最高のファイターに敗れたに過ぎない。あの敗北で、岡見の評価が下がることはない。
──他の日本人ファイターのことはどのように思われていますか。
ロレンツォ アキヤマ、ゴミ、日本人ファイターが、UFCで戦うことを歓迎している。シンヤ・アオキをどうにかして、UFCで戦うことができないか、我々は動いているんだ。サトル・キタオカも、そうだ。
──ロレンツォさんは、今も日本のMMAに注意を払っているということですね。
ロレンツォ もちろんだよ。DREAMの全試合、修斗も見ている。修斗は数多くの優秀なファイターを輩出してきた。日本の動向は、いつだってチェックしているさ。特に、『次に誰がのし上がってくるか』という点に気を付けてね。UFCはただ純粋な気持ちで、ベストファイターが欲しいんだ。ショーマンシップなんて二の次だよ。髪の毛の色なんて、何色でもいい。
──とにかく、ベストファイターが集まれば、ベストショーが開催できるというのがロレンツォさんや、UFCの信条だということですね。
ロレンツォ かつての日本の栄華を無視するわけじゃない。ただ……
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