長島☆自演乙☆雄一郎がK-1 MAXで頭角を現すまでの経緯を振り返る当コラムも折り返し点を越えた。今回は彼の存在がオーバーグラウンドに浮上するきっかけとなったNJKFでの3試合について書いてみよう。
08年2月に、その時点で主戦場となったMARSでブラスターバウトルール・王座決定トーナメントAブロックを勝ち上がった長島だったが、MARSはその次の5月大会を最後に活動休止状態に陥ってしまう。王座決定戦を残したまま宙ぶらりんになってしまった長島だったが、次戦は同年6月に決定した。前年、キック・デビュー戦を闘ったNJKF大阪大会である。
ここでいったん話がそれるが、長島の公式戦績にはこの間の5月にタイでの試合が記録されている。マーマイというタイ人に、4RKO勝ち。実は長島はこの時期、タイで練習を積んでいる。この間の練習について彼自身は多くを語らないが、王座獲得後ににわかに話題となった頃、「ヒジは対応できないだろう」「蹴り、首相撲はできないのでは?」という声も噴出したが、もっと早い段階で準備はしていたということである。その成果は、次の試合で早くも発揮されることになる。
話を大阪大会に戻そう。この大会は地元・大阪のNJKF加盟ジム「健心塾」が主催のため、同ジムを中心に関西の様々なキック系ジムから、連盟の垣根を越えた選手が集められた。長島が2年連続で出場したのもその縁からだったのだが、すでに無敗の6連勝中だった08年はメイン(トリプルメインの第2試合)で、関東からやってくるNJKF王者との対戦という舞台が与えられた。
相手の健太は1ヵ月弱前の5月11日、後楽園ホールでNJKFウェルター級王者となったばかり。K-1トライアウトにも合格しており、連盟としても期待の選手。さらに後楽園では毎回パラパラなどのダンスで入場している。初めて「王者」と肩書きがつく相手というだけではない。K-1出場を目指し、入場に力を入れる長島にとってはまさに格好の標的となった。
入場は、アウェーということでかダンスもなくサラリと入ってきた健太に対し、長島は2人のダンサーを従えてノリノリのダンスで入場。地元の観客から大きな声援を集めた。そして、いよいよ試合。1Rからいつも通りのラッシュを仕掛ける長島に対し、健太はローキックで応戦。長島はこのラウンドで早くも、健太のアゴを上げさせるパンチを入れている。
そして2R、長島の左のタテヒジがヒットし、健太がダウン! つい1ヵ月前、ハードパンチャーの古川照明の猛攻にも倒れなかった健太がダウンを奪われた場面は衝撃だった。
さらに続く3Rには、長島の右ヒジで健太が顔面をカット! 2Rのダウンの後にもパンチとローで反撃していた健太だが、この時点でのポイント劣勢は否めない。
そして試合は後半戦に突入。実はこれまでのキャリアで、長島が5Rフルに闘ったのはこの日が唯一のことだ。後半は窮地に立った健太がローにつなぐコンビネーションで長島の足を効かせ、さらに長島自身の攻め疲れも見えて健太が優勢。勝負は判定に持ち込まれた。
宣告された判定は、2?1のスプリット・デシジョンで長島。リングサイドで撮影しながら取材していた筆者は、ゴング直後には「ドロー」を予想していたが、わずかなポイント差で長島が接戦を制する形となった。
勝った長島はマイクを取り、谷川プロデューサーに向けてK-1参戦をアピールする。だがこの時点では、マスコミもほとんどいない(というより、記者は自分一人だった)大阪のリングで、彼の声が谷川プロデューサーの耳に届くとはまだとうてい思えなかった。
だがここから、急展開が訪れる。この試合をNJKFの齋藤京二理事長がリングサイドで観戦していたことから、続く9月のNJKF後楽園大会で長島の試合が組まれたのだ。これが後楽園初登場となった長島は、NJKFウェルター級2位の宮越宗一郎をわずか1分50秒、3ダウンによるKOで粉砕。後楽園に衝撃をもたらした。
宮越はパンチ力には自信を持つものの、闘い方はやや慎重なタイプ。その宮越を打ち合いに巻き込み、右フックをもらっても構うことなくその外側から強烈なフックを返してダウンを奪ってみせたシーンがこの試合の白眉だった。
ウェルター級のトップどころを立て続けに破られたNJKFは続く11月大会で、長島をタイトルマッチに抜擢する。ウェルター級1位だった古川照明と、新設されるスーパーウェルター級王座決定戦を闘わせることにしたのだ。同連盟12年の歴史の中で、加盟ジム以外の選手がタイトルマッチに起用されたのはこれが初めてのことだった。
長島の快進撃の勢いは、この時点でもう止められないほどの勢いとなっていた。彼はこの試合でも、学生ボクシング出身の古川にほとんど何もさせることなく、またも圧倒的なラッシュで撃破。今度は前戦よりも短い、64秒というフィニッシュタイムだった。
ついにベルトを巻いた長島は、マイクを向けられると改めてK-1出場を希望。その夜には「2ちゃんねる」を中心としたネット上で「コスプレ・キックボクサーがチャンピオンに」と話題になり、一夜にして“自演乙フィーバー”が始まった。
そして、ずっと言い続けてきた「MAX出場」という願いは、翌12月22日、DEEP新宿FACE大会でついに谷川プロデューサーの眼前でタイ人にTKO勝ちすることにより一気に実現に向けて動くことになる。年が明けて今年1月、本当に長島のK-1 MAX日本代表決定トーナメント出場が公式発表された。その後の大騒ぎは、もう各種メディアでご存じの通りである。
その拳とコスプレで、キックデビューからわずか1年半にして夢を現実にした長島。柔道入門から総合時代までを「第1章」とするなら、キック・MARSでの連戦連勝を「第2章」というところだろう。長島の格闘ロードは、MAXを舞台にした「第3章」でさらにさらに大きな展開を迎えることになった。
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