【Fight&Life vol.09】
>>>【Fujisan】で「ちら見する」
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Fight&Life Magazine連動企画「どうすれば日本の総合格闘家は北米で勝てるのか?」
これまで中井祐樹氏=「寝技に活路を見出す」、
吉鷹弘氏=「打撃で勝つ」、高阪剛氏=「北米を知る、環境に順応する」というテーマに沿った形で、各氏の意見をお届けしてきた。
第四弾は、礒野元氏を招き「日米の違いを知る」ことについて語ってもらった。
現在、Fujisan.co.jpのデジタル版Fight&Lifeで購読できるインタビューで、
「選手の安全を守るのはルール。レフェリーは実行することが仕事」という北米の在り方を指摘している同氏。
「米国のMMAはギャンブルと連動していることで、より厳しく公正になっている部分がある」という認識も、現地を知らずしては出てこない言葉だ。
アスレチック・コミッション、プロモーション関係者、そしてファイト&テクニックと
現在の日本格闘技界において、誰もよりも北米の深淵を目にしてきた氏ならでは、
意見の続きをここに掲載したい。
『100パーセントの力が出せないのは当たり前。
85パーセント、90パーセントの力で勝つ戦略が必要』
「言ってしまえば、ファイトマネーより大きな額を手にできるわけじゃないですか。
ならファイターに『この試合は負けろ』という指示を出すことは、やろうと思えばできるわけですよね」
――契約書にセコンドや関係者は賭けに参加してはらないといような項目はないのでしょうか。
「契約書の全文を読んでいるわけではないので、何とも言えないのですが、無いような気がします。
それは契約レベルでなく、法律で決まっていてもおかしくないことですよね」
――かつてボードッグがネットカジノをしていて、試合結果を放映するまで他言してはならないという約束ごとがあったと聞いています。それも非常に危うい話ですよね。ネットカジノ自体が、米国など違法なのですが。
「競馬中継を30分ディレイで流して、そこまで馬券を購入できるので、結果を知っている者が儲ける。
古典的な詐欺ですよね。
セコンドが賭けごとに参加できる可能性が残っている。
これは北米のMMAの負の部分ではあります。
ただ、仮にどこまで厳密なルールを作り、選手を管理下に置いたとしても、派遣されてきたインスペクターが、それだけの質を持っているかといえば、全くそんなことないです。
ファイターがタオルを頭からかぶって、集中しようとしているのに、テレビをつけて野球を見ようとする人もいますから。
テレビをつけないでくれとお願いしても、『今、ヤンキースのゲームをやってんだ』なんて言われてしまいますからね。
こんなこと、日本ではありえないですよ。
リスペクトはリスペクトでも、尊敬してくれとは言わないです。
ただ、尊重はしてほしいですね。
だから、そういう人間と会場で顔を合わせながらも、こっちのペースを崩さないで試合に挑む必要性があります。
そういうのは、ファイターにとってもの凄くマイナスな部分ですよ、日本と比較すると」
――つまり、米国で日本人選手に勝つには、その環境にも慣れないといけないし、その分、米国でキャリアを重ねて、米国の文化で育ってきた選手のほうが精神的にも有利な状況にあると礒野さんは、お考えですか。
「それはそうでしょう。
以前、岡見が試合をしたときに、控え室にフォレスト・グリフィンがいたんです。
まだ、王者にもなる前でTUF上がりの威勢の良いファイターという位置だった頃です。
控え室に用意されたマットでアップをしたかったんですが、彼がマットを占領して、ストレッチとかしているんです。
一応向こうは人気選手だし、彼自身もそんな風にふるまっていたので、こっちにも遠慮があったんです。
でも、よくよく考えれば、彼は試合も何もなくて、チームメイトと話に来ていただけだったんですよ(笑)。
全く、そういうことを気にしないで、悪気があるわけでもない。
やっぱり日本人選手は、繊細だと思います。
ファイター自身がそんななだから、コミッションから派遣されてきたインスペクターが野球を見ようが、慣れてしまっているんです。
子ども頃から、そういうなかで育ってきたんですから」
――そう文化、習慣なんですよね。自分も取材で選手に話を聞く場合は、その時、会話をしている人の話が終わってから声をかけるんですが、米国の記者もファンもインタビュー中だろうが、何だろうか平気で選手に話しかけてくるんですよ。日本人の自分たちからすると、ずうずうしいという行為なんですが、当たり前なんですよね。
「これは日本での話ですが、パンクラスで岡見が試合をした時に、近藤(有己)選手と同じ控え室だったんです。
ヘンゾ・グレイシーが二人ほど選手を連れてきていて、彼らも控え室が同じでした。
で、近藤選手の足下にロールマットが置いてあったんですね。
そのマットにはパンクラスのロゴも入っているし、明らかに近藤選手の持ち物なんです。
それをヘンゾのところの選手は、控え室の反対側から歩いてきて、近藤選手の足下でマットを広げて胡座をかいているんです。
そのままストレッチを始めたりして――。
当時の僕の頭のなかでは、近藤選手のほうがずっと格上だったし、この外国人選手は何をやっているんだっ?っていうのはありましたね。
途中で外国人選手も『これ、誰の?』って気付いたんですけど、近藤選手は不動心だから、『いいよ、使って』っていう感じで頷いているんです。
でも、多くの日本人選手って、そういう無遠慮な振る舞いをされるとストレスを感じるじゃないですか。
みんながみんな、不動心ではないですからね」
――日本だと、反対にセコンドで来ている選手が、ずっと控え室で話しつづけていて、それが気になるのに『静かにしてください』といえない。そういうことですね。米国人なら、例えチャンピオンがきて話していたら、『今、集中力を高めたいから静かにしてほしい』と言えると思うんです。
「あぁ、そうかもしれないですね。
ただ、こっちとしては、もう気にしないことなんです。
個人的に自分はホームグラウンドを持っていくという感じで、色々と準備する選手がいるんですが、僕はそういうことには反対なんです。
どれだけ準備をしようが、限界があります。
だから、どんな所へ行っても、日本と同じ力が発揮できるとは思えないし、それで良いと思っています。
100パーセントの力を出すとか、100パーセントの力を出せば勝てたのに――とか言っても85パーセントや90パーセントの力しか出せないですから。
それでも勝てる戦略を考えるべきで。
そういう鍛え方をしたほうが良いと思いますね」
例えば、睡眠や時差ボケも、年を重ねると、それまでは大丈夫だったことが、たった1年で厳しくなったりだとか、ありますよね」
――非常によく分かります。
「そういう風に数えきれないほど、予想しきれないことが起こるじゃないですか。
それこそ、自分が用意したマットに他の選手が寝転がっているかもしれない」
――つまり、日本とは違う。その違いを知ることだということでしょうか。
「まぁ、選手のタイプによると思います。
選手本人が知らないために損をするデメリットは数多くあるでしょう。
それを知っている人がいて、あらかじめ対策をこうじていてくれれば凄く楽になります」
(この項、続く)
【 2008年10月31日 13:12 】
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