【誌面&Web連動企画】磯野元インタビュー 続編:その一:日米の違いを知る /高島学



【最新号情報】

%EF%BC%A6%EF%BC%86%EF%BC%AC08%E3%80%80%EF%BD%83%EF%BD%8F%EF%BD%96%EF%BD%85%EF%BD%92.jpg
>>>Amazonでチェック


0830%20takashima.jpg

『Fight&Life Magazine連動企画「どうすれば日本の総合格闘家は北米で勝てるのか?」
これまで中井祐樹氏=「寝技に活路を見出す」、
吉鷹弘氏=「打撃で勝つ」、高阪剛氏=「北米を知る、環境に順応する」というテーマに沿った形で、各氏の意見をお届けしてきた。
第四弾は、磯野元氏を招き「日米の違いを知る」ことについて語ってもらった。
現在、発売中の本誌で「選手の安全を守るのはルール。レフェリーは実行することが仕事」という北米の在り方を指摘している同氏、
アスレチック・コミッション、プロモーション関係者、そしてファイト&テクニックと
現在の日本格闘技界において、誰もよりも北米の深淵を目にしてきた氏ならでは、
意見の続きをここに掲載したい。


『UFCが社会の中にMMAの居場所を作ったのに対し、日本の総合は――』

 

――レフェリー、ジャッジともアスレチック・コミッションが指定している米国MMA界にあって、UFCのジャッジの裁定基準で違和感を覚えることはありませんか。キックやボクシングのジャッジがMMAの試合を裁くことも少なくありませんし。


「果敢にテイクダウンを狙っているのに、打撃の攻防から逃げているという風に捉えられて不利な裁定を受けているケースが多々ありますね。
米国の特徴として、いやな素振りを見せると明らかにマイナスになります」

 

――絶対的なピンチから脱した選手が、観客の声援を受けて敢闘賞的なポイントが入るような気がするのですが。


「ピンチを凌いだというのが、総合の場合はグラウンドの展開を嫌い、スタンドに戻すという事例が多いので、ポイントが入りやすいのだと思います。
サブミッションから逃げて評価になるというのは稀だと思いますが、選手もその辺りを心得ているので十字や三角から逃げた直後に強烈なパウンドを落とすなど、攻めの姿勢を見せていますね。
う~ん、僕は関節技の攻防を米国で評価してもらえると正直、思っていないんです。
タップを奪わないと評価がないというのは、ある意味、総合格闘技の本質だと捉えています。
アルバート・クレーンが、ロジャー・フエルタにボコボコにやられ、最後はレフェリーストップで敗れた試合がありましたけど、グラップリング的な見方では、どれだけアルバート・クレーンが攻めているんだっていう戦いでした。
よくもノーギで、あれだけ凄い技術を見せることができるなって。
グラップリングだけでいえば、スタンディング・オベーションでアルバート・クレーンは称えられるべき、そんな試合でも、総合格闘技的にはボコボコに殴られている。
それが現実だと思います、総合格闘技におけるグラップリングの。
どれだけ素晴らしい関節技の仕掛けやスイープをしても、極めきる、上を取ってからの攻撃がない限り、ジャッジが評価しないのはしょうがないことです。
ただし、日本は関節技への評価は高いです。
PRIDEやDREAMのなかで、最も評価されるのはKOまたサブミッション、そしてKOや一本勝ちを狙う姿勢なんです」

 

――あくまでも姿勢なんですね。


「自分もジャッジとして参加している大会ですから、ジャッジをするときは、その姿勢を評価しています。
ただ、KOまたは一本を狙う姿勢とは別に、評価対象としてアグレッション、積極性が挙げられているのですが、本来、KOを狙う、一本勝ちを狙うのとアグッレシブな姿勢は同じことだと思うんです。
KO勝ちや一本勝ちを狙わないアグレッシブな姿勢、それって何だろうと。
もの凄く積極的にジャブを出している。
それは、ジャブで相手のガードを突き崩してKOを狙っているからであって、ジャブを当てることが目的ではないはずなんです。
手数を出すということは、一本を狙いにいっている姿勢の表れのはずです。
この姿勢という部分は、イベント・オーガナイザーが見ている視線が違うと思います。
なんだかんだと言っても、UFCや米国はMMAをスポーツとして見ていて、どっちの選手がアスリートとして優れているのかを試合で判断しようとしている。
だから、効果のない攻撃を仕掛けても、それがいかに崇高で困難なチャレンジであっても評価する気持ちは全くないですね。
日本のイベントは、お客さんの立場になって評価される。
日本の格闘技マスコミがよく書いていることですが、勝つ以上の価値――、勝ち方が問われる――、セコンドになった時の僕の立場だと、何ですか、ソレはッ?ってなりますよね。
勝ちゃぁいいじゃないですかって。
強豪を相手に、きちんと何もさせずに完封して勝つ。
それが一番難しいし、勝ち方を問われても、そんな余裕、正直言ってないですよ。
UFCに行って、そんな余裕のある試合はないです。
結果、日本のイベントはより選手に厳しいものだと思います。
凄く強い選手同士が戦い、さらに内容でお客さんを満足させるところまで求められる。
これは非常に厳しいです」

 

――自分もマスコミの一人として、以前に勝ち以上のものを求めていたことがあったことを否定できないです。今も、内容を問うています、ただ、その上に勝敗の価値が来てほしい。負け方を問うのではなく、負けても強いと思われる試合をしたら、良い試合云々でなく、その選手にはチャンスが回ってきてほしい。それがいまのUFCではないでしょうか。北米という一括りにできないのは、EXCは決してそうでないからなんですが。


「ポテンシャルを見せた人に、チャンスを与えてくれるとは思います。
UFCは、それでお客さんが納得できるイベントを作り上げた。
でも、日本ではそうじゃない。
UFCは1993年にデンバーで始まり、その後、莫大な投資を続け、今、社会の中にMMAの居場所を作ったんです。
日本の総合は、かつてプロレスが社会のなかに居場所を作った、その力をそっくりそのまま借りているだけなんじゃないかなって思うんです。
だから、今もお客さんに対して、総合格闘技の本当の面白さ、格闘技の凄さが伝わるようになる努力をしていない。
確かにDREAMで流される煽り映像は、短時間で選手のことが理解できる素晴らしいものです。
あの映像があるのとないのと、どちらが良いのか。
それは僕自身も、あの映像が見たいんです。
だけど、選手そのものが煽り映像に左右されているのを感じます。
UFCの煽り映像は、凄くシンプルです。
そのなかに素晴らしい才能を発揮されているものもある。
選手の言葉から発せられたもので、優劣がある――。
それが日本の場合だと、あそこまで作り込むので、
あのなかで出てきた言葉に選手が縛られているような気がするんです。
岡見だって、インタビュアーに乗せられてKOで勝つって言っちゃうことありますよ。
でも、セコンドからすると『いいよ、気にするな』って言えるんですね。
米国だとファンサービス、リップサービスと割り切り、試合が始まると、これはスポーツだからと、勝負に徹している。
ただ、動きすぎる選手も米国にはいます。
それで最後の最後に一本負けをした選手も。
それはお客さんに見せようというのでなく、自らが抑えきれていないからって周囲は言っているんですよね。
誰に影響されるわけでなく、自分のやり方で戦っているということなんだって分かったんです」


(この項、続く)


【関連リンク】

【誌面&Web連動企画】磯野元インタビュー 続編:その二

【 2008年08月30日 13:16 】

トラックバック

この記事のトラックバックURL :

http://www.fnlweb.com/mtv33/mt-tb.cgi/3318

この記事へのトラックバック

コメント




ログイン情報を記憶しますか?

(スタイル用のHTMLタグが使えます)