【誌面&Web連動企画】どうすれば日本の総合格闘家は、北米で勝てるのか? 第一弾:中井祐樹に聞く(その3)/高島学

Fight&Life Magazine連動企画「どうすれば日本の総合格闘家は北米で勝てるのか?」
第一弾 中井祐樹インタビュー 続編:その三


「65kg以下が、日本のお家芸なる」という中井祐樹の発言の真意は。
そして、いよいよ中井祐樹編が佳境が向かうなか、
MMAにおける、寝技の問題点。
ブラジリアン柔術とサブミッション・レスリングにおける
総合への対応の問題点が指摘される。

 


 
『寝技に付き合ってくれない相手をいかに、寝技で仕留めるのか』


――65kg以下なら、日本人は上に立てるというのが中井さんの考えというわけですか。


中井 日本人の平均の体がそのあたりですから、人材も集まってくるし、軽量級の方が強いのが現状だとは思います。
だから世界と戦うにも単純に確率の問題として軽量級へ行くというのはあるでしょうね。
ボクシングを見てみても、そうですし。
世界レベルを見ても、軽量級では日本人は弱いということはないです。


――ボクシングはメキシコ、韓国、タイがライバルとなり、米国の白人選手や黒人選手がいない階級という見方ができます。総合の場合はそれらのライバル国がまだ日本の域には達していないですね。


中井 だから、重い階級に可能性がないというわけではないですが、やはり確率的にみても軽量級が日本のお家芸になる可能性があると思います。


――WECなどを見ていると、米国生まれ、米国育ちのヒスパニック系、チカナといわれるメキシコ系アメリカ人など、ボクシングとレスリングに長けた選手がフェザー級より下の階級で目立っています。バンタムなどは王者ミゲール・トーレスしかり、次回に王座挑戦を控えるマニー・タピア、他にもアントニオ・バヌエロス、チャーリー・バレンシアなどいわゆるスパングリッシュの選手が相当数を占めています。


中井 そうだなぁ。それでも65kgやその下の階級には、現状では早く総合に手を染めたアドバンテージはまだ、日本にあると思うんです。
ただ、総合はワールドワイドに広がっていないから、見えていない部分もあります。
今パッとみても、日本のプロモーションが60kgの選手を招聘するのも、簡単にいかない部分があるじゃないですか。
それは総合をやっている人が、あまりいないということだと思うんです。
その分は、いけるんじゃないかと。


――70kgの選手には、もうそのアドバンテージはないとお考えですか。


中井 そうですねぇ、強い選手もいますし、まだ世界で戦えると思います。70kgではUFCはBJが王者ですね。
日本の選手がタイトルマッチに出ていたころから、5年。
パッと見、差は開いているのかなぁ。
五味選手がBJに負けて、4年が経ちましたしね。


――そのBJは、紆余曲折がありながらも今もUFCのトップに君臨しています。


中井 そういう意味で言えば前からBJの方が上だったんです。
で、70kgでトップとの差が縮まっているのかというと、トップと日本の間にアメリカ人が大挙して表れたということを思えば安閑とはしてられないですね。


 ――例えばブラックマンバという強い選手に川尻選手はしっかりと勝っています。ブラックマンバは、UFCでも十分に活躍できるファイターだと思うのですが、しっかりパスをして、ポジションを奪って勝っている。石田選手にしても、極重視なのか、どういう判定基準は知らないですが、関節技を取られることなく勝っている。だから、70kgは何とか対抗し続けてほしいです。76kgの日本のトップが、70kgに落として戦う例もあるわけですし。


中井 青木、K太郎がそうですね。僕はハイパー減量と呼んでいるんですが(笑)、減量の仕方も浸透してきているし、そうなれば世界とも戦っていけるでしょうね。
フィジカルが強い選手が出てくる状況は拍車がかかってくると思います。
そういう選手たちが細かい技術、寝技だけでなく、あらゆる面で関心を持てるような環境を作る必要がありますね。
アメリカの良いところは、レスリングの国、伝統のある国といっていいのに、そういうレスリングをやってきた人たちが、ブラジリアン柔術に真剣にはまるんですよね。
日本はなかなかそうはいかない。
柔道やレスリングのエリートが、ブラジリアン柔術に興味を持たないのも分かります。
う~ん、最初にグレイシー柔術があった国ではなく、高専柔道も時代のなかでは傍流だったわけですし。
寝技はなぜか、時代から嫌われるんです。
鬼っ子になってしまう。
講道館と古流柔術の頃から。


――メディア関係者にも、寝技の面白さはなかなか伝わらない。専門誌の記者仲間でもそうですから、一般メディアとなると、それは理解を求めるのが難しい状況です。寝技好きは立ち技を見ても楽しめるけど、その逆はないというのが現実ですよね。


中井 やらないと分からない、そういう競技なんですよね。
そこに関心が集まるような形にしていきたい。
そのためには、今のグラップリングスポーツ自体のグレードを上げていきたいです。
ブラジリアン柔術もサブミッション・レスリングも寝技を競っているのではなく、寝技はその一部なんです。
寝技という言葉が、既に限定され続けている。
寝ているところから、急に立ち技にいくのも、広義で捉えると寝技だと捉えています。
そして、寝技を格闘技と捉えないと、魅力が落ちていってしまいますね。
寝技とは寝て勝負すること。
それはグラウンド・レスリングの一部です。
四つん這いになって、相手を誘うことは寝技とは呼べないでしょうし。
四つん這い技というもので、際で巻いて行く、足関節にいく流れもある。
立ち技と寝技の移行をもっと、語らないといけないです。
そういう意味で、寝てヨーイドン!するのは、効果的な技とはいえなくなる。
寝技に付き合ってくれない相手を、どう寝技で仕留めるのか。
そういう観点が、柔術にもサブミッション・レスリングにも決定的に欠けている。
寝技をやれといわれているから、寝技を練習し、上手くなる。
ただし、MMAの世界になると寝技を拒否されてしまう。
そういう相手を捕まえる部分に行っていない。
柔術とグラップリングが強いと、MMAが強いという昔からのイメージでやっているだけで。
なぜ、柔術やグラップリングが有効だったのか、昔はそうやって仕留めることができた選手は、大抵投げることができたからです。


――逆にいうと、今テイクダウンが強い選手たちが、寝技をもっと極めることができればということになりますね。やはりガードを取ろうとする相手の足を捌く、クローズドガードを割って、次の展開にもっていくというような。レスリングに抜きんでた選手は、なかなか下になる可能性のある攻防を避けますが、彼らの「倒す」で止まらない展開が見たいファンも多いと思うし、勝利にも近づくと思うのですが。


中井 打撃でダメージを与えて、ポイントを稼いでいけば勝てるということがあるからでしょうね。
寝技は手順が必要です。
面倒くさいんでしょう。
てっとリばやいのが、打撃による決着と思われやすい。
柔道でもスカッと投げられる人は、寝技で勝とうという気持ちは薄れるのと同じで。


(この項、続く)


四話完結のインタビュー記録 お見逃しなく!!

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【 2008年04月06日 16:33 】

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