この男ほど、ジムに深い愛着を持っている選手はいないのではないだろうか。
「10年間、家とジムと試合会場の往復ですから」というのが五味の口癖だ。
格闘家なら誰もが自分の活動のベースとしているジム・道場だが、
五味にとってのジムとは明らかにそれ以上の存在のように思える。
彼にとってのジムとは、そして彼がそこにいる理由とは―。
取材・文/熊久保英幸(GBR)
撮影/寺沢有雅
――バカンスで3日間ハワイに行かれていたそうですね。
五味 元々『戦極』の試合前から温泉に行きたいとかおいしい物を食べに行きたいとか、うわごとのように言ってはいたんですけど、ジム生が出場したコンバットレスリングの大会も終わりましたし、ジムの子たちから春休みをもらって久しぶりに旅行へ行かせてもらいましたね。
――以前海外へ行かれた時は現地のジムで練習したそうですが、今回は完全に格闘技抜きで?
五味 もちろん。いつもはプールで遊んで終わってしまうんですが、ドライブに行ったり買い物したり、普通に観光客してました。いわゆるストレス発散ですよね。毎日ジムの中で汗をかいているだけでしたから、たまには外で紫外線も浴びないと健康的じゃないです(笑)。
――その前には先ほど言われたように、生徒さんたちのコンバットレスリング出場というジムの一大イベントもありました。
五味 ジムの中だけだといつも同じメンバーでのスパーリングになるので、とにかく試合に出てみると。それが一番のトレーニングにもなりますし、アマチュアの内にいろんな交流や経験もした方がいいですからね。そういう思いで積極的に大会には出すようにしています。今の子たちはテレビで格闘技を見て、自分もやりたいって感じでジムに入ってくるので、見たものをそのままやろうとするんですよね。レスリングの基礎の練習だとか、打撃だったらスパーリングではなくサンドバッグを打ったりシャドーボクシングをするっていう基礎的なものは、僕はあまり最初に叩き込まないんです。
――それはどういう方針で?
五味 しばらく自由に泳がして、試合に出場させることによって本当に本人たちが勝つことの難しさを感じないことには変わらないと思うので、あまりそういうことは言わないようにしているんですよ。組み技のルールで勝つっていうのは何にもバックボーンを持っていない人間にとって、本当に何年もかかることだと思うんですけど、継続してチャレンジするのがいいと思うんですよね。僕自身、初めて出た時のコンバットでは2回戦負けでしたから。しっかり部活動とかでレスリングをやってきた人たちに勝つっていうのは並大抵のことではないんですけど、そこに参加し続けることによって強くなっていくんじゃないですかね。周りから“生徒さんの試合はどうですか”って聞かれるほど、レベルはそこまで来てないです。まだジムが出来て1年半しか経ってませんから。ちょっと出すのは早いくらいなんですけど、レスリングの楽しさや難しさを外の舞台で教わるという意味で、積極的に参加させているんですけどね。
――でも、西岡耕治選手が3位に入賞したんですよね。
五味 はい。彼は柔道の経験がありまして、アマチュア修斗のフレッシュマントーナメントでも優勝しています。いまジムを引っ張ってよく練習していますよ。あと秋山(仁)選手と当たった選手もいました。そういったプロの王者クラスとも戦えるっていうのがコンバットの魅力でもありますね。
――同門対決になってしまった試合もあったそうですね。
五味 そうですね。これはジムの会長としての僕にとっては、スペシャルマッチでした。柔道経験者の西岡と何も格闘技のバックボーンがなくて入門した子との試合だったんですが、あわよくばいつも練習でコテンパンにされている選手が勝ちそうになったんです。まあ、会長冥利に尽きるというか、些細な幸せを感じた試合でした(笑)。判定だったので周りの人たちは“この人たちは何をこんなに粘り強くやってるんだろう”っていう目で見ていましたけど、1年半ジムをやってきてよかったと思った瞬間ではありましたね。初心者でも素直に練習に参加していれば、きちっと試合が出来るようになるんだと。もちろんレベル的にはもの凄く低いレベルの試合でしたが、我がジムにとっては素晴らしい瞬間でしたね。あまり褒めると彼らが調子に乗るので、この辺にしておきます。
――久我山ラスカルジムのひとつの成果を見ることが出来た、と。
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