【誌面&Web連動企画】どうすれば日本の総合格闘家は、北米で勝てるのか? 第一弾:中井祐樹に聞く(その1)/高島学

 現在発売中の『Fight&Life vol.05』に掲載されている、「どうすれば日本の総合格闘家は、北米で勝てるのか?」

 第一弾として、日本総合格闘技界&ブラジリアン柔術界の重鎮、中井祐樹氏にインタビューを敢行した。

 誌面では日本の判定基準や、寝技、フィジカルに関する内容を掲載しましたが、当Webでは誌面との連動企画として、インタビューの続きを掲載します。本誌と併せてお楽しみ下さい。



第一弾 中井祐樹インタビュー 続編:その一
『フィジカルが劣っているなら、フットサルやってみろや』


AMAZON.JPG  ←杉江“アマゾン”大輔は、柔道、総合から柔術に専念した珍しいタイプ。
フィジカルもテクニックも重視している

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↑ノーギの流行が、日本と米国の違い。果たして、MMAの強さと相互関係はあるのだろうか?




――誤解を恐れずに言うと、今の日本の育成大会、アマチュア修斗、あるいはクラスBの修斗の戦いも含め、DEEPのフューチャーキング、パンクラスのネオブラッドでは今成正和になれる可能性のあるファイターが、見出されることが非常に困難だと思うんです。


中井 自分は組織のなかにいる人間なんで、そうでうすね――。
修斗の方法論でないなかで強くなる人もたくさんいるでしょう。
その事実を僕は素直に認めてきたつもりですし。
確かにアマ修斗のポイント・システムでは生まれ得ないような選手もいると思います。
ただ、逆もまた真なりということもあるので、例えば極端な話をすると、最初からヒジを認めたアマチュア大会があったとしても、そこで潰れてしまって寝技が使えなくなるということも起こりえると思います。
だから、色んな角度から顔面なしの舞台で磨いた方が突進力ができる場合、大道塾さんやアマ・パンクラスさんの発想で突き進むのも、好意的に見ると有りだと思っています。
そうだなぁ、人間の回転が横にスムーズにいくようになれば良いのではないでしょうか。
やっぱり、各団体へ行くと全然、知らない人がいますよね?


――あっ、分かります。本当に。知らなかったけど、凄く可能性のある選手、と同時にこの業界の発展に欠かせない人材がいても、彼らに交友関係がないケースですよね。


中井 それぞれが、その団体の人なのか、その団体と懇意にしているのか、特定の団体としか付き合わないという感じがするんです。
柔術にしても、そうです。たとえば、柔術の人間が「ポイントがなければ、俺ってどうなんだろう?」と思えば、実際に存在するキャッチ・レスリングの大会などに出場してみればいい。
その辺りの横のつながりが、日本の総合格闘技界は機能していないように思います。


――中井さんが言われたように、今の総合格闘技界の育成システムで強くなる人は絶対にいると思います。ただ、今のやり方でない育成方法が少なすぎるように感じます。やはりスタンド優位、ポジショニングや寝技軽視という面が目立っている。


中井 そうですね。


――まず身を守ることからテクニックが発展した90年代の総合。そこでクローズド・ガード、オープンガード、そしてハーフガードとガードワークも発展し、攻めるガードワークも生まれました。ここにきてZSTやPOWER GATEのようにクローズドが禁止されているルールがあります。一見、北米で勝つにはセオリー無視のように感じるのですが、ここで疲れてもクローズド・ガードをとってはいけない、ダメージがあってもクローズド・ガードをとってはいけないという戦い、パウンド禁止だからこそ、クローズドが取れない状況を実戦で経験するのも有りだと思えるようになってきたんです。北米を頂点にしても、そういう経験は生きてくるのではないかと。


中井 うん……、そうですね。
実戦で経験する、練習ではパウンド、クローズドを想定していても。
ロープエスケープが厳しいというのもありましたしね。
本当にあり得る話だと思います。
そればかりか、僕は格闘技もスポーツも総ぐるみで考えているので、「フィジカルが劣っているのなら、フットサルをしばらくやってみろや」ということを指摘することがあるんです。
現にやっている奴もいます。
それぐらい、闊達にいかないと。
これは流派とか関係ないですから、そこまでやっていかないといけないですよ。


――そのフィジカルですが、柔術の柔らかい動きができる選手は、あまりフィジカルに関心がないのでしょうか?


中井 フィジカルを鍛えて、柔らかい動きができなくなるということはないですよ。
ただ、うちの柳澤もそうですが、全くのずぶの素人から始めた人間なんで、寝技が染みついているんですよね、体の中に。
スタンドでパンチができるようになったのも、アマチュア修斗をやるようになってからだし。
逆にそこに行き着くまでで、フィジカルを鍛えることに向かない人間がいることも事実ですね。
やはり柔道でも、凄く強いけど体がペラペラの人間もいるので、フィジカルが弱いと組み技が通じないということは、一概には言えないですね。
ウェイト・トレーニングで強くなる人もいるし、自道な四股や腕立て伏せで長い間やっている人間もいるだろうし。
トレーニング方法はたくさんあります。
ただ、全般的にはアメリカの後追い、戦術だけでなくトレーニング方法もアメリカの後追いになっているとは思います。


――倒れない、殴って倒すスタイルでフィジカルを鍛えている選手。彼らに柔術流の柔らかい寝技ができれば、より完璧なファイターだと思えるんです。たとえば、今、日本のトップとして活躍し、倒れずに殴って勝つスタイルで実際に勝利している選手たち、彼らと同じようなフィジカルの持ち主、彼らを上回る肉体をもつファイターは北米にはいくらでもいます。その北米でも、彼らのような肉体を持ち、柔らかい寝技ができる選手はほとんど見られません。


中井 技術に走る人は体力が劣る。
体を鍛える人は、技術に関心がいかなくなる。
この溝を何とか埋められないかと、ブラジリアン柔術を僕は10年間やってきたんです。


――はい。


中井 それが、これがなかなか難しいんですよね。


――……。


中井 体力のなかに技術がある、これは間違いないんです。
しかし、このキーワードはあるところで思考停止を招いてしまいます。
確かに苦しい状況になってから動ける、それが本当の技術です。
でも、技そのものを知らない、関心がなければ話にならない。
そういう意味では、まだまだ核が広がっていないとしか言えないですね。


――ノーギは日本では普及が難しいですよね。スポーツとしても。それがテクニックとフィジカルの相互交換をより困難にしているのではないでしょうか。日本人の生活サイクルではフィジカルとテクニック、二つを磨く時間がないことが多い。もちろん、これは一般の話です。で、道着があれば情けない体を隠して試合ができる。女性も体の線をそこまで気にしなくていい。でも、ノーギとなると、そこはもう一目瞭然で、やはりこの年になって気づいたのですが、恥ずかしいじゃないですか。で、大会自体が少ないから、フィジカル&テクニック的なノーギの技術を磨く人口も増えない。


中井 現実的に難しいですよね、ただノーギも意義はある。
経済状況が許さないのですが、その現状は総合が強くなることにも影響していますね。


――例えばパラエストラに入門した。もうこれ以上、月謝は払えない。だから、スポーツジムで体を鍛えることはできないと。


中井 それは道場のなかで、両方の練習をするしかないですね。
全体で声をかけて補強をするのもいいだろうし、うちはスモール・グループのような形でやっています。


(続く)


四話完結のインタビュー記録 お見逃しなく!!

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【 2008年03月06日 11:06 】

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